読書感想:物語つくりのための黄金パターン 中国と中華風のポイント25
先日メールを整理していたら、Amazonからのオススメ書籍の中に、この「物語づくりのための黄金パターン 世界観設定編1 中国と中華風のポイント25」という本がありました。
常々、「中華風世界の創作をする人のための手ごろなガイドブックはないものか」と思っていたんですよ。というわけで、即座に購入しました。
ざっと読んでみての感想は、これは文字通りのテキスト、教科書ですね。
歴史、文化、思想、宗教、武侠と中国武術、料理、神話や説話。
どういう方向性の作品を作るにしても、中華世界を題材にするなら前提としておくべき知識が一通り網羅されています。
さらに突っ込んだ知識が欲しいなら、巻末の参考資料を図書館で探すなり身銭を切るなりして調達するべし、というところでしょうか。
その参考資料、清末の侠義小説や剣侠小説、現代の金庸作品、または嵩山少林寺についての解説を読んでて、含まれてるんじゃないかなと思っていたら予想通り、「漂泊のヒーロー」や「増訂 中国武術史大観」もありましたね。
冒頭の「サンプル」で提示された中華風異世界の事例も実践的で面白かったです。
以前てんぐも、こんな記事を書いたことがあります。
これを煮詰めても良いのですが、最近は「大明皇妃」「成化十四年」を見た影響で明代推しになりました。
それもありまして、「パラレルワールドの明王朝」という方向性でひとつ考えてみました。
ざっと、こんな感じかな。
この世界だと、
明朝は日本の幕藩体制に似た封建制に移行して存続している
各地は郷紳たちが半独立領主となり街道も領地ごとに関所が設けられている
関所を自由に通行できる特権を丞相である鄭政権から与えられた存在が「江湖客」と呼ばれるものたちである
「江湖客」は異能の才を持ち人を助ける義侠の士である
という風になっています。
ゼロから中華風異世界を作るのもアリだし、「我々の世界とは少しだけ違った歴史を歩んだ中国」という解釈で世界観を作るのもアリだと思います。
他には、ファンタジー世界でおなじみのエルフやドワーフやオークなどを中華風世界に登場させたいなら、中国の神話や説話の名前を拝借するって方法も考えられます。
例えば、エルフは長命で神秘の力を持っていることから天仙または飛仙や仏法八部衆の天人に擬える、ドワーフは短躯で闘志あふれるから刑天と同一視されている、オークには北狄や西戎の名前が与えられ、そして映画ダンドラのジャーナサンでおなじみの鳥人間がいるなら迦楼羅と呼ばれる、という具合に。
こんな風に中華風世界観のイマジネーションを広げるのに役立つこの本、もっと多くの人に読んでもらいたいなあ。