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キャリアを作るときに重要な「無形資産」について、人事の視点で考えてみた

AIスタートアップExaWizardsで執行役員/採用責任者をしています半田 @Yoritaka21 です。最近、新卒・中途問わず、キャリアの相談によく乗る機会が増えました。人事だから当たり前なんですが。キャリアの考え方って難しいですよね。正解なんかないのに、正解を探したくなる。僕もずっと考え続けています。(キャリアなんか考えなくていいよ!なんとかなるよ!と思えてる方はそっとブラウザを閉じてください。笑)

努力は過大評価されている。「判断」の方が重要

最近読んだ本で、すごく印象に残っている本の一節を紹介します。『シリコンバレー最重要思想家ナヴァル・ラヴィカント』という本で、その名の通り、シリコンバレーの起業家・投資家の人生論・幸福論なんですが、その中の一節がすごく印象に残っています。(今回は本の詳細には触れませんが、一冊全部読まなくてもつまみ食いするだけでも学びが深い本だと思います)

努力は過大評価されている。どれだけ努力するかは、現代経済ではあまり意味を持たなくなっている。

逆に、過小評価されているのは何ですか?
「判断」だね。判断が過小評価されている

『シリコンバレー最重要思想家ナヴァル・ラヴィカント』

変化が激しく、テクノロジーであらゆることに良くも悪くもレバレッジが効いてしまう現代においては、「どう頑張るか?」よりも「何をいつ誰とするか」の方が、自分の人生には長期的には影響してくる、ということです。成功の定義などは本を読んでもらえればと思いますが、いわゆる社会が定義した偏差値/エリート教育に身を置いてきた自分にとっては、ぐさっとくるものがありました。

キャリア選択においては「選んだらその道を正解にするために努力することが重要」ということをいろいろな場面で言ってきましたし、今でもそう思ってます。一方で「自分の努力をどんだけ過大評価してんねん」という主張も分からなくはない。この辺は自分にとっての成功をどこに置くか、が一番大きい因子なのかと思います。

超余談ですが、小学生の頃『とっても!ラッキーマン』という漫画が好きだったのですが、自分の一番好きなキャラクターは「努力マン」でした。うさぎ跳びで学校に通うと変な目で見られる、豆腐で鉄下駄は作れない、ということが学べた名作です。

大企業からスタートアップに来るときの生々しい判断

人事の若手のキャリア相談に乗るとき繰り返し強調しているのは、「長期的視点で考えたときに、目先の給与以外のことを低く見積もらない方が良い」ということです。「成長の機会がありそうだが、給与が低い」という会社と「給与は高いけど成長の機会が限定的」という二つの選択を迫られたときは、前者を選ぶべきと自分はおすすめしています。自分の数年後の"仕上がり"をイメージした方がいいと。

「無形資産」という言葉を使いましたが、キャリア選択において「無形資産」というのが使われるようになったのは、ライフシフト以降ではないでしょうか。人生100年時代における無形資産を下記のように定義されています。

1.生産性資産:主に仕事に役立つ知識やスキルのこと。
2.活力資産:健康や、良好な家族・友人関係のこと。
3.変身資産:変化に応じて自分を変えていく力のこと。

LIFE SHIFT(ライフ・シフト)―100年時代の人生戦略

2018年に自分がエクサウィザーズに転職を決めたときは無形資産をより重視しました。この際の有形資産はわかりやすい給与や福利厚生などで、無形資産は経験や知識、スキル、獲得できそうな人間性など。"無形"というだけに人によって価値を置くものはそれぞれなのですが、信頼やネットワークなども無形資産と呼べるかもしれません。個人的には最近は「夢中になった思い出」も無形資産として価値を置いています。「あのときは楽しかったな〜」とお酒を飲みながら振り返れる人間関係や思い出は、長期で見ると複利で自分の幸せに影響すると最近思うようになりました。(歳とったのかな)

もう少し具体的な話をすると、当時の自分には4つのオファーの選択肢がありました。一つ目は上場直前のメルカリ、次に新卒の就活ではESすら通らなかったSONY(根に持ってます笑)、まだ社員3,40人に満たない合併直後のエクサウィザーズの一人目専任人事、そしてリクルートに残留という4つでした。

有形資産という観点のオファー年収は、メルカリやSONYは当時もらいすぎ感のあったリクルートよりも高い金額でした。また、仮にリクルートに残留するにしても、割とドラスティックに昇給する、かつ人事に対して市場よりも高い給与を払う会社なので、年収が上がっていくイメージはありました。対して、当時のエクサウィザーズのオファー金額は最も低く、一番高かったメルカリの半分とまでは言いませんが、数百万単位で違い、それなりに検討が必要なオファー金額でした。(ストックオプション込みなので、期待値は一番高いのですが)。

30代前半で、年収に目がくらむ気持ちがないわけではなかったですが、その際は迷うことなく、得られそうな経験を最優先しました。有形資産の代表である「お金」を得るための手段は労働以外にも意外とあったりするのですが、スキルや知識、経験や信頼は、働く環境に依存します。当時のエクサから提案されていた、1)人事としての業務の幅の広がり、2)当時のリクルートの中で抜群の存在感で一緒に仕事したかった石山さんや元DeNAの会長だった春田さんの近くで働くことで得られる視座、3)事業と人事どっちもやってもいいし応援するという提案の方が、目先数年の数百万-数千万よりも遥かにレバレッジが効きそうという判断をしました。

また「変身資産」についても、変化の早いベンチャーや業界に身を置いたり、その中でサバイブする中で、自分を変えていくことでの成功体験や、自分を躊躇いなく変えていくことの耐性をつけておきたかったのだと思います。

短期的に年収が下がったり、有形資産が減る、いわゆるしゃがむ選択をしても、経験や実績という果実を取りに行って成果を出せば、有形資産観点でも、もっといい話がたくさんくる、というのが実感値です。(もちろん家庭や個人の事情があるので一概には言えないです。独身である程度リスクを取れることができたのも大きかった)

たくさんの人のキャリア選択を見ていきましたが、この無形資産を正しく評価してレバレッジする判断ができる人は割と少ないように思えます。「判断」をキャリアで差別化する上での武器にするというのは一つ観点として付け加えておいて良いと思います。

少し話はそれますが、採用人事が候補者にオファーを出す際に、オファー金額、という有形資産で他社に劣後していても、「無形資産」どどのように言語化し、提案するか?は腕の見せどころです。これについてもいつか詳しく書きたいなと思います。

人事というキャリアにおける「無形資産」をどう見立てるか

人事のキャリア選択という場においての「無形資産」を下記の観点で改めて考えてみたので、もしかしたらヒントになるかもしれません。

1.生産性資産:

人事関連のスキルや経験がどれくらい付きそうか?その会社に所属することで得られそうな経験の幅・質はどうか?一定期間、身を置いた場合の自分の”仕上がり”のイメージを周りに聞いてみる。この際「やったことがある」というのと「高いレベルでできる」は意味あいが違うという意識も必要です。

2.活力資産:

自分が人生かけてやりたいと思える課題・事業・経営者との出会うことができそうか?エネルギーやパワーをもらえる刺激的な人間関係を作れそうか?人事をやる上ではその事業や仲間に想い入れがないと、なんだかんだなかなか成果を出せないのが実態。仮にその会社から出ることになったとしても、一緒にやりたくなるようなウマが合いそうな人との出会えれば有形資産よりもはるかに価値が高いと思いますし、こういった機会の価値は低く見積もられているように思います。

3.変身資産:

人事の課題やテーマは目まぐるしく変わります。新しいことを勉強する方法や、一緒に刺激しあえる仲間だったり、自分の門外漢のことでも楽しく無理なく学べる環境かは重要かなと考えています。あとは、「変化すること」がよしとされる環境か。比較的高齢になっても挑戦し続けてる人が多そうかあたりも自分は重要だと思います。4年半いると、この変身資産は相当意識しないと溜まっていかないという気持ちがあるので、常に新しいテーマに挑戦し、刺激を受けるようにしています。

というわけで長くなりましたが、「判断の重要性」を甘く見ないほうがいい、という話でした。

お知らせ

飛躍的に視座を上げるきっかけをくれているエクサウィザーズの会長の春田さん(元DeNA会長・ベイスターズ球団オーナー)が若手向けに話をしてくれるイベントが来週ありますので告知をさせてください。

春田さんって誰?という方は、スタートアップ の組織づくりについてディスカッションさせてもらったイベントレポートをぜひご覧ください!

最後までお読みいただきありがとうございました。10-12月はキャリアや人事について発信を強めていこうと思っておりますので、よろしかったらTwitterのフォローもお気軽にお願いします


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