【連載記事】『ボーはおそれている』 徹底解説その2 下敷きとなっている作品について

キリストとの関係

本作を考察するうえで欠かせないのが聖書との関連性で、本作には聖書のエピソードを連想させる要素が多数存在するので一つずつ見ていく
まず分かりやすいのは、ボーがアパートの外の足場で一晩を過ごした後目覚めるとキリストの看板がある
キリストは神の子とされていて母マリアは処女であるのにキリストをお腹に宿しており、そういう意味では父親は不明ということになる
これは受胎告知という有名なエピソードで、マリアは天使ガブリエルによって、聖霊が神の子をあなたのお腹に授けましたよと告げられ、夫のヨセフはマリアとの婚約を解消させようとするがガブリエルの説得によりマリアに出産させることとなる

そして父親のヨセフは読み方によってはジョセフとも呼べるのだが、映画冒頭、ボーが街を歩いているシーンで、おもちゃのボートで遊んでいる男の子を呼び寄せるために男の子の母親がジョセフ!と叫んでいる
ジョセフは映画ラストシーンを想起させるボートを操縦しており、母親に連れていかれると映画のラストを予言していたかのようにボートが転覆する
聖書でのジョセフは大工をしているが、ボーの家にある父親の写真には父が金づちで壁に何かを打ち付けている場面が写っており、これも共通している
そして最も重要な共通点はボーが裸で飛び出して裸の老人に刺されるシーンである
ボーはまずわき腹を刺され、その後手を何度も刺されているがこれはキリストの処刑と非常に似ている
キリストは十字架に磔にされた際、手にくぎを打たれて磔にされた。処刑後キリストが死んだことを確認するためにわき腹に槍を刺されたともされているので、ボーが刺された場所はキリストと全く一緒である
さらにキリストが処刑された後キリストは復活するのだが、復活したのは処刑の後三日目とされていて、ボーがグレースの家で目覚めるとグレースに「2日間寝ていた」と言われ、日数も一致している
またキリストは復活するまで天国、辺獄、地獄に行ったとされていて、ボーが轢かれてから辿る3つの場所、グレース家、森の中の劇団、モナの家はそれぞれそれらに対応しているとも取れる
すると最後のモナは地獄のサタンになり、ボーは最後サタンを倒し、地獄から抜け出せたかと思いきや結局サタンに捕まり、水に沈められたということになる

そしてキリスト、聖書も元に作られた有名な作品が日本のアニメにもあり本作はそのアニメとも似ている点が多数存在しているのでそちらも紹介していく

エヴァンゲリオンとの関係

エヴァンゲリオンもキリスト教やユダヤ教、特に聖書と大きな繋がりがある
第一使徒のアダムはそのまま旧約聖書のアダムを表しており、第二使徒のリリスは知恵の実を持っていたとされているが、これは旧約聖書の創世記に書かれているアダムとイブが食べたとされるリンゴのことを表している
ユダヤ教、キリスト教では神に食べるなと言われていたリンゴを食べてしまったことにより、アダムとイブの子孫である人類は原罪を背負うことになったというのが最も重要な認識となっているのだが、エヴァンゲリオンでも人類は知恵の実を持つリリスの子孫であるという聖書と全く同じ世界観のもと描かれている
またロンギヌスの槍というのがエヴァンゲリオンで登場するが、これはもともとキリストの処刑の際、キリストが死んだことを確認するためにわき腹に刺した槍の名前で、槍を刺した兵士の名前がロンギヌスであったことに由来している

そしてこの2作品は聖書をベースにしているという点だけではなく、主人公の家族関係も非常に似ている
ボーは母親が強大な力を持ち父親は死んでいると言われているがエヴァは父と母の関係が逆で、母親は死んでいると言われているが父親は生きている
ボーは母親によって全てコントロールされているがエヴァの主人公シンジも父親ゲンドウ、ゼーレの目標達成のためにコントロールされている
ボーはグレース家で見せられたch78で分かるように全てシナリオ通り動かされているがシンジも死海文書の通り動かされている
そしてどちらも親が持つ強大なパワーにより、主人公は苦しめられている
ボーもシンジも青い服を着ている(ボーは青いペンキが服につく)

この二作品は設定が似ているだけではなく、監督はエヴァンゲリオンを参考にしていたことが分かる証拠を映画内にちゃんと残しているので是非探してみてほしい

木の上にペンギン

オズの魔法使いとの関係

今作にはオズの魔法使いを想起させるヒントがあらゆるところに散りばめられている
そしてこの二作品の関連性は本作を考察するうえで最も重要になってくるので是非一度オズの魔法使いを鑑賞してみてほしい

そもそも本作はオズの魔法使いのストーリーとよく似ている
北の魔女=グレース
西の魔女=モナ
エメラルドシティ=森の劇団
としてみれば大まかな話の筋は共通していることが分かる
監督がオズの魔法使いを参考にしていることが分かる一番の証拠はトニーの部屋に貼ってあるポスターがオズの魔法使いに出てくる看板と非常に似ている

右上のポスターに注目

そしてオズの魔法使いとの共通点で最も重要なのが3という数字である
ボーが想像する劇の中でボーは3人の子供を産み、それぞれ勇気 優しさ 野心を持っていると説明されるが、オズでも主人公は森の中で案山子、ブリキ、ライオンの3人と出会い、道中を共にする
この3人にはそれぞれ特徴があり、案山子はワラで出来ていて脳みそが無いので知恵が無く、ブリキは鉄でできているので心が無く、ライオンは見かけによらず怖がりで勇気が無いという設定なのだがこれはボーの3人の子供の説明と似ている
そしてこの3人の共通点はこの後の考察で非常に重要な意味を持ってくる

次回予告

考察その3では、映画の見方が180度変わるような衝撃的な考察をするつもりで、youtubeにも動画を上げようと思っていますので是非チャンネル登録お願いします



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