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『あのこは貴族』と『ムーンライト』~東京 Radio18s 番外編#6

福山です。こんにちは。最近更新頻度が落ちてしまってすみません。せめてこのラジオの存在は忘れられないようにノートは更新しようとの思いで、もう3か月以上前に扱った映画『あのこは貴族』について書いてみようと思います。ですので皆さん、Radios18sのこと忘れないでね。

<番組概要>

同じ東京に暮らしながら違う世界を生きる二人の女性の細やかな交流を描いたシスターフッドムービーについて話しました。パンフレットも完売続出になるほど絶賛を浴びた作品ですが、神奈川県生まれ神奈川県育ちのRadio18sのメンバーはどうみたのでしょうか。。

<タイムテーブル>

0:00 オープニング

7:25 本編

9:30 感想(ネタバレなし)

12:10 感想(ネタバレあり)

1:59:15 エンディング

<放送後記>

まず最初に、番組概要に神奈川県生まれ神奈川県育ちのメンバーとありますが違います。「俺は東京生まれ神奈川育ち小さい頃は熊本一時期」です。恐らくこの回を担当してくれた米山が間違えちゃったのか噓をついてるのだと思います。

さて『あのこは貴族』ですが、個人的にはめっちゃ好きです。最初から最後までとても綺麗な映像。現実的ながらも、この現実への抵抗がひしひしと感じられる。そんな映画でした。

↑こちらからお聞きいただけます!

<『あのこは貴族』と『ムーンライト』>

新鮮に感じたところとしては、本来支配層であるはずの上流階級の中での抑圧を描いていた点。普通、上流階層で良い暮らしが出来ているんだから恵まれているだろ、となるところですが今作ではそこでの抑圧が描かれていました。これをちゃんと描ききるのってなかなか難しいと思うんです。でも今作ではそれが出来ていたから、より一層切実で現実的に映りました。例え上流階層だとしてもジェンダー的な格差は免れ得ないのだと。

よく考えてみると今作では全体を通して、ジェンダー的な格差と貧富の格差両方が描かれていました。そして当然、この二つの格差が独立して作用しているわけではない。この二つの格差は交差もする。つまり、美紀はジェンダー格差と貧富の格差両方が交差するポジションにいたわけで、どちらもの影響を受けているのです。彼女の受ける抑圧はジェンダーによるものだけでも、貧富の格差によるものだけでもそれぞれ単体では説明できない。これは、「インターセクショナリティ」(個人の特徴が複数組み合わされることによって起こる特有の差別・抑圧を理解するための概念)と大きく関係しているように感じられます。

これでふと思い出したのが『ムーンライト』です。この映画では、黒人の中でもさらにゲイであるために差別を受けるという点で新しさがありました。つまり黒人である事とゲイである事の二つが交差していたわけです。

そういうわけで、『あのこは貴族』と『ムーンライト』は、ともに「インターセクショナル」な視点で見ることが出来る点で共通していると思います。ただ違うのが、『あのこは貴族』では比較的裕福な(美紀もある程度のレベルの生活を営める点で裕福とするならば)層の中で抑圧される様子を描いていたのに対し、『ムーンライト』では生活が豊かでない層の中でさらに抑圧される様子を描いた点と言えるのではないでしょうか。また、『あのこは貴族』では「男性・裕福」という幸一郎の存在もあった点でも違うかもしれません。

<女性の連帯>

そしてもう一つこの映画を特徴づけている重要なものとしては、決して女同士の対立や、男女の対立を描いていない点。「女性の連帯」を監督自身が明言していたことからも、先に挙げた「インターセクショナリティ」よりもこっちの方を強く意識してこの映画を撮ったのだろうと思われます。ただ、女性同士で連帯しようとしても、どうしても生活レベルの差による溝を埋めるのは難しい(華子と美紀は互いに合わない、華子はどうであれ少なくとも美紀はその違和感に気づいていた)ですし、この映画にはさらに貧しい立場の女性の存在は描かれていなかったという点で、現実的な難しさがあるのは間違いないと思います。少し話が逸れますがシスターフッド映画と言われているものの、華子は美紀から大きく刺激を受けて人生を変えていくのに対して、美紀自身は華子からはそういった影響をそれほど受けていない点も少し印象的でした。別に良いけど。

とは言うものの、少なくともこの作品内で女性同士の対立を描かなかったことは大きい。なぜって、女同士の対立というのは、男を責めずに女が互いのせいにすることから家父長制を拠り所にすると思うからです。嫁姑問題もまさにそれでしょう。だからこそこの「女性の連帯」を意識した描き方は、家父長制という現実に対する抵抗に思われる。また、幸一郎という「裕福・男・イケメン・高学歴」というステータスを持っている彼の描き方も個人的には好きでした。描き方によっては幸一郎を悪者扱いすることもできたはず。しかし、今作の描き方では家父長制は男をも傷つけるのだということを示唆しているようでもありました。


<トーキョー>

最後に、今作で印象的だったのが東京の住み分けを示唆する演出。面白い。最初に「俺は東京生まれ」と言いましたが、華子の住む松濤とは縁のない小金井市です。同じ東京でもこれだけ違う。東京の街って、雰囲気の違いが顕著に表れているような気がします。同じ山手線でも池袋、高田馬場、新大久保、新宿、東京、、等それぞれ街の個性が合ってだいぶ違っている。面白いね東京は。

↑この回のオープニングトークでこの街についての話をしているのでオープニングだけでも是非お聞きください!


ライター:福山。Radio18sのラジオパーソナリティを務めている。



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