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求道のマルメーレ

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【新連載】愛の本質に迫る、神話風ミステリー小説 毎週水曜に連載しています。よろしくお願いいたします。
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#オリジナル小説

『求道のマルメーレ』#1 第一編 孤島の二人(一)

◀前回    目次    次回▶ 求道のマルメーレ  もう猶予がない。私は凍えたような吐…

『求道のマルメーレ』#2 第一編 孤島の二人(二)

◀前回    目次    次回▶ 第一編 孤島の二人(二) 風が鳴っている。鋼はわざとら…

『求道のマルメーレ』#3 第二編 背中に棲む獣(一)

◀前回    目次    次回▶ 第二編 背中に棲む獣(一)  傾いた日差しは黄色く染ま…

『求道のマルメーレ』#4 第二編 背中に棲む獣(二)

◀前回    目次    次回▶ 第二編 背中に棲む獣(二)  猛った影の濁流が、最後の…

『求道のマルメーレ』#5 第二編 背中に棲む獣(三)

◀前回    目次    次回▶ 第二編 背中に棲む獣(三)  地面に空いた丸い窪みを通…

『求道のマルメーレ』#6 第三編 全神会議(一)

◀前回    目次    次回▶ 第三編 全神会議(一)  目覚めは唐突に、海底から浮上…

『求道のマルメーレ』#7 第三編 全神会議(二)

◀前回    目次    次回▶ 第三編 全神会議(二)  鋼は、姿勢を正したまま直立し続けていた。はきはきとした声が邪魔のない空間によく通る。 「掟を破り、全神会議を軽視していると思われても仕方のない行動をした。そのことに対する罰則に反発する意図はございません。しかし皆さまには是非、ゴーストが理性と知能を持っていたという事実を重く受け止め、今後の対応を審議して頂くようお願い申し上げます。以上です。」  鋼が証言台から一歩下がるのと同時に、上座からいくつか、唸ったり笑った

『求道のマルメーレ』#8 第三編 全神会議(三)

◀前回    目次    次回▶ 第三編 全神会議(三)  メリッサに焚き付けられて、鋼…

『求道のマルメーレ』#9 第四編 王女と女王(一)

◀前回    目次    次回▶ 第四編 王女と女王(一)  自堕落と節制の冬が来た。暖…

『求道のマルメーレ』#10 第四編 王女と女王(二)

◀前回    目次    次回▶ 第四編 王女と女王(二)  黒刃が女王を抱えて後方へ飛…

『求道のマルメーレ』#11 第五編 砂城の亡霊(一)

◀前回    目次    次回▶ 第五編 砂城の亡霊(一)  窓の外は相変わらず薄暗いま…

『求道のマルメーレ』#12 第五編 砂城の亡霊(二)

◀前回    目次    次回▶ 第五編 砂城の亡霊(二) 「気を付けて行っておいで。」…

『求道のマルメーレ』#13 第五編 砂城の亡霊(三) 

◀前回    目次    次回▶ 第五編 砂城の亡霊(三)  いかほどか時間が過ぎていた…

『求道のマルメーレ』#14 第六編 命の形(一)

◀前回    目次    次回▶ 第六編 命の形(一)  木陰にはところどころ雪の名残があったが、大地は夏にむけて準備を始めていた。目に沁みるような新緑が、太陽に向かって手を伸ばしている。  土の付いた鍬を家の壁に立てかけて、黒刃は鹿肉のサンドイッチを食べていた。柔らかいロースト肉に絡んだコケモモのソースが、肉汁と混ざって溢れ出る。頬に付いた紅色を拭いながら、黒刃は満足げに頬を緩ませた。  丘の東の方から、雪解け水が集まってできた小川のせせらぎが聞こえる。平年通り六月にな