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求道のマルメーレ

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【新連載】愛の本質に迫る、神話風ミステリー小説 毎週水曜に連載しています。よろしくお願いいたします。
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#連載長編小説

オリジナル小説「求道のマルメーレ」連載開始のお知らせ

皆さま、お変わりございませんか? オリヴィエ・ラシーヌです。 私の家では猫を飼っているの…

『求道のマルメーレ』#1 第一編 孤島の二人(一)

◀前回    目次    次回▶ 求道のマルメーレ  もう猶予がない。私は凍えたような吐…

『求道のマルメーレ』#2 第一編 孤島の二人(二)

◀前回    目次    次回▶ 第一編 孤島の二人(二) 風が鳴っている。鋼はわざとら…

『求道のマルメーレ』#3 第二編 背中に棲む獣(一)

◀前回    目次    次回▶ 第二編 背中に棲む獣(一)  傾いた日差しは黄色く染ま…

『求道のマルメーレ』#4 第二編 背中に棲む獣(二)

◀前回    目次    次回▶ 第二編 背中に棲む獣(二)  猛った影の濁流が、最後の…

『求道のマルメーレ』#5 第二編 背中に棲む獣(三)

◀前回    目次    次回▶ 第二編 背中に棲む獣(三)  地面に空いた丸い窪みを通…

『求道のマルメーレ』#6 第三編 全神会議(一)

◀前回    目次    次回▶ 第三編 全神会議(一)  目覚めは唐突に、海底から浮上する泡のように襲い来た。鋼は頭の奥がジーンと痛むのを感じながらしばらく寝そべっていたが、手のひらに書かれた「弁明」の文字を見るなり、その手で額をベチ、と叩いた。  ぐっと首を伸ばし仰ぎ見ると、壁に掛けられたネジ巻き時計の針が無情にも五時過ぎを指している。窓の外は朝日が差す少し前といった様子だった。群れの目覚めを促す野鳥たちの澄んだ鳴き声も、いったん聞こえ出すとうるさく思えてくる。  鋼

『求道のマルメーレ』#7 第三編 全神会議(二)

◀前回    目次    次回▶ 第三編 全神会議(二)  鋼は、姿勢を正したまま直立し…

『求道のマルメーレ』#8 第三編 全神会議(三)

◀前回    目次    次回▶ 第三編 全神会議(三)  メリッサに焚き付けられて、鋼…

『求道のマルメーレ』#9 第四編 王女と女王(一)

◀前回    目次    次回▶ 第四編 王女と女王(一)  自堕落と節制の冬が来た。暖…

『求道のマルメーレ』#10 第四編 王女と女王(二)

◀前回    目次    次回▶ 第四編 王女と女王(二)  黒刃が女王を抱えて後方へ飛…

『求道のマルメーレ』#11 第五編 砂城の亡霊(一)

◀前回    目次    次回▶ 第五編 砂城の亡霊(一)  窓の外は相変わらず薄暗いま…

『求道のマルメーレ』#12 第五編 砂城の亡霊(二)

◀前回    目次    次回▶ 第五編 砂城の亡霊(二) 「気を付けて行っておいで。」…

『求道のマルメーレ』#13 第五編 砂城の亡霊(三) 

◀前回    目次    次回▶ 第五編 砂城の亡霊(三)  いかほどか時間が過ぎていた。やっとのことで、獣はガラス玉のような青い瞳をしばたいた。四肢を振るい、山のように背骨をしならせて上体を起こすと、辺り一面がもうもうと煙っている。手のひらを突く細かな石粒は、薄積もりの雪のように床を覆っていた。  獣は横たわっていた場から少し歩み、微かに光るトルマリンを見つけ出した。一つくしゃみをし、ブローチを摘まみ上げる。そして何とか外套の襟を留めると、曲がっていた背中が伸びてゆく。