とっておきのショートショート
今日はめずらしく、私のとっておきのショートショートを披露します。
ショートショート作家とかではないので、全然期待しないでください。たまたま、書く機会があったので挑戦してみました!1500字ぐらいなので、短めです。
でも、そんな短い中にも意外などんでん返しを盛り込んだり、セリフを印象的なものにしてみたり、自分なりの工夫を施しています。※どんな工夫をしているかは最後に種明かしします。
内容ですか?
そうですねぇ、冴えない男の再生ストーリーです。
それでは、ご覧ください。
「すべてが5時の鐘に隠されて」
五月の日暮れ、広場の真ん中にたたずむ一本のベンチ。そのベンチには、私、鈴木省吾と呼ばれる、まるで何もかもにうんざりしているような面持ちの中年男が座っていた。ネクタイは緩み、シャツの胸元は汗で湿っていた。なぜならば、私は最近、利用している路線の問題で電車が遅延するたびに会社から叱られていたからだ。その上、私の親は高齢で介護が必要とされているが、老人ホームに入る余裕なんてなかった。高齢化社会が進むことで起きる問題もまた、私にのしかかっていた。本当に困り果てていた。
すると、私の前に一人の少年が現れた。「あなた、問題を解決したいんだよね?」私はその言葉に、まるでメロンパンをパクリと噛み切るような力強さでうなずいた。少年は微笑んで手を差し伸べ、一つの小さな銅色の鐘を見せた。「この鐘を5時になったら鳴らしてみて。すべてが変わるから」と。
それから数日後、ある日、私はまたその広場でぼんやりと時間を過ごしていた。時計が5時を告げると、私は鈴のような目をしてその鐘を見つめ、思い切り振った。その音は、まるでホットケーキにメープルシロップを注ぐように甘く、温かく、広場に響き渡った。
次の日、私が通勤途中で立ち寄ったコンビニで、おもむろに新聞を手に取ると、「都市の交通問題、未曾有の速さで解決」という見出しが飛び込んできた。更に、私が同僚と共にランチに訪れた定食屋でテレビを見ると、「今までにないほどの若者の流入で高齢化進む地域が活性化」というニュースが流れていた。
「これって…?」私はぽかんと口を開けたまま、思わず鐘を握りしめた。
次の5時、私はまた広場で鐘を鳴らした。そして、翌日、新たな問題が解決されていた。「環境問題、革新的な技術で大幅改善」、「若者の就職難、解消」というニュースが飛び込んできた。どんなに小さな問題も、この鐘を鳴らすとすぐに解決するようだった。
そしてある日、いつものように広場にいると、少年が再び現れた。「どうだった?」少年は笑顔を浮かべながら聞いた。「まるでドーナツがコーヒーに浸かるような快適さと満足感だ」と私は答えた。少年はニッコリと笑い、「それなら、もう一度鐘を鳴らしてみて」と言った。
私は5時になると、鐘を振った。すると、今までとは違う、まるで海の底から昇ってくるような深い音が広場に響き渡った。そして翌朝、私が新聞を開くと、「なんと全世界の問題が一夜にして解決!」という見出しが躍っていた。
「これがどうしたの?」私は驚きのあまり鐘を見つめた。少年はにっこりと微笑んで、「それはね、5時の鐘の真の力。鐘を鳴らすたびに、あなたが思っている問題を解決するんだよ」と言った。
私はぽかんと口を開けたまま、「それなら、今の日本、いや、今の世界の一番の問題は何だ?」と尋ねた。
少年はしばらく考えた後、微笑みながら言った。「それはね、人々が問題を解決するためのベルを持っていないことさ」
私はほっと息を吐き出し、少年に感謝の意を示した。「ありがとう、これからは自分の力で問題を解決するよ」
それからというもの、私は自分自身で問題を解決するようになった。そして広場のベンチで微笑みながら5時を待つようになった。鐘はもう必要なかった。なぜなら、その鐘の音は私自身の心に響いていたからだ。
「いや、こんなショートショートなんて書く機会ある!?」
と、きっと思ったはずです。
ここから先は、なぜ私がショートショートを書くことになったのか、そして、このショートショートに施された工夫をお話していきます!
コツはこの3つ。
聞いていただける方は、こちらの秘密の部屋へ。
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またお目にかかれるときを楽しみにしています。