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#263 「今ここ」をコラージュして組み合わせる人事が競争力になる時代 24/11/1

こんにちは。
今日は、人事の企画立案とその実装・実行のあり方を考えます。

企画といえば、完全なる設計図を描くことを想起します。その設計図づくりには、かなり緻密なリサーチやステークホルダーの要求事項をバランスするなど、計画フェーズに多くの時間や気遣いのパワーを要します。

そして、完璧なる計画に合意した後は設計図に基づき忠実に実行します。そこでは、多少のエラーや想定外のトラブルがあっても計画と設計図の見直しはかけずに、ある種、盲目的に実装・実行を進めることが是とされることが多いと考えます。

「一度決めたことは、やり抜く」の発想です。

これまでの時代は、ある程度、正解めいたものが存在し、それが人事に携わる職種内の共通認識であったり、一企業においてもその会社の経営から人事までに共有されていた正解的なものが存在していたように感じます。

たとえば従業員満足度を上げるために、満足度調査をもとに詳細な統計分析を行ない、あるいはそれを基点にインタビュー調査をすることによって、どんなことを課題設定とするのか、そして従業員の調査からあぶりだされた声をもとに施策を企画・実行するか、など計画的に設計図をつくる典型例と言えます。

綿密な計画を行ない、ステークホルダーとの要求・要望事項とその利害調整のすり合わせをし、その時点での最高の設計図を描くことで、その実行成果の予測可能性が高かったからだと考えます。

しかしながら、コロナ禍を機に、働く・仕事に対する考え方は大きく転換したと考えます。その前から、台風やゲリラ的豪雨、地震など天災によって、少しずつその兆候はありました。典型的には、電車などの公共交通機関であるインフラが、計画運休を実施するなどを決定するようになったことです。これは当然利用するお客様の安全を考えたことでもありますが、そのインフラ業などエッセンシャルワークに携わる人の安全・安心を考え始めたことによるものが大きな価値観の転換と考えます。行き過ぎた顧客志向や、自己犠牲の上に成り立つ職業倫理観を脱ぎ捨てたのだと考えます。健全な方向に社会全体が、舵を切ったように感じます。

従業員の安全・安心を第一に考え、その次に仕事を通じて社会に貢献する、といった順番です。これは、違う見方をすれば、「あるべき」仕事の仕方が変わったとも捉えられます。顧客志向を第一に、あるべきサービス提供は、どんな過酷な条件であっても、そのサービスは止めてはならない、が規範だった価値観からの転換です。それでもなお、医療従事者、介護事業者などエッセンシャルでどうにもサービスを提供しないと、との方たちも存在します。

そのあるべきから考えて実行していた形式から、その環境・状況の中で、今ある・今できる「ありあわせ」を組み合わせて提供できることに限って、と変わってきた部分があると感じます。そして、このイマココの、今あるリソースの組み合わせから、必要最小限を提供することに転換が進むのではないか、と考えます。それは、根本的に、資源も資本も有限だからです。どのように効率的に利活用するか、さらにはどう分配するか、の課題に移ってきたからだと考えます。自動車のエンジンは何が主力になるのか、生成AIを動かすなど電力エネルギーをどのように作るのか、脱炭素は?などです。

発展、拡大、増加、向上を志向し続けて、それをあるべきに据えて、計画と設計図に基づき動いていくことから、イマココ・今あるものをどのように組み合わせて生かすのか、に変わっていくように感じます。

人材マネージメントにおいても、今ここにいる従業員とそれぞれがもつ個性や必殺技を組み合わせて、チームや組織で課題解決を行なう、顧客提供価値をつくる、その発想に進むのではないかと考えます。理想の人材像を志向して、一直線の人材育成と選抜を行なったり、転職市場に理想の人材がいると錯覚し採用を志向し続けることからの転換です。組み合わせと、その個々の従業員が最も活きる環境はどんな場なのか、この2つの変数を柔軟に扱える人事が価値を提供する時代になるのだと考えます。

それでは、また。

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