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#244 ナラティブなストーリーを紡ぐ 24/9/18

こんにちは。
今日は、一貫性の通った人事施策を考えます。

(実例を基に編集しています)
企画=問題解決、を立案する際に、オーソドックスな思考の進め方は、ありたい状態と現状の差分を抽出し、問題を定義する方法です。そして、その問題を解決するための課題設定=解決の方向性と具体的な解決策アクション、を決めます。

これがスタンダードかつオーソドックスな考え方です。わたしもこのセオリーにそって仕事に取り組むことが大半です。

これは、エンジニアリングの発想です。エンジニアリングとは、科学的・工学的手法、合理性、分析的思考が関連するキーワードです。ある完成図・成果物があり、その設計図を描きます。そしてその設計図に基づき、必要なリソース(手段や道具など人・物・金・情報)を集めて、その完成形を作ります。

一方、「いまここ」にある現状やリソースをもとに、実現性の高いできることに着目する発想があります。ブリコラージュです。作りたい最終的な完成図は同じだとしても、いまここにあるリソースから、1つずつ積み上げて、一定の時間軸を見越して完成図まで近づける考え方です。

話は少し逸れますが、ガウディ氏の「サグラダ・ファミリア」はブリコラージュに近いのではないか、と考えます。サグラダ・ファミリアはだいたいの設計図と完成図しかないそうです。そう考えると、長い時間を要するため、その間に材料や道具、建築技術も進歩するから、その時点にある「いまここ」の最適を通じて、完成形に近づけていく思想をガウディ氏が持っていたからではないか、と考えるからです。

さて、話を戻します。
1on1を人材育成の中核活動に据えています。1on1が人材開発の基点に、そしてそれが組織開発に通じていく入り口かつメインストリームであることをありたい状態と、わたしは考えています。それが、人材育成における、わたしのサグラダ・ファミリアです。

ですが、そこに行きつくための設計図は完全には描けていません。だからといって、設計図が書き終わるまで、取り組みを始めないかといえばそうではありません。いつまでも待っていても、現実が良い方向に歩みを進めないからです。

すると、まず完成度30%でもよいから、ある程度の型を提示したうえで、1on1を始めてみる。事業部門や現場に展開することを決めて、始めてみる、です。始めて見ると、想定していないバグも発生します。思わぬ発見が生まれることもあります。それらを修正したり、取り入れたりします。

一方、1on1とはまったくことなる文脈の人事運用から、1on1につながるような発見も生まれてきます。

その最たる起点は、従業員、現場の声です。
いくつかの問題意識、課長職の業務負荷を実態調査する、新卒のOJT育成が生産的に機能しているか、ミドルマネージャー(課長・部長層)の成長に対してどんな課題やニーズを持っているか、報酬水準はどのようなカーブを描いているか、中途入社者の立ち上がりや組織化にどんな課題が生じているか、など現場の声とデータを駆使して、いまここの現在地を意識的に認識しにいきます。

すると、それらの問いから出てきた現実・現状と、1on1を人材育成の発信基地にするヒント、その共通的な課題が浮き上がってきます。

たとえば、課長職が業務負荷をどのくらい実際に負担と感じたり、それによって自身のキャリア開発や発達課題との向き合いに阻害をされているか、です。仮説では、課長職は、平準的に毎日、課長職としての実務・雑務に追われている。その結果、自分の仕事を振り返る時間もなく、ラットが回し車を回す毎日を送らざるを得ない状況に追い込まれている、と考えていました。ところが、繁忙期はある期間に集中するものの、平時の状態もそれなりにあることがわかりました。

では、その条件下で、当の課長職本人たちは自分の振り返りやそれに基づく自身の発達課題、そしてそれを改善していきたい欲求をどれくらい持っているのか、です。実は、ヒアリングをおこなったところ、発達課題を自己認識している人、あるいは成長に対する欲求は、あまり見られませんでした。

そこで、仮説的な問いが生まれました。
「課長と部長の1on1はどのような実態になっているのか」、です。
聞いてみたところ、案の定、業務進捗報告をしている(求められている)、主に業績数字の達成見込みとそのアクションについて報告していることが大半でした。あとは、担当しているメンバーたちの状態を報告している、がほとんどでした。いずれにしても、課長が話したいことを話す時間にはなっていなかったです。部長が聞きたい話を聞いている、でした。

すると、この階層でも、1on1が人材育成の基点になるような状態ではないことがわかります。仕事上のいろいろな経験は起こるものの、本人の振り返りや上長からのフィードバック支援がほとんどないため、1on1の在り様から変わっていく必要がある、と問題意識をもつことができました。

このように、先に挙げた他の問いについても、人材育成につながる「いまここ」の現実・実態がわかりました。これによって、人材・組織マネジメントに何が起きているか、何が問題か、それぞれの点が1on1を基点とした人材育成のゴールまで、線あるいは面でつながりました。

その意味で、ブルコラージュ的に現実の人事の取り組みも作られていくのだ、との考えに至りました。

さて、みなさんは、点と点がつながるような感覚を持てていらっしゃいますか。
それでは、また。

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