
#88 人事はガバナンスと危機管理を持って事業継続性に貢献する【1/2】24/2/22
みなさん、こんにちは。
事業の持続可能性に人事が貢献する、について考えてみます。
ちょっと高尚なテーマですが、SDG’s、ESGの文脈を部分的に人事の視点にスコープを切って考えてみます。
先日(とってももう1ヵ月半ほど前)、4月の新年度に向けて組織編成会議の中であることを感じたことがきっかけです。
組織編成会議は数回にわたって行います。次年度の方針・戦略の更新に基づき、組織の発足や統廃合を決めます。それに紐づく主要ポストの人事(登用や異動)、あるいはフロントの中核ポジションの配置までを決めていきます。
その組織編成の検討会議の中で、今回は人事部門が各事業責任者に問いを投げかける、ある種の抑止力を働かせるシーンが幾度かありました。
ここ5年くらいの方針は、事業部門の遠心力に体重を乗せることでした。
中央集権的に求心力を強制する取り組みは最小限に留めてきました。
ゆえにその事業部門にとって個別最適な選択と判断を是としてきました。そのために必要な実行権限と裁量も委譲してきたといえます。
わたしの所属する事業部門は、いわゆる事業部組織の、さらに下部に独立した事業を複数に構えています。事業ドメイン、と表現すれば少しイメージが湧くでしょうか。その意味ある単位、かつ事業運営上のまとまりも残した最小公倍数のあり様と考えています。
その流れは今年度から少しずつ体重の乗せ方をずらし、事業部共通的な中央集権的にシフトし始めてきました。そして次年度は、その体重の乗せ方に舵を切り変化させていく時機、転換期と考えています。
その矢先、組織編成会議でいくつかの議案が紛糾材料になりました。
なりました、とは他人事っぽい言い回しですが、人事部門のわたしたちから、疑問を呈して一歩立ち止まる意見を提示し、抑止力を起動させました。
それが、表題の「事業の継続性」に貢献する人事、につながります。
違和感を覚えたいくつかの議題と論点を挙げてみます。
まず1番は戦略のない計画です。
あえて言えば全部やることを戦略とした計画です。
論点は、全部乗せしても股が裂ける=乗らない(実行が追いついてこない)リスクの程度が高いのではないか。その実行されないリスクをどの程度と見積もっているのか、です。(予算成立が見通せない中で、そもそも承認されませんが)。
案の定、その戦略を実行するのはライン組織で中核ポストを担っている人たちでした。彼ら彼女らが兼務する配置計画だったため、なおのこと乗らない、と反対しました。
わたしはやはり、組織は戦略に従う、が経営戦略の原理原則と考えます。それは構造としての組織が戦略に従うの意味だけでなく、さらに組織文化が戦略に勝るの意味でそう考えています。
次に、販売管理部門が人員的にも機能的にも膨れ上がり、財務的にも看過できない水準に達してきたことです。
論点は、企画管理部門にここまで投資してリターンが見合うのか。収益性の低下を補う付加価値の成長をどう実現するのか、です。
構造的には、事業部直下に事業戦略機能があります。さらに事業ドメイン単位にも事業部と重複する機能と、さらに事業ドメイン単位で必要とする支援機能の乱立状態です。
前者は、事業企画、営業・マーケティング、DX推進、人事は重複して多重構造になっていました。後者の支援組織は、その事業ドメインに属人的(属組織的)な、限定した範囲の業務支援です。はっきり言ってしまえば何でも屋さん、都合の良いアドミ・秘書機能(アドミニストレーション)です。
このような管理部門は、組織化すればするほどに非生産的な仕事(中身は作業)、なくてもよい仕事(作業)を生み出します。ラインマネージャーに、仕事(作業)のための仕事(作業)、管理のための管理の作業を、創り出します。そして、自己増殖的に膨れ上がった作業を回さなくてはならず、作業者を増員補強する笑い話のような展開が待ち受けていることは、ほぼ例外ありません。タコが自分の足を食っている状態です。
予想どおり、すでに一部の部門ではその機能組織に、正式な人事発令を伴わない業務アサインメントがなされていることがわかりました。
それはある文脈をとれば、ワークシェアリングの形で従業員のやりたいことを提供しています。エンゲージメントを高める、組織の創造性を創発する仕組みにやがて発展していく、との側面も確かにあります。
一方、従業員のモチベーションや、事業部門の個別最適を盾にした、現場の論理と裁量をなし崩しに行使することは、気づかぬ間に内の論理が正しいとする組織文化と判断基準を形成する脅威リスクを増長しかねません。
この点に、だれも疑問と違和感を持たないことも一層、危機管理意識を高める背景でした。
わたしはどちらかといえば、ルールや規則、ガバナンスは最小限であるほうがいいポジションをとるスタンスです。
極端に言えば、絶対に守らなければならないのは法律で、コンプライアンス順守だけでもよいと考えるくらいです。
しかしながら、組織の中にそうした存在が誰も見当たらないなら、人事部門のわたしが、コーポレートガバナンスと危機管理を担保しないと事業も従業員も守れないと考えています。ある種のしんがり大将の役割を担います。
このように考えて行動したときに、事業の継続性に貢献する人事と思い至りました。SDG’s的に言えば持続可能な人事、サステナブルな人事、でしょうか。
みなさんの会社の人事部門や、人事担当の方々は、事業継続性に寄与する人事の度合いはいかがでしょうか。
次回に続きます。
それでは、また。