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#197 組織カルチャーと評価制度を合わせる 24/6/10

みなさん、こんにちは。
今日は、企業の組織カルチャーと人事制度、とりわけ評価制度について、考えます。

(実例を基に編集しています)
先月、評価のキャリブレーション会議にての一コマから、またも考えるに至りました。

ある部門長が自部門の評価査について、問題意識と実際の査定案を持ち込み、参加者に意見照会をしました。

1つ目の話です。
「現在の年収額がそのパフォーマンスレベルに見合っていないです。希望して異動してきたのですが、前のポジションでは役職にもついていたこともあり、絶対額が高く、しばらくは昇給評価の査定をすることは現実に難しいと考えています。今回の評価から、現在のポジションと実力が見合う金額まで、段階的に調整をかけようと考えています」

2つ目の話です。
「今の職場にきて、3年経過したメンバーです。彼も希望で異動してきました。仕事をひととおり覚えた2年目以降、上達が見えないと捉えています。たとえば、1人で抱えるなど仕事の仕方が上手にならないことです。もう1つは基礎を応用に使えないことです。この仕事で必要な最低限の基礎を覚えた後、習熟していません。一度、奮起を促す意味を込めて、マイナス査定を考えました」

中々に悩まれたことが伺えます。そして、多くの評価者、上長は先送りする問題に手を突っ込む判断と行動は見習うところがあると感じます。

この評価とその背景について、まずは意見が出されました。
「期初や期中に、あらかじめ降格や減給について会話はされていますか」
「事前に会話しているようでしたら、判断としてはなくはないですかね」
「事業全体は平均年収を上げることを掲げているため、(そのターゲット年収付近の)後者のメンバーについては、どうでしょうね」

これが主に給料を減給する査定をすることに対するリアクションでした。
そもそも当社は、減給評価自体はかなり出現率が低いです。その出現率の中でも、大半はレッドカード的な意味のシグナルを送るケースや、勤務不良など明らかな説明ができる場合に限られているのが現実です。

それは、厳しい評価をすることは、従業員を大事にしていない、とのメンタルモデルが組織カルチャーとして内在化しているから、と考えます。

次に、2名の実例とも希望して異動してきた経緯がありました。
本人の手挙げによる異動にせよ、計画的な異動にせよ、当社は積極的な異動を通じて、能力開発・キャリア開発機会を提供する考えを、誰ともなく持っている企業風土です。昔ながらの企業スタイルと言えます。さまざまな部署・職務の経験を通じて、社内外の人脈も形成し、比較的ゼネラルな人材を育てる、その仕組みを運用している、と言えます。

この背景・思考様式が前提にあります。
そのため、減給査定そのものではなく、社内の人材マネージメントの仕組み=異動、の阻害要因を懸念される声が挙がりました。

「異動者の評価を下げると、異動が促進されなくなりそうです」
「配置が必須なポストに社命で異動を提示するときに、ポストと年収が合わないから、と自己抑制が働いてしまいそうです」
「異動すると給料が下がるとの認識が強くなると、配慮してしまって候補者としてノミネートもされなくなるかも」

これも、意見としてはもっとも、と感じます。少なくとも、現在の人材マネージメントのあり方の思想に照らすと、懸案に上がった意見はそれを色濃く反映したものだと考えます。

これに対しては、職務等級制度、いわばジョブ型に近い人事制度を採り入れる可能性が出てきます。あるいはハードの等級制度は変えずとも、実質的な制度運用を職務型に近づけることが選択肢としてあります。

一方、職務型を導入すれば、未経験ポジションに配置する際には、基本的に給料、年収が下がることになります。すると、少なからず、チャレンジする意欲を抑制してしまう負の効果は見込まれます。トレードオフが生じることになります。

なお、念のため、本来のジョブ型は、そのジョブができる証左をもって採用・配置するため、その意味では真のジョブ型とは異なります。

個の実例の評価査定自体は、会議のなかでいったんの結論を見ました。しかしながら、よりプリミティブな課題もあぶり出したアジェンダでした。その部分については、近未来の人事制度改定や、人材マネージメントの方法論や、人材に対する思想のアップデートを通じて、解決・解消していくことになります。

さて、みなさんは、自社の組織カルチャーと人事制度の整合しているところ、不整合しているところを感じられることはありますか。そこにはどんなギャップがありますか。
それでは、また。

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