#13 上手く進んでないときほどカタチから入る 23/12/9
みなさん、こんにちは。
仕事をしていくと、ハマりやすい落とし穴について、考えてみます。
実際を参考にデフォルメしています。
とある事業部門の退職者が漸増していく時期があって、人事のわたしたちに相談をされた時の話です。1年半程度、事業部門を人事部門が支援して退職抑止策に取り組み、改善の軌道に乗せたました。なお、現在はそれを引き継ぎ、平時の均衡状態を維持するに至っています。
相談されたときには、すでに年間退職率20%に迫るほど危機的な状況にまで悪化していました。わたしたち人事も、悪化する一方な状況を遠目には捉えていたものの、手を出すのが遅れたことは反省点でした。いい学びになって今に活かしています。
さて、では、何が危険信号なのか、です。
退職率20%ですから、当然、事業部門では相当に問題意識があり、取り組むべき課題の優先順位もかなり上位に位置づけて事業運営をしていました。ゆえに、組織を横断する退職抑止のタスクフォースを組み、取り組みを進めていました。
まさにこのタスクフォース形式でチームを組み、主担当に誰かを立てる。そして、その人を中心に取り組みを推進しようとする。このカタチこそが、危険信号と考えます。
では、なぜ危険信号かと言うと、わたしの考えはこうです。
タスクフォースに召集されるメンバーは、多くの場合、最も忙しい人たち、たとえばミドルと言われる課長層です。ですから、本業の顧客や現場、タスクフォースのいずれか、あるいはそのすべてに、十分な時間と力を使うことができなくなります。これが危険の1つめです。
懸案のとおり当該部門でも、狙った効果は出せず、解決までの時間や損失が膨らみ続けていた状態でした。つまり、そもそも構造的にムリが生じていた、と考えるが妥当ではないでしょうか。
2つめに、タスクフォースを組成した瞬間に、他の課長や部長、責任者のマネージメント層は自分ゴトの意識が薄れます。
人の心とはズルく弱いもので、誰かがリードしてくれる環境におかれると、待ち、の姿勢が強くなってしまいます。よって、状況の好転には時間を要します。相談のあった部門責任者も、わたしたち人事が最初にヒアリングした際、現状を把握しておらず、外から見れば、他人事のように思えたほどです。
3つめに、タスクフォース系の組織は、過剰な分析に走ります。
一般に、特別なミッションのために組成するタスクフォースは、事実や実態把握、そのための現地や現場調査・分析を起点にスタートします。退職抑止タスクフォースも同様でした。過去の退職者を、属性情報(年齢、性別、等級、年次、過去の評価結果、所属組織など)やエクスペリメンタル情報(ジョブアサイン経験、退職理由、タレント評価、各種サーベイ回答など)を、クロス集計分析、統計手法による分析をしていました。分析結果は、きれいに、パワーポイントの報告資料として仕上がっていました。
最後の4つめは、タスクフォース自体の過剰な計画と形式が作られることです。
たとえば、プロジェクトの体制図や、プロジェクトの目的・背景、課題、ゴールなどプロジェクトチャーター、ガントチャート、WBSなどの資料です。もちろんこれらは、プロジェクトを組成したり、進める上でこれらの材料を整えることは基本かつ重要です。
しかし、退職抑止策は、社内それも部門内の活動です。そして、もはや一刻の猶予もないだろう、危険地帯に入った状態です。そう考えると、形式や段取りをきれいに作り込むことより、やらなければならない優先事項があるように思います。たとえば、退職可能性があがった従業員に対して、まずリテンションの一手を打つことです。
ここに挙げた4つの象徴的な事象は、危険信号の症状だと、わたしは経験から自信を持って言います。
危険信号の症状をおさらいをします。
・過剰な分析や過剰な計画が作られている。
・きれいな資料にまとめている。
・タスクフォースプロジェクトが複数組成されている。
・タスクフォースの主担当は組織のミドル層(最も忙しく負荷が高い層)である。
これらの症状を、組織内第三者の立場から俯瞰してみると、
もっともらしいアリバイづくりをしている、体裁をとっている、と見えることが大半です。
人や組織は、困ったときほど、形から入りたくなります。
やっている雰囲気が出るからです。
やった感が持てるからです。
解決したい課題や目標が固定的で、その答えもおよそ画一的であれば、カタチから入ってもさほど問題ではありません。一方、課題が目標が変わりやすい、ムービングターゲットの場合(現在はそうしたケースが大半)、可能性を手探りに見つけていかないと対処が遅れます。
ですから、カタチから入るとハマる危険性が高く、むしろトライ&エラー、トライ&ラーンで進める方が圧倒的に効率が良い、とわたしは考えます。形から入る症候群、に陥らないように注意したいですね。
さて、みなさんはいかがでしょうか。
それでは、また。
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