#98 異なる職務の成果評価は生産性が最適である 24/3/3
みなさん、こんにちは。
従業員の業績パフォーマンスの評価と目標について考えます。
MBO(目標管理制度)を導入している会社も多いと思います。当社もMBOを長年使っています。
MBOは目標と評価の両面機能を持っています。より本質的には「目標」を上手に用いて、成果を出すための課題やリソースに対してセルフマネジメントを利かせることが一意です。
また別の角度から少し時間軸を長く見れば、自己実現やキャリアに対して、自律・セルフコントロールすることが活用方法・上級編と考えます。
さて、話を戻します。
従業員の多い会社、
事業ドメインやサービスが複数にわたる会社、
プロジェクトベースの仕事が中心の会社、
これらの企業では、従業員個人によって、業績パフォーマンスの求める成果、すなわち任せている職務が異なる場合が多いのではないでしょうか。
それゆえに、評価者の課長や部長からは、
「メンバー個々で目標が違うから比較や相対化ができない」と、
悩みや不満の声を聞く人事担当者も多いと想像します。わたしもその1人です。
また、こんな声もよく聞かれる1つです。
業績≒売上や利益など財務指標(経済価値)数値と捉えがちな企業も多いと想像します。
その場合によく聞かれる声が、
「売上や利益に直接的に関与できない、あるいは責任を負っていない従業員の目標の決め方や評価方法はどうすればよいのか」です。
典型的なのはバックオフィス、間接部門の従業員です。
このように、一義的な意味の業績パフォーマンス=財務数値、に直接貢献しづらい仕事に携わっている従業員や、従事している仕事=成果目標が個々人によってかなり異なる場合にどうすればよいか、人事部門の悩みの種でもあります。
わたしが考える解の1つは、それは所与の条件だから変えることができない、と前提と割り切ることです。割り切ってどうするのか。評価キャリブレーション会議などを通じて、合議して納得解を作り合意することです。現実解の1つだと考えます。
ですが、わたしがより良い選択肢がないか考えた上で提案したいのは、「生産性」を目標および評価指標にする、です。
どんな成果目標を置いていようと、生産性ならば同じ土俵で、同じものさしを用いることができるのではないか、と考えています。いくつか例を出してみます。
まず、生産性=出力・アウトプット量/入力・インプット量が計算式です。
これを先期と当期で比較して、どれくらい生産性が向上したかを指標とし、数値にします。
ある個人Aさんの営業実績を例にします。
前半期の売上30Mを総労働時間1000時間で創出しました。
生産性①時間あたり売上3.00万円
今半期の売上32Mを総労働時間980時間で創出しました。
生産性①’時間あたり売上3.26万円
時間あたり売上を生産性と置いた場合、
対前期 3.26/3.00=108.7%
こちらの例だと、異なる事業やサービスの営業部門同士であれば、時間あたり売上を生産性指標として同じものさしにすることができます。
しかし、仕事が営業以外の従業員との比較はできません。
そこで、さらに考えます。
アウトプットが売上であろうと、品質指標であろうと、その部門や従業員の成果指標であるアウトプットの前年(前期)対比をみます。
同様に、インプット量もその成果指標を生み出すのに投入した量を前年(前期)対比でみます。個人の場合労働時間や稼働工数、部門単位(課長や部長など組織単位)の場合は、ヘッドカウントがより適当な指標と考えます。
そのアウトプット前期比とインプット前期比を割ったものが前年(前期)対比の生産性、とおける考えます。
この考えで上記の営業担当の数字を当てはめると以下のように算出できます。
アウトプット量 32M/30M=106.7%
インプット量 980H/1000H=98.0%
生産性 106.7/98.0=108.9%
これを品質管理の仕事に従事している従業員と考えてみます。ウェイトの高い成果指標が不良品発生率だったとします。
アウトプット:不良品発生率
前期0.15% 当期0.10% (1-0.10)/(1-0.15)=105.8%
インプット:労働時間
前期2100時間 当期1990時間 1990/2100=94.7%
生産性 105.8/94.7=111.7%
こうすると、対前期の生産性は、営業担当が108.9%、品質管理担当が111.7%になります。
よって当期に相対的に生産性が高かったのは、品質管理担当に軍配が上がります。
こうして異なる仕事、異なる成果目標の間の比較であっても、生産性指標に基づき比較することで、同じものさしを用いて比較、評価することが可能です。
1つ難点をあげるなら、何かしら定量で示せる成果指標を作る必要があることです。
どうしても何もなければ顧客満足度やNPSスコアなど、最終的な結果指標になるかもしれません。
こうして人事部門は、会社や組織が多様になっていったときにも、成果評価をより適切に、公平に運用していくことが可能ではないか、と考えています。
みなさんは、どのようにお考えになりますでしょうか。
それでは、また。