1からEM採用を始めるあなたへ【エンジニアリングマネージャー採用の教科書】
以前から「エンジニアリングマネージャー(以下、EM)」の採用を行なっている企業は一定数存在していましたが、昨今、「EM」と言っても定義が広く、企業によって求めている人物像が変わるケースがよくあります。
「EM」という定義が幅広い言葉の中で、実際にどのような方であれば、EMとして採用できそうなのか?Web系エンジニアの採用が難しいということはEMの採用はもっと難しいの?など、さまざまな疑問が多くの企業で生まれているのでは思います。
そこで今回は、EM採用に必要な前提情報や施策、手法について本noteで説明いたします。EM採用をゼロから始める方にも、本noteを読んで全体感を理解していただけると嬉しいです。
1. EM採用を始める前に把握した方が良いこと
EMを採用するための手法を公開する前に、よりスムーズに採用活動を進めるために事前に把握した方が良いことをお伝えします。
1-1. 「EM」という言葉の定義の広さ
冒頭でもお伝えしたように、まずは「EM」という言葉の定義の広さを理解しましょう。
突然ですが、皆さんは「EM」と聞いてどのような定義を思い浮かべますか?
思いつく限り出してみました。皆さんがイメージされたEM像は上記の中に内包されますでしょうか?
これらは、全て「EM」の業務の中に含まれることがあります。
とても幅が広いですよね。だからこそ、採用活動を始める前に把握しておいた方が良いのです。本ブログでは以下のように定義した上で、最適な採用手法や魅力設計の方法についてお伝えできればと思います。
ちなみに、流行りのChat GPTで「EMとは?」という質問をしたところ、以下の回答が返ってきました。(とても精度が高く、驚きました….笑)
また、EMと類似している用語として、VPoEやテックリードなどが存在しますので、EMと類似用語の違いについても触れておきます。
会社のフェーズによって各職種の役割が若干異なりますので、参考程度にご覧いただけたらと思います。
本項を整理すると、「EMの定義の幅の広さ」を理解いただければ問題ありません。次項では、より具体的にEMの役割の分類についてお伝えします。
1-2. 「EM」に求めることの明瞭化
上記でお伝えしたように、EMの言葉の定義は幅広いため、採用活動を始める前にEMにどのような役割を求めるのかを明瞭化しておく必要があります。明瞭化することで求人票の作成がスムーズにできます。
改めてEMを整理します、👇をご覧ください。
上記では「弱いEM」と「強いEM」の2軸で定義しているのですが、本ブログではEMのタイプを3つに分類できればと思います。
では、ここからどのようにEMに求めることを明瞭にしていくべきでしょうか?
結論としては、採用企業が"弱みや課題"と感じている部分を埋める役割を担っていただくことが良いと思っています。例えば、技術に強い企業であれば、人・組織に強いEMを求めた方が良いですし、カルチャーに強い企業であれば、技術に強いEMを求めた方が良いです。
個人的な所感では、人・組織に強いEMを求めている企業が多い印象がありますが、それぞれの企業の状況に合わせて求める人物像を明瞭にしていただけたらと思います。
一点補足すると、上図でご紹介している「強いEM」を採用できたらとても良いのですが、採用活動に携わったことのある方はご存知かと思いますが、ほぼ採用市場にはいません。
そして、個人的には先ほど3つのタイプに分けたそれぞれの領域に強みを持つEMも、そこまで多くないのが実態と捉えています。そのため、EMやVPoEが既に在籍しており育成環境が整っている場合は、現在Webエンジニアで組織マネジメントに興味のある方も対象にできると採用活動は大きく進むと感じています。(こちらの詳細は後述します。)
1-3. 「EM」の求人動向
1-2では自社視点の話をしましたが、市場がどのような状況かを把握することも採用活動を始める上でとても重要です。
Forkwellさんが2022年11月にEMの市場価値や年収のリアルをまとめたブログを公開されていたので、こちらからいくつか抜粋して求人動向をお伝えします。
まずは「求人数」についてです。
全求人の中でEM求人の割合は少しずつ増えていることがわかります。各企業がエンジニア組織を拡大する今、エンジニアをマネジメントするEMのニーズはさらに増えていくでしょう。企業側のニーズは高まる一方で、求職者が同じように増えているかというとそうではないため、採用市場では難しい職種と言えます。
続いて「年収」についてです。
下限年収の平均は、2018年時点で 600万円だったものが徐々に増加し、2022年では約700万円までアップしています。一方、上限年収の平均は2022年に1100万円を超えているものの大きな増加はなく、だいたい1,000万円前後となっています。
最後に、「リモートワークの状況」についてです。
2019年時点では出社が必要な求人が50%ほどあったのに対し、2021年から、フルリモートの割合が逆転し、50%以上を占めています。このデータから、リモートワーク下でのマネジメントスキルが求められていることがわかります。採用に目を向けると、フルリモート求人でないと働き方の魅力がやや劣ってしまう可能性あることを念頭に置いていただければと思います。
2. EMの採用手法
続いて、EMの採用手法についてお伝えします。
最適な採用手法はどんなターゲットを求めるかによって変わりますので、まずはEMのターゲットとなりうる方をご紹介します。(本ブログでの「EM」の定義は1-1でお伝えした通りです)
まず、「EM経験のある方」ですが、エージェント / エージェントが使用する採用媒体が筆頭かと思います。ご存知の方も多いかと思いますが、エージェントは自ら手を動かすWeb系エンジニアより、業務系エンジニア、プロジェクトマネージャー、EMなどが登録している方が多い傾向です。
採用活動を進める上での注意点としては、EMという呼称では「無い」が、EMのような職務を行なっているエンジニアの方は一定数いらっしゃいます。そのため、採用媒体でスカウト検索をする場合、そしてエージェントにご依頼をする場合は、「求める人物像(必須要件)」を明瞭にお伝えすることをおすすめします。
次に、「現年収700〜800万円開発エンジニアで組織やピープルマネジメントに興味のある方」ですが、Forkwell / Findy / 転職ドラフト / LAPRASが筆頭かと思います。これらの媒体では求職者の志向性や、これまでの業務内容が(プロフィールに記載している人は)閲覧できるようになっているため、どのような業務をメインで行なっていて、将来何をやりたいと思っているかが比較的わかりやすいです。
また、なぜ、"年収700〜800万円"開発エンジニアをターゲットにするかいうと、技術スキルが一定レベルまで到達し、次のキャリアをどうするか考える方が多いためです。30代で技術力があり、ピープルマネジメントに興味をお持ちの方であれば、EMやVPoEが在籍しており育成環境が整っている場合、採用ターゲットとして考えることをおすすめします。一方、「EM経験必須」とした場合は採用活動がとても難しくなることもご理解いただけたらと思います。
3. EMの魅力設計
続いて、EMの魅力設計の話をしていきます。前項からの流れで、以下のターゲットに対し、どのような魅力設計をするべきかをお伝えします。
魅力設計をする際に重要なことは、「ターゲットから逆算したインサイト/メッセージング設計」です。インサイトとメッセージングとは何かを簡単にご紹介します。(詳細を知りたい方はこちらのブログをご覧ください。)
それでは、それぞれのターゲットに合わせた魅力設計をお伝えしていきます。
3-1. "EM経験のある方/EMクラスの方"への魅力設計
まずは、EM経験のある方/EMクラスの方への魅力設計から。今回は2つご紹介します。
少し解説をします。
上記でお伝えしたように、EMは主にピープルマネジメントを役割としている中で、開発もプロジェクト管理もピープルマネジメントも….となってしまうと、EMをしている方にとってはストレスがかかりやすいです。
そのため、CTO(経営)やVPoE(組織)、リードクラス(開発)のエンジニアはすでに在籍しており、EM(人)として本質的に行うべきことに集中できる環境があるということが魅力になりやすいというイメージです。
また、「どんな会社の状況であっても、ピープルマネジメントに注力していただく想定をしている」というメッセージは経営陣としての強い意志を感じられる部分のため、EMとしては魅力的な内容だと思っています。
続いて2つ目。
こちらも解説をします。
まず、このインサイトはエンジニアより、ビジネスサイドの意見が優先される組織、エンジニアの役割/価値/重要性を本質的に理解できていない組織で起きやすいです。自社でプロダクトを持つ事業会社であれば、"プロダクトがあってこそ"、お客様に価値提供ができると思う一方で、ビジネスサイドとしては「売上を作っているのは自分たち」という自負が強いとこのようなインサイトが生まれることになります。(この議論をさらに深ぼることはできますが、伝えたいこととずれてしまうので詳細は割愛します)
EMの役割を言い換えると、「エンジニア組織の働きやすさを向上させること」であるため、組織としてエンジニアにとってリスペクトがない環境だと、自分のバリューを発揮しにくくなってしまいます。だからこそ、エンジニアへのリスペクトを経営陣が示し、エンジニアが働きやすい環境や制度作りをしていくことが重要です。
3-2."現年収700〜800万円の開発エンジニアで組織やピープルマネジメントに興味のある方"への魅力設計
続いて、"現年収700〜800万円の開発エンジニアで組織やピープルマネジメントに興味のある方"への魅力設計について、お伝えします。
こちらも解説をしていきます。
大項目2でもお伝えしましたが、年収700〜800万円のメガベンチャー企業に在籍しているWeb系開発エンジニアは、技術スキルが一定レベルまで到達し、年収が頭打ちになり、次のキャリアをどうするか考える方が多いです。
そのインサイトに対して、どのようなメッセージングができると良いかを考えると、「育成環境と評価制度」ではないかと個人的には思います。
上記のメッセージングにも記載しましたが、経験のあるVPoEやEMが在籍していることで、ほぼ初めてのEMに関する業務を教えてもらえるというのはとても大きいです。また、評価制度については企業によりますが、専門性ごとに評価制度が設計されていることが少ないです。(そのため、年収の頭打ちが来てしまうというわけです)そのような中で、専門性ごとに評価制度を設計していることはキャリアに迷っているエンジニアにとって大きな魅力になります。
4. EM採用の落とし穴
4-1. 求める役割を明瞭にできておらず、要件を高く設定しすぎて採用に至らない
主に大項目1でお伝えしましたが、まずはEMの求める役割を現状の組織の課題や弱みから、逆算した上で設定する必要があります。特にベンチャー/スタートアップ企業ですと、開発組織の課題や弱みが多く、多くのことを求めがちになってしまうことがあるかと思いますが、「EMを何でも屋扱い」しないことは意識しましょう。
また、EMの求める役割を明瞭にしていく上で、自社の課題や弱みから逆算することに加え、自社を客観視して採用市場を見た時に、自社のエンジニア採用におけるブランディングレベルはどれくらいなのかを鑑みた方が良いです。なぜなら、冒頭からお伝えしているように、エンジニアの評価制度設計やピープルマネジメントの経験者が採用市場に多くないためです。
上記の観点を踏まえた上で、適切な求める人物像を設定し、採用活動を進めていただけると良いかと思います。
4-2. 経営陣の思想に共感できず、採用に至らない
冒頭でお伝えしたように、本ブログでのEMの定義は「エンジニア組織のピープルマネージメントを行う人」で、具体的には1on1などを通して、エンジニアのフォロー、メンタリング、キャリア構築などの相談や、採用活動を行います。言い換えると「エンジニア組織の働きやすさ」を向上させる人です。
採用活動や1on1等の組織マネジメントという、経営においてもとても重要な業務となるため、経営陣の思想とどれだけマッチするかが非常に重要です。「エンジニア組織の人事」に関わるため、経営陣の中でもCHROや人事責任者クラスの方が目指している方向性に共感できるかが鍵になりますので、採用活動の際に、スキル的な見極め以外に、経営陣との思想のマッチ度を確認できるとミスマッチが起きず、良い採用につながると思います。
最後に
いかがでしたでしょうか。
ここまでEM採用に必要な前提情報や魅力設計、採用手法に触れてきました。EM採用をこれから始めようとしている方や、悩んでいる方に読んでいただけたら嬉しいです。
私自身、EM採用について勉強中ですし、これからさらにトレンドになっていく領域だと思いますので、引き続きベンチャー/スタートアップの採用活動を行いつつ、情報をアップデートしていきたい思いが強いです。
EM採用を主導されている方、EMの方、ぜひさまざまな情報交換をさせてください。
長文でしたが、最後までご覧いただき、ありがとうございました!
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