映画の感想まとめNo.41~50
観た映画の感想を10本ずつ、箇条書きでまとめています。
No.00041『劇場版進撃の巨人 前編 紅蓮の弓矢』
2014年上映/荒木哲郎監督/製作国:日本
鑑賞日:2020/11/26
・原作は確か22巻くらいまで読んでいる。アニメもこの頃は見ていた。原作を一から読みなおしたいなと思っているところ。
・この劇場版では、アニメの1話からエレンが巨人化して壁の穴を塞ぐところまでが総集編としてまとめられている。アニメを見ていた頃を懐かしみながら鑑賞した。面白かった~。そりゃそうか。アニメをまとめたんだから面白くないはずがない。
・初めて進撃を見た時からずっとアルミンが好きで、この映画でもアルミンがたくさん出てて嬉しかった。アルミン達が小さかった頃から大きくなったところまでを続けて見られるので良かった。アルミンかわいいんだよな。頭はいいけどいじめられっ子で臆病というキャラに見えるけど、本当はすごく強くて勇敢な子。勇気と知性に溢れている子。
・この時はまだ、新劇の巨人のこと「理不尽に襲ってくる巨人たちに立ち向かう人間の物語」だと思い込んで見ていたなぁ、としみじみした。全然違うんだもんなぁ。今思えば…という伏線が随所にあって感心した。
・一番「あぁ…」と思ったのは、エレンのお母さんが巨人に食べられてしまうシーン。アニメを見ていた頃はこの巨人のことを他の巨人と変わらないモブ巨人で、だからこそ不条理で悲しいと思っていたのに、原作でこの巨人の正体が分かった今改めて見るとなんて業の深いシーンなんだと震えた。今思えばおかしいもんなぁ、この巨人。まっすぐエレン達の家に来て、家の下敷きになって隠れているはずの母親を、わざわざほじくり出したんだもんな。食べ方も怖い。わざわざ身体をバキバキに折ってから食べている。一応「無垢の巨人」ではあるらしいけど、正体が正体なだけに、執念というか特別なものを感じた。ただでさえ悲しいシーンなのに。
・この時はまだ、進撃の巨人が「始まった」とばかり思っていたのに、長い長い物語を知っていくうちに、今の時代は進撃の巨人の世界ではかなり後期にあたることが分かる。中途半端に原作を知ってしまったから見方が変わってしまったから、ちゃんと読んでから、またアニメをもう一度1話から見ていきたい。でもとりあえず劇場版の後半もすぐ見る。
No.00042『劇場版進撃の巨人 後編 自由の翼』
2015年上映/荒木哲郎監督/製作国:日本
鑑賞日:2020/11/26
・劇場版後編。エレンが拘束されるところからアニ硬質化までの総集編。
・今回ではマルコが死んでしまうから相当に覚悟して見たのだが、割と最初の方でサクッと簡略化されており、鬱にならずに済んだのはありがたいがちょっと切なくなった。ジャン、あの時本当はものすごく驚いて動揺するシーンなんだけど、簡略化されてたので「仲間は死ぬけどそういうもんだよな」みたいなテンションになってるように見えてちょっと笑った。
・初めての壁外調査と、女型の巨人との闘い。何話分も一気に見るので、こんなキツいものだったか…と改めて思った。何より、リヴァイ班、こんなに惨たらしい死に方だったか…。でも、最後の最後にたった4人で立ち向かってここまで女型にダメージ受けさせて、リヴァイ班って本当に精鋭の集まりだったんだなぁ。
・アニ、アニメで見てた時は本当にただ嫌なヤツだな!と思ってたけどやっぱり半端に先を知ってしまっていると見方が変わる。女型として戦ってるとき、こんなに悲しい顔してたんだなぁ。特に終盤で、壁をよじ登ってるときにミカサに落とされるシーンとか。こんなに絶望的な顔していたんだなと思ってびっくりした。
・アニも、兵士と戦士の狭間で苦しかったんだろうなと思った。「私は戦士になり切れなかった」というセリフもあった。アルミンに裏切られて辛かった、というのも本心だったんだろうな。エレンもそうだけどアニも、大人によって分からないままに巨人の能力手に入れてるわけで。
・それにしても、初期エレンやっぱムカつくなぁ。まだ巨人になる力をうまく使いこなせていないというのも分かるしアニのことも分かるけど、いちいちアルミンに強い言葉をかけてもらわないと目を覚ませないというのがなぁ。駆逐してやるだの殺してやるだの、言葉がデカいから余計腹立つんだよな。ますます原作読み返さなきゃなという気持ちになった。
No.00043『ヴェノム』
2018年上映/ルーベン・フライシャー監督/製作国:アメリカ
鑑賞日:2020/11/27
・マーベルとか一切知らないけど、過去にいくつか「面白いよ!」と勧められた作品の中で一番興味を持ったのがコレだったので鑑賞。ポスター見て「この闇堕ちスパイダーマンみたいなのかっこいいな」と思ったので。
・最初の方は、あんまりパッとしない主人公エディの良いとは言えない人生みたいなのを見させられ、あんまりおもしろくないな…早く終わんないかな…と思っていたが、ヴェノムが出てきたあたりから一気に面白くなって良かった。
・ヴェノムがもうとにかくかっこよくて最高。声も良いし顔も良い。全部良い。エディがどうしようもないから余計に際立って良かった。
・カーチェイスのシーンがすごかった。本当に寄生されているような感じ。すごく迫力があって、のめり込んで見ることができて楽しかった。カーチェイス以外も、戦うシーンがすごく迫力があってすごかった。途中から一気に楽しくなる感じ。
・ヴェノム、もっと怖いヤツなのかと思っていたのにめちゃくちゃ素直でかわいい子だった。ヴェノム好きだ~~~。ネットでヴェノムのこと「ど根性ガエル」と例えている人がいて面白かった。そう見えてきちゃうじゃん。
・それにしても、エディのお飾り主人公感がすごくて笑ってしまった。まぁ寄生されてる存在だし元々は一般人だから仕方ないか…。最後は良いコンビになるしね…。でもここまでヴェノム頼りとは。初めて全身ヴェノムになったとき「もう一生このままでいいよ」と思っちゃったな。
・ライフ財団の社長?の若者、絶対死ぬじゃんってキャラだったし案の定死ぬけど、いけ好かない感じだったな。社長に寄生する側のヴェノムも、ガサガサで色も変だったから、いけ好かないヤツにはいけ好かないヴェノムが付くんだなと思った。こっちのヴェノムは、マレーシアで女の人からおばあさんに、おばあさんから女の子に寄生しながら社長のとこまで来たっていうことなのかな?なんかよく分からなかったけど。
・最後まで楽しかったし、ヴェノムもかっこよかった。けど、エンディングの途中でなんかスパイダーマンのアニメが始まったのが嫌だったな。全然面白くないドスベリアニメが始まって萎えた。どういうつもりか知らないが、多分あれはマーベルを知らない人間をふるいにかけてマーベル好きな内輪で盛り上がる的な感じのやつなんだろうなと思った。マーベルっていうデカいハコでもそういうことするんですね。面白くないしスベッてるからやめた方がいいと思うけどな。
No.00044『ニンジャバットマン』
2018年上映/水崎淳平監督/製作国:日本、アメリカ
鑑賞日:2020/11/28
・この作品、映画館に公開初日に見に行ったやつ。公開初日特典でもらえたポスター、今も大事に持っている。今回、ネットフリックスにニンジャバットマンがあるということを知って嬉しくなって見た。
・この作品を一言で表すなら「大人がやりたいこと全部やった」作品と言った感じ。本当に見てて面白いし、清々しい。素晴らしい技術力を持っている大の大人が寄ってたかってやりたいこと全部やったら出来た作品がコレ、といった感じ。最近はクールジャパンだとか何とか言うが、ジャパニーズアニメーションの良いところと狂っているところが全部つまってて最高。
・ストーリーは、現代のゴッサムシティでゴリラグロッドの生み出した兵器によって悪党たちとバットマンが戦国時代の日本にタイムスリップしてしまう。悪党たちは日本の各地で戦国大名となり、中でもジョーカーとハーレイクインが尾張の国を支配して大暴れしている。バットマンは日本の忍者集団「蝙蝠衆」と力を合わせて悪党たちを倒すために戦う…というもの。
・この作品の見どころは、言ってしまえば全部なんだけど、その中でも戦うシーンと「五城合体」のシーンがすごい。戦うシーンはそれはそれはもうとにかく迫力もあるし、アニメがあり得ないくらいヌルヌル動いててすごい。問題は「五城合体」の方。
・大名となったゴリラグロッド、ポイズンアイビー、デスストローク、ペンギン、トゥーフェイスは各地でロボットの城を作り、富士山の麓で戦うために集まって各々の城を合体させ一つの大きな「城ロボット」に変形するという、もう既にムチャクチャなシーンなのだが、なんというか全てにおいて凄すぎる。多分この映画で一番やりたかったシーンがここなんじゃないかな。突然流れる異様にアップテンポな五城合体ソングに合わせて、城がどんどん合体していくのが面白すぎる。バットマンたちが呆気にとられてただ見ていることしか出来ないのも面白い。映画館で見た時もビックリしすぎて笑ったし「洗脳じゃん」と思った。今日見てもやっぱり笑ったし洗脳だと思った。
・この映画は、バットマンシリーズやアメコミに詳しくなくても楽しめると思う。知識があるかないかより、このノリが肌に合うか合わないか、の方が大事になってくる気がする。一発でバシっと合ってしまえば何度見ても楽しめるし、何これは…と引いてしまえばそれはもう仕方ない。でも、個人的には一回見てほしいなと思う。元気がないときに見たら一発で元気が出るような、難しいことは何も考えずに頭空っぽにして楽しめる作品。見た後も頭空っぽになるので本当に最高。
No.00045『エスター』
2009年上映/ジャウム・コレット=セラ監督/製作国:アメリカ
鑑賞日:2020/12/02
・ずっと見たい見たいと思ってたやつ。
・エスター、最初から大人なのか子どもなのかよく分からん見た目ですごいなと思った。なんとも絶妙な気持ち悪さがあって。
・この作品は一応ジャンルが「サイコホラー」とのことなんだけど、なんかもう次から次に嫌なことが起きるから笑っちゃった。やばいぞ…エスター来るぞ…って思ったら本当に来るし、何考えてるか分からない不気味さがすごくて笑っちゃう。行動一つ一つが読めないから怖い。
・有名作品すぎるので「エスターが実は子どもじゃない」みたいなのはなんとなく知ってたけど、それでも面白かった。でももし公開当時、ストーリーを知らないで見てたら「なんじゃそりゃ!!」ってひっくり返るくらいビックリしただろうなと思った。知ってるうえで見ても「これはビックリすぎるだろうよ」と思ったし。実年齢でも笑ったな。子どもじゃないとかのレベルじゃないじゃん。
・マックスがかわいくて、作中唯一の癒しだった。だからこそ「マックスが死んだらメンタル持たないな」と思いながら見ていた。
・エスターの絵がすごい。子どもとして描いてる絵はもちろん、終盤の、壁に描いてある絵も。絵まで大人かい、と思った。
・あと有名すぎるけど、父親誘惑シーンは本当にすごい。なんというか、あのシーンはエスターがすごいというかエスターを演じる女優さんがすごいという感じ。めちゃくちゃ不気味だったしなんか笑っちゃった。あのシーン笑っちゃうな。
・エスターは結局サイコパスなのか?それともボーダーみたいな人格障害なのか?もしボーダーだったら試し行動のレベルがすごすぎるな。究極のメンヘラ。
・ネタバレになるけど、終わり方も良いなと思った。母親が自分でケリをつけるといった感じで。
No.00046『ピエロがお前を嘲笑う』
2015年上映/バラン・ボー・オダー監督/製作国:ドイツ
鑑賞日:2020/12/06
・以前近所のTSUTAYAの微妙なコーナーで見かけてからジワジワと気になっていた作品。ネットフリックスにあったので鑑賞。
・ピエロの顔はあんまりピエロっぽくないが、そこ以外は最高に面白かった。
・天才ハッカーとして国際指名手配されていた主人公。いじめられっ子の冴えないパソコンオタクだった主人公が、なぜ殺人事件にまで関わるような大きなハッキング事件の犯人と言われるようになったかを語る、という話。
・本当に面白かった。ハッキングなんて何やってんだかよくわからない分野だけど、とにかく「かっこいいハッカーあるある」とチャキチャキ進むストーリーのおかげで全く中だるみすることなく、最後までずーっと面白かった。正直途中で何回か「え?こんなアッサリ行けるんか?」と思うところは何度もあったけど、とにかく勢いがいいので「まあいっか~!!」となって楽しかった。
・「パーカーのフードかぶりがち」「Appleのノートパソコンかちゃかちゃしがち」「怪しいバーチャル空間で喋りがち」「黒い画面でワーッと文字いっぱい打ちがち」「停電とか画面乗っ取りとか、ノーパソかちゃかちゃしただけで派手なことできがち」みたいな、かっこいいハッカーあるあるが全部見れたので最高すぎて笑った。
・勢いがあって面白いんだけど、「知り合いからのメールのリンク踏んで個人情報盗まれちゃう」とか「うっかり入館証落として悪用されちゃう」とか「ゴミの中から個人情報盗まれちゃう」みたいな、現実でもありそうな怖いこともしっかり描かれていて、そういうところでふと怖さを感じられて良かった。そうだよな、インターネットは危険もいっぱいだし個人情報の扱いはちゃんとしなくちゃいけないんだよな、と思った。ベタすぎるけど。
・フィルマークス等の映画クチコミサイトや近所のTSUTAYAの宣伝文句では「どんでん返し」「最後まで騙される」みたいなことが書いてあり、ふ~んと思いながら見たけど本当に騙されちゃったから面白かった。
・正直、邦題もあんまりかっこよくない(原題は『Who am I』そっちの方がいいな)しTSUTAYAのよく分からんコーナーでベタベタに宣伝されていたため、ドイツのよく分からんB級映画なのかな…とあまり期待せず見ていたのだが想像以上に面白くて良かった。よく分からん映画をパッと見で「よく分からんB級かな」とスルーするのは結構もったいないかもしれない。
No.00047『コマンドー』
1986年上映/マーク・L・レスター監督/製作国:アメリカ
鑑賞日:2021/01/03
・好きなVtuberのおうまゆうちゃんがコマンドーを同時視聴するというので鑑賞。ネットフリックスには無かったのでDVDを借りた。同時視聴では吹き替えを見るとのことだったが、DVDには字幕版しかなかった…。でも字幕版でも充分楽しめた。
・見ようと言われるまで気づかなかったのだが、自分はコマンドーもランボーもロッキーも見たことがなかったな。
・本当にあらすじも何も知らなくて「ロケットランチャーとシュワちゃんが出てくる」ということしか知識が無い状態で見たが、本当に面白くてずっと笑っていた。
・初っ端から人が立て続けに死んで、アララ…と思っていたらデカい丸太を片手で担ぐシュワちゃんが出てきたから本当に笑った。こんなパワー系の映画だったとは思わなかった。
・車のシートも引っ剥がすし飛行機のドアの何かしらも平気でブチ破るし、重機でダイナミック入店して拳でガラスも割る。片手でロケットランチャーも撃ちまくるし最後には上半身裸で銃撃戦に立ち向かう。「筋肉が全て」といった感じが最高に面白くて、ずっと笑った。途中でたまたま居合わせた一般人女性も無理矢理協力させ(ほぼ誘拐)、うまいこと情を寄せて仲間にしちゃうのも良かった。
・主人公であるはずのシュワちゃんのセリフがかなり少なくて、とにかくフィジカルで物語を進めていっちゃう感じがすごいなと思った。シュワちゃんだから出来たというか、シュワちゃんのために作られた映画のような。
・シュワちゃんがとにかくずっと馬鹿力でバッタバッタと大暴れするけど、その理由が一貫して「娘の救出」だけなのも分かりやすくて、潔さがあって良かった。全然頭も使わないでいい。ただ見てるだけで面白い。
・有名なセリフ「説明書を読んだのよ!」もこの映画が元ネタだったんだ!と知った。というか、有名なセリフがたくさんあって驚いた。全部コレだったんだ。
・この作品が名作と言われている理由も分かったし、逆になんで今まで見てなかったんだろうと思った。面白い。最高の正月映画。玄田哲章版の吹き替えでも見たいなぁ。
No.00048『帰ってきたヒトラー』
2016年上映/デヴィット・ヴェント監督/製作国:ドイツ
鑑賞日:2021/01/19
・半年ほど前にTwitterでこの映画の話題を見かけて「前半面白いけど後半どんどん怖くなっていくすごい映画」と言われていたのが気になっていた。見たいと思っていたのにネットフリックスにはなく(というより消された模様)見るのが先延ばしになっていたのだが、今日重い腰を上げて鑑賞。
・いや…怖いやん!!誰!?この映画のことコメディって言ったの!!
・ストーリーとしては、1945年に地下壕で自殺したはずのヒトラーが2014年のドイツの空き地で目を覚ます。その様子を偶然撮影していた元テレビ局社員ザヴァツキが目をつけ、復職のためにヒトラーとドイツ中を旅することになる。ヒトラーは旅の行く先々で色んな人に現在社会の不満や本音を聞き、どんどん現代に適応していくと共にインターネットを介して「バズって」いく。そしてついにテレビ出演することになり、生放送で民衆の度肝を抜くような演説をして次々に心を掴んでいくが…という話。
・何だろう、ずっと怖かったな。歴史は苦手科目だったしヒトラーのこともほとんど知らないんだけど、ずっと怖かった。確かに、現代に飛んできてすぐの頃の、変なヤツだと思われて写真撮られるところや不審者と思われて催涙スプレーかけられるところ、今が2014年だと分かって気絶するところ等、ヒトラーが滑稽なシーンは確かに面白いと言えば面白いんだけど。
・始まってすぐにピンときたけど、この映画は暢気に見れるタイプのコメディではなく、風刺的ないわゆるブラックコメディで、その上で題材がヒトラーなモンだから、おそらく怖いんだと思う。
・個人的に怖かったポイントとして、ヒトラーの「受け入れの早さ」がある。今が2014年であることに加えて自分がいろんな映画で語られてきたこと、今の政治や情勢、自分がどう思われているか等、情報を受け入れる早さが不気味で怖かった。もちろんフィクションなので本物のヒトラーがここまで受け入れが早いかどうかは知らないが「そうかもしれない」と思わせるリアリティがあった。
・ヒトラーが演説の才能で人々を煽動して総統とまで呼ばれたことは無知な自分でも流石に知っていたけど、だからこそそんな人は笑われたり否定的なことを言われたりすることに対して怒ると思っていた。なのに、この映画では自分がモノマネ芸人と思われていることに適応して、むしろその立場を自ら利用する。作中でも「話を聞いてもらえるなら喜んで道化になる」というようなセリフもあった。当時のヒトラーのことを知らないけど、もしかしたらそんな風に当時も「バズった」のかな、と思わせる迫力があった。
・途中で犬が痛い目に遭うシーンがあるので、動物が酷い目に遭う映画が苦手な人は気を付けた方が良い。このシーンも怖かったな。それが後々伏線になるのもすごいと思った。あのシーンは、ハッとさせられるというか、どれだけバズって受け入れられようが、ヒトラーはヒトラーなんだと思わされる。銃撃つまでが速すぎるんよ。怖いなあ。
・唯一心からクスっと笑えたのは、テレビ局長ゼンゼンブリンクによる『ヒトラー最後の十二日間』のオマージュシーン。日本でも(特にニコニコ動画とかで)愛されているあのシーンが急に始まったから面白かった。やっぱりコメディならそこイジらないと始まらないよね。
・途中、特に街中で人がたくさん映るシーンなどではカメラの感じが急にドキュメンタリーっぽくなったり人の顔にモザイクがかかったりするのが不思議だな、と思っていた。鑑賞後知ったがそれらのシーンはマジの市民だったらしい。なるほどな、と思ったし、だとしたら最後の終わる直前のシーンが余計に怖く感じる。役者とはいえ、みんながヒトラーに手を振るの、フィクションじゃないんだ。
No.00049『ミッドサマー』
2020年上映/アリ・アスター監督/製作国:アメリカ
鑑賞日:2021/01/22
・観たかったけどちょうど流行病が問題視され始めた頃だったため、結局映画館で観ることは出来なかった。ネットフリックスにもなかなか来ないし、近所のTSUTAYAでも大人気らしく全然借りられず…。この度ようやく一枚だけ返却されたのをタッチの差で借りることができた。
・ミッドサマーが日本で公開されたとき、Twitterにかじりついていろんな人の感想を読みまくっていたのだが、その中で一番印象的だったのが「ミッドサマーはアセクシュアルに向かない。存在しない者とされた気がして疎外感があった」というもの。それが今になってもずっと心に残っていて、今回本編を観るにあたってその感想のことも頭の片隅に置きつつ鑑賞した。
・始まりからしんどくて笑った。というか、この主人公がしんどいなぁ。メンタルが下降気味になるとものすごいヘの字口になるのが見ててキツかった。彼氏のクリスチャンもダルそうにしてて。嫌~なカップル。
・散々言われていることではあるけれど、やっぱり映像がすごい。最初こそ普通の色彩だけど、ホルガに来てからずっとインスタみたいな淡くて綺麗な色彩が続くから、胃がムカムカして精神がやられそうになる。
・でも、この作品はホラーではないというか、肝心の怖いシーンというのはほとんどないように思えた。オバケの類はもちろん出ないし、びっくりシーンといえる場面もほとんどない。グロいシーンはもちろんあるけれど、インスタのようなパステルカラーの中でグロがあるから際立つだけで、それ単体だとそこまで強烈なものでもないなと思った。ちょっと顔が潰れるくらい。
・怖いというより気持ち悪いの方が大きい作品。土着の、その土地で限定されている狭いコミュニティや信仰によくある気持ち悪さを煮詰めた感じ。やってることも何もかも異様なのに、その土地ではそれが当たり前のことだというズレが気持ち悪い感じ。
・スウェーデン料理というものをそもそも全く知らないのだが、出てくる料理がどれもこれもマズそうなのも良かった。インスタのフィルターがかかっているような色彩なのに全くおいしそうに見えない。映画の雰囲気が余計そう見せてるとも言えるけれど。
・ミッドサマーといえば終盤のクリスチャンと村娘の生殖行為シーン(性行為やセックスよりも生殖行為と言う方が近いと思う)で、おそらく「アセクシュアルに向かない」というのもこのシーンに込められた言葉なんじゃないかと思う。確かにすごいシーンだった。男も女も性器丸見えだし。本当に本番行為をしているんじゃないかと思うくらい直接的なのに、全くエロくないのがすごいと思った。周りに応援隊みたいな人たちが囲んでいるからというのももちろん、村娘が明らかに恋愛感情でクリスチャンを見初めたわけじゃないのがアリアリと伝わったからかな。途中でクリスチャンの腰押して手伝い始めるお婆ちゃんに笑った。
・観終わったあと、「アセクシュアルに向かない」という言葉について改めて考えてみたのだが、ハッキリ言って分からなかった。
・アセクシュアルというのは、細かく言うと違うかもしれないがザックリいうと「性交渉をしたいと思わない。また、誰かに対して恋愛感情を抱かない」セクシュアリティのこと。だからこそ、ホルガという閉鎖的なコミュニティの血の濃さや直接的な性描写、性器が丸見えなところ等に嫌悪感を抱いたのかな、と思う。ただ、「アセクシュアルを存在しない者にしている」とは違うような気がする。ホルガにおいて、アセクシュアルは確かに存在しないかもしれないが、正しく言うと「セクシュアルマイノリティ自体存在していない」のではないか。
・何度も言うがホルガという土地は閉鎖的だ。非常に狭く、限定されたコミュニティだ。閉鎖的な土地と血縁の中で、古代から続く伝統を続けてきた。近親相姦や年長者の自殺等、現代社会では到底受け入れられないような伝統の数々を当たり前のように。そんな土地において、セクシュアルマイノリティが自身を主張する事なんて、ハッキリ言って無理だと思う。セクシュアルマイノリティという概念を受け入れるどころか「視野に入れる」ということすら、システムとして存在しないと思う。もっと言ったら「セクシュアリティ」という考え方そのものすら無いかも。
・もし「アセクシュアルに向かない」という言葉の意味が生殖行為シーンに向けられたもので、その行為の描写自体に対する嫌悪感から来ているものであれば、多分セクシュアルマイノリティじゃない人でも嫌悪感を抱いた人は一定数居たと思う。アダルトビデオ顔負けの濃さだったので。
・でももしかしたらもっと違うところに向けた言葉なのかもしれない。主人公がダニーとクリスチャンというだいぶしんどいカップルであるところに向けた言葉なのかもしれないし、映画全体に対して向けた言葉なのかもしれない。どんな感想も間違いではない。
・ミッドサマー面白かったなぁ。SCP-511-JP『けりよ』を読んだときにも思ったが、けりよやミッドサマーのような「気持ち悪い土着系信仰ホラー」のジャンルが結構好きかもしれない。Twitterでフォロワーが「何を見せられているんだという気持ちになる映画」と言っていたが、自分はそうは思わなかったな。「この閉鎖的なキモさ、良いぞ!」とただただ面白かった。アリアスター監督の作品は今回が初めてだったのでもっと見たい。ヘレディタリーとか。あと、ミッドサマーに少し似た昔の作品として『ウィッカーマン』という映画があるらしく、それも土着系っぽいのでまた観たい。もっとキショい土着系信仰ホラーをたくさん観たいです。
No.00050『シカゴ7裁判』
2020年上映/アーロン・ソーキン監督/製作国:アメリカ、イギリス、インド
鑑賞日:2020/01/23
・ネットフリックスオリジナルの映画を初めて観た。やっと。フィルマークスか何かで見かけてからずっと気になっていた作品。実話をもとにしているとのことだったが、知識もバックストーリーも何も知らない状態で見た。
・実話を元に作られた、政治や司法に関する社会的な映画ということで、かなり頭を使うのでは?理解できるかな…と少し不安だったが、めちゃくちゃ良かった。本当にアツくて良い映画だった。とにかく泣いた。予告編とあらすじだけは事前に少し見ていたけど、まさかこんなに泣く映画だとは思わなかった。
・1968年、シカゴで開かれた民主党全国大会の会場近くで、ベトナム戦争に反対する若者たちが集まって集会やデモが行われていた。やがて、会場近くの公園でデモと警察が衝突。数多くの負傷者が出る暴力的な事件に発展してしまった。その後、デモに参加していた各グループのリーダー的存在だった「シカゴ・セブン」と呼ばれる7人が「暴力を煽動した」として共謀罪などの罪に問われて法廷に立つことになる。…という話。
・シカゴセブンの中には、ブラックパンサー党という黒人グループの代表者ボビーシールという人もいる。60年代というと今よりもっと黒人差別が酷い時代だというのは知識のない自分でも分かる。この映画の中でも、このボビーという人が本当に酷い目に合う。それが辛くて悲しくて、とにかくワンワン泣いてしまった。
・弁護士がついていないボビーの「意見を言わせてくれ」「反対尋問をさせてくれ」という言葉をことごとく却下して手足を縛って猿轡をかけさせる判事。このシーンがとにかくキツかった。まるで同じ人間と見てないような扱い方。椅子から立ち上がるだけで法廷侮辱罪と言われる不当性。辛かった。「この対応は黒人差別をしているからです」とハッキリ明言はされていないけど、明らかにそうとしか思えなくて。もしこのシーンが黒人差別だからだという意味じゃなかったとしてもやっぱりキツいものはキツい。1人だけ明らかに権利が奪われ過ぎている。
・とにかくこの判事というのが最悪で、苦虫を嚙み潰したような気持ちがずっと続く。ボビーが立ち上がるだけで法廷侮辱罪、シカゴセブン側の弁護士が少しでも反論したら法廷侮辱罪。ダラダラと裁判を引き延ばしにして、明らかに公平とは程遠い。でも、だからこそ最後にスカッとするというか、そうだそうだ!と思ってまたワンワン泣いた。そうだよ。お前たちがダラダラ裁判してる間にも、ベトナムではたくさんの命が失われているんだよ…。
・エディレッドメインが演じるトムは、最初こそ論理的で冷静な男に見えるけれど、どんどん人としての脆さが見えたのも良かった。特にボビーに「お前たちの親はみんな同じだろ?親世代に反抗しているだけだ」と言われてそれを認めてから。脆さや愚かさ、甘さが見えて。でもだからこそシカゴセブンたちの絆ももっと固くなったし、あの最後があったんだろうなと思う。トム、最後のシーンが一番凛々しくかっこよく見えた。
・それからアビー。アビーはヒッピー系のグループの代表者なんだけど、この人もすごく良かったなぁ。アビーは一見するとトム達に比べて知識が無いように見えるけれど、自分なりに独学でいろんなものを学んできたのかなと思った。トムはアビーのことを下に見ているけど、アビーはずっとトムのことを上に見ていたのかもしれない。最後の方の、証言台に立つシーンがすごかった。アビーのセリフ1つ1つがとても良かった。文字に書き起こしておきたいくらい。
・序盤や途中などで当時の本物の映像なども流れるので余計リアリティを感じられてよかった。でも、掛け合いのテンポも良くて始まりなんてコメディっぽさすらあったから、法廷がテーマになってるとは思わないくらい取っ付きやすさがあった。
・シカゴ7裁判、見て良かったなと思う。本当に面白かったし、感動した。こんなに面白いとは思わなかった。シカゴ・セブン事件のことを知らなくても楽しめるし、これをきっかけに興味も持った。テーマは少し重いけどストーリーは重過ぎないので、人にも勧めやすいな。
今回は以上です。シカゴ7裁判、みんな観て~!