追憶ノ詩
もう 思い出せない
苦しみも悲しみも
怒りや喜びも
私の中にあった その記憶は
ずっと遠くへ
ずっと昔に
おいてきたように
いくら考えても
何故か 感じることができない
その記憶の温もり
全ては水に浸かって
そのまま溶けてしまったように
掬い上げても
手に残るのは 透明なその水でしかない
溶けて弾けた 微粒子は
もう私には見えない
水を口に入れ
体に巡らせた その微粒子は
細胞分裂を繰り返しながら
その度に 私の心に触れ
不意に涙を流させる
そして ぬぐい切れるその涙に
ようやく 私は
記憶をだどることができた