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サイバーパンク:エッジランナーズを観て、己を研ぎ澄ませ

サイバーパンク2077を知っているだろうか。

テーブルトークRPGをもとにしたGAMEであり、キアヌが出、ものすごい密度の未来都市を名もなき傭兵として成り上がる…もちろん私も発売初日からプレイし、度重なるバグやエラー(その後たゆまぬ努力によって改善されたが)にも負けず全エンディングをみるため周回プレーをしたことは言うまでもない。

そんなサイバーパンク2077のアニメイシヨンがnetflixで出る出るといわれて数年がたち、出たので、観た感想を述べる。


カネ、カネ、カネ

舞台となるのはナイトシティ…暗黒メガ企業群が支配し、政府や秩序とかは形だけで存在しないので、その辺で日常的にめちゃくちゃ人が死んだりする街だ。
また身体機能を拡張するデバイスやインプラントが広く一般に普及しているので、そういうのをたくさん体に入れた奴が実際強く、メイクマネーしている。
そう、この世界では「カネ」をもってるやつが何もかもを手に入れることができるのである。権力も、立場も、高級インプラントも……

主人公のデイビッドもご多分に漏れず母子家庭の貧困層で、明日の家賃もヤバいのであるが、将来的にメイクマネーすべく親は無理してエリートスクールに通わせている。もちろん下町育ちのデイビットは金持ちボンボンばかりの環境にはなじめず、いじめられたりしているが、「エリートコースにのってメイクマネーしてほしい」という親の期待もあるのでしょうがない…というやつだ。

だがデイビッドを襲った不慮の事故が、わずか数分でこの街のキビシさをめちゃくちゃに叩きつけてくる。金がなければ助かる命も助からないし、健康保険とかそういうのもないのでめちゃくちゃ金をとられ、親が死んだりしても別に助けとかはない………カネ、カネ、カネである。デイビッドは覚悟をきめる。親が自分の学費のため隠れて取引してた裏のインプラントを自分にぶち込み、己の力で成り上がってやる。ハイスクールのガキがパンク野郎として歩き始める……そういうことが一話で過不足なく描かれて、すごい引きこまれる。

アクションとか作りこみがすごい

もともと街を舞台にしたゲームなのだが、ロケーションが忠実ですごい。めちゃくちゃ既視感があるので実家の近くで芸能人がロケとかしている感覚になる。またゲーム内と同じ効果音、UIが使われていたりとか、ちょい役で登場人物が出たりとかそういうファンに対する細かい目くばせもうれしい。

ゲーム本編は一人称視点のアクションなのだが、animationの絵で引いてみたときにケレン味があるよう画面も作りこまれていると感じた。特に高速移動の描写はちょっとこれは使いすぎるとあまり体によくないな感が出てるとことかよく、TRIGGERっぽいちょっと面白い挙動でふっとぶ車とかも結構暗いテーマの作品にスパイスをあたえている。

エッジの向こう側

この作品を通して描かれるテーマの一つに、拡張とそれにともなう消失——がある。デイビッドも最初はジャリボーイであるが、ひょんなことから出会ったパンク野郎の仲間たちとつるみ、その濃すぎるメンツから仕事のやり方、街での生き方、人の殺し方…などを学び、一人前のパンク野郎へと成長していく。そして、ひとりの女を愛するようになっていく—————

どいつもこいつもキャラが濃く、めちゃくちゃイカしている。一話で大好きになる。

これは数多の作品でかかれている普遍的なテーマであるが、何もないところから仲間やカネを得てしまったら、それを失うことを最も恐れるのが人間である。
失わないために、もっと強く…デカく…体を拡張する…そうすると失われていくのが人間性である。劇中でも幾度となく出てくる「サイバーサイコ」になっていく。サイバーサイコとは身体拡張の果てに精神を病み、狂って誰彼構わず殺したりする病気であり、なおらないしみんな悲しい。

それでもサイバーパンク野郎共は拡張をやめない。ギリギリを、エッジ(限界)を攻める……そうしなければこの街では生きていけないから……。その向こうに破滅が待っているとしても……その精神性そのものが「サイバーパンク」なのだ。

夢の器

デイビッドはそもそも、愛するママの「いい企業で働いて、貧困を抜け出してほしい」という願いのために生きてきた。そしてその夢が潰えた後は、惚れた女の夢———「このクソッタレの街を出ていきたい」という願いを叶えるため、犯罪仕事を頑張ることになる。
だが女は言う、「それって誰かの夢でしょう。あなた自身はどうしたいの?」
俺はどうしたいんだろう。仲間、いい暮らし、カネ…女…すべては手に入った。なんのためにとかはわからないけど、頑張らなくちゃって気持ちはある。
そんな思いをぼんやりと考えながら成り上がっていくのだが、終盤、デイビッドが出した答えは、「お前の夢をかなえる、それが俺の夢だ」ということだ。

誰もかれもが夢にときめいて生きてるわけじゃない。なんの為に生きているのだろう……仕事でつかれて帰るとそこには家族がいる。帰りを待っている。「ただ生きていてくれさえすれば、それでいいの…」そうだろう。だけどお前の夢はここから飛び立つことじゃあないか、俺が叶える。俺に中身を与えてくれたのはお前なんだ。だから、俺には夢なんてないが、お前の夢を守ることはできる。

そういうボーイ・ミーツ・ガールな青春の刹那的輝きと、誰しもが抱える葛藤がスパークし、ナイトシティという無限の虚構にイッパツ食らわせる。

高みを目指して派手にくたばれ

全10話の中で、サイバーパンク2077をプレイした時のあの言いようのない興奮と切なさ、そして希望を思い出すことができた。街に生きる人々の営みや人生、やりきれなさ、そういうものが詰まった作品だった。

エッジランナーズはゲームのエッセンスを濃縮し、完全に踏襲しており、これを観たなら直ぐに、プレイしてみることをお勧めする。
ナイトシティで伝説になるには、どう生きたかではなくどう死ぬかだ—————お前もいますぐ、高みを目指して派手にくたばれ


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