motoharareico

陶芸家/美術家。1963年富士市生まれ。Royal College of Art MA Ceramics修了(ロンドン)。「うっちーの英語食堂」(2016~17)に出演。2018年「登呂で、わたしは考えた。」出版。https://www.motoharareico.net

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陶芸家/美術家。1963年富士市生まれ。Royal College of Art MA Ceramics修了(ロンドン)。「うっちーの英語食堂」(2016~17)に出演。2018年「登呂で、わたしは考えた。」出版。https://www.motoharareico.net

マガジン

  • わたしの口に刺身が届くまで

  • 話を集めてまちをひらく

    ずっと、やりたかったプロジェクトが始まりました。 いろんなお宅へうかがって、そのウチの定番料理をを一緒に作ったり食べたりしながらの会話を本にしたい。 港まちづくり協議会(名古屋)の古橋敬一さんと児玉美香さんに話したことをきっかけに、港まちに住む人たちの台所へおじゃましていきます。

最近の記事

お茶を点てて、空っぽ

千春さんは、耳が聴こえない。だけど、私は千春さんといっぱい話す。 4年前に、私はすべり症になって歩けなくなり、あらゆる治療をしていた。そんな時、千春さんから「私、助けられるかも。」とメッセージが来た。信じる信じないがあるかもしれないけれど、千春さんに手を当ててもらうと涙が出た。 30歳を過ぎてから聴力を失った千春さんは普通に話せる。声を出して、話すことができる。私は手話ができないので、大きな字で紙に書いて話す、筆談ね。 いっぱい笑うし、悩み事も聞いてもらう。 千春さんの家に

    • 少々って、どれだけ??

      昨年度の学生作品を1つ紹介します。 有馬郁奈さんの今まで食べたものでいちばん美味しかったのは、お母さんがお父さんの誕生日に作るチーズケーキ。自分の誕生日はケーキ屋さんのなのに、お父さんにはお母さんの手作り。 (うらやましさもあるのかな?)そのチーズケーキを作るべく、お母さんにそのレシピを聞くと、「バニラエッセンス/レモン汁 少々」と書いてある。少々って、どれだけ?と思いながら、郁奈さんは自分なりの少々で作ってみたら、レモンが足りない気がした。お母さんが作るのを見せてもらうと

      • 「Kitchen Stories」が完成しました。

        昨年度(2021)7月から名古屋市の港まちづくり協議会にお招きいただき、港まちに住む8人のお宅へ伺い、そのウチの定番料理を教わって一緒につくったり、食べたりしながら話したことを記録した「Kitchen Stories」ができました。 . 希望される方に(おひとり1冊)お贈りいたします。 下記フォームからお申込みください。 https://www.minnatomachi.jp/event/tsukuru/617 内容は、3部構成。 ①台所でおしゃべり 名古屋の港まちで本原が

        • ねこじゃらしと、風。

          港まちに住むひとたちの台所におじゃまして定番料理をおしえてもらうプロジェクトだが、今回はきっさ姉妹さんで人気メニューの作り方をおしえてもらう。 毎回、そのお宅へ向かう途中に草花をみつけて、ブーツの形をした白くて小さな陶器の花入れ「リトル・ブーツ」に活ける。この日はポットラックビルのプランターから1つ、先がピンクの葉っぱを摘んだ。きっさ姉妹に着くと、小柄で品のよい藤井ひろこさん(81)が出迎えてくれた。50年に渡り、喫茶店を切り盛りしながら58歳からホスピスでボランティアを始

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        • わたしの口に刺身が届くまで
          7本
        • 話を集めてまちをひらく
          7本

        記事

          生きている、わたし

          今年はじめて、彼岸花を見た。去年の今頃は入院していた父が家に戻り、在宅介護が始まってあまり記憶がない。ただ、何があっても季節をまちがえずに、ニョキッと首を出して咲く彼岸花に「アンタってえらいね。」と思ったことは覚えてる。 夫の仕事で、ドイツに行った卒業生からの葉書にはいつも植物や花のことが書かれていた。異国で言葉が通じない中、彼女はそこに在る自然と親しむことでその国に根付いて行った。新参者の生物としてそこにある自然のリズムに馴染んでいったのだろう。 先日、急に思い出したこ

          生きている、わたし

          あれもこれも、食べる。

          港まちづくり協議会では、大きな道路添いの花壇で街の人たちとハーブガーデンを作っている。7月、市橋さん宅へ伺うときは通り道のガーデンでローズマリーを摘んで、定番料理を教わりながら、追加メニューとしてじゃがいものにんにくローズマリーソテーを作った。 次の石田さんちへは、アップルミントと、チェリーセージを摘んで行った。古橋くんが持ってきた桃にヨーグルトとミントをのせて美味しいデザートになった。ビニちゃんちでは、ミントでノンアルコールモヒートを作った。 ビニちゃんちへ行きすがら、

          あれもこれも、食べる。

          リトル・ブーツ

          今回のプロジェクトで、静かに一役買っているのが、「リトル・ブーツ」。小さなセラミックのブーツです。 いろんなお宅へうかがって、そのウチの定番料理をを一緒に作って食べながら、会話を記録するプロジェクトを進める中、コーディネーターの古橋くんが「本原さん、最近また焼き始めてるんでしょう?なにか陶器のものを持っていきませんか?」と言った。「そしたら。その行きすがら、またはそこんちのお庭で見つけた植物を小さなブーツに活けて食卓に置きたい。」と伝えた。 プロジェクトが始まる前の6月の

          リトル・ブーツ

          ひとの話を聞いたら、世界とつながった

          港まちに住む人の台所で、そこんちの定番料理を教わりながら一緒に食べて、会話を記録するプロジェクトの経過報告です。 〜ひとの話を聞いて何になる!?〜というサブタイトルで始まりました。これまでに5人のキッチンへ伺いましたが、いくつかをご紹介。 7月最初に訪問した市橋さんは、37歳で離婚後に看護師の免許をとり、ケアマネさんを経験したあと退職、両親を見送った。古民家暮らしに憧れて、終の住処を探して岐阜の方まで足を伸ばした。でも古民家にひとりで一泊した時、闇と静かすぎる夜がこわかった

          ひとの話を聞いたら、世界とつながった

          うちの定番料理をおしえてください。

          ずっとやりたかったプロジェクトが始まりました。 毎日、地球上で20億人ぐらいごはんを作ってる。 いろんなお宅へうかがって、そのウチの定番料理を一緒に作ったり食べたりしながらの会話を本にしたい。 と、港まちづくり協議会(名古屋)の古橋敬一さんと児玉美香さんに話した。(場所:喫茶姉妹) 「港まちランデブー」 本原さんからは、「わー、おもしろい」と言う言葉がたくさん聞こえてくる。 え?ナニナニ?目を向けると、そこには存在さえも意識していなかった扉があけひらかれていて、忘れられたあ

          うちの定番料理をおしえてください。

          オレは、このステーキ肉を買う。

          ずいぶんと前回の投稿から間が空いてしまったので、閑話休題。この授業をやってきた中で面白かった作品を紹介して、始めるきっかけを作ります。(授業の進め方はこちらを参照。) 2019年の学生・浅利瑠輝也くんは大学の近くで一人暮らしをしていた。必要のない情報かもしれないけれど、彼が母子家庭で育ったこと、母さんにとても感謝していて、早くラクをさせたいと言ったのを何度か耳にした。 瑠輝也くんが今まで生きてきた中で一番美味しかった食べ物は、ステーキだった。この時はグループで調理をして、

          オレは、このステーキ肉を買う。

          食べることから、見つけたこと。

          「今まで生きてきた中で一番おいしかったもの」をそれぞれのキッチンで、料理して、どんなことが気になったか?学生ひとりひとりに聞いてみると、 「夕飯がすごく楽しみで、いつもおいしい!おいしい!って母に言ってたんですけど、私が作ったものを母がおいしい!と言ってくれて、すごく嬉しかった。初めて食べさせることの喜びを知ったんです。」とか、 「豚汁を作るのに、めちゃくちゃ時間がかかったんですけど。スーパーで里芋が3種類あって、どれが豚汁に向いてるのかわからないのが一番困った。」 「

          食べることから、見つけたこと。

          わたしの口に刺身が届くまで

          2006年の暮れ、祖母が自分で咀嚼ができなくなって、点滴になって3日で逝ってしまったことをきっかけに、「わたしの口に刺身が届くまで」と言う授業をやっています。 【授業の進め方】①5人1グループで「私の口に刺身が届くまで」を模造紙(1091mm×788mm)に、図解。 ②各グループごとに、描いた図を発表。 ③一人ずつ、気になったことを調べてみる。 ④気づいたこと、みんなに伝えたいことを表現する。 同じ出発点から、同じ教室の一人ひとりの気になることがこうも違うのか?と言うこと

          わたしの口に刺身が届くまで

          今まで生きてきた中で、いちばん美味しかったものを作った。

          10月29日(木曜日) 15:00〜18:00 学生22人が自宅のキッチンで「今まで生きてきた中でいちばん美味しかったもの」を作る材料を用意して、zoomで参加。 自分で作ってみたら何かわかるかもしれないと、昨年から学生さんたちと調理を始めた。いつも家族が使う台所には、塩、醤油、酒、味噌といった基本的な調味料があり、冷蔵庫にはジャガイモやタマネギ、にんじんと常備食材も揃っている。学食の隅にある簡易キッチンへ食材を持ち込んだ去年とは、大違い。去年は、3〜4人1組で作って食べた

          今まで生きてきた中で、いちばん美味しかったものを作った。

          食べるって、なに?

          2020年10月22日(木) 13:15〜16:30 場所:常葉大学本館 5階501号室 10月8日から2週間、学生さんに自分の口へ入れたものを記録するよう、お願いした。 前回と同じグループで、それぞれが食べたものを見せ合った。友達の食べたものを見て「おしゃれなメニューが多い。」とか、「朝ごはん、食べないんだね」などと話している。iPhoneのメモ機能に記録した人が多かった。親が作ったものや居酒屋で出てきた食事にどんな材料や調味料が使われてるか?にはあまり関心がないようで、

          食べるって、なに?

          2020年版「わたしの口に刺身が届くまで」

          2006年の暮れ、祖母が自分の口で咀嚼ができなくなり、点滴になったとたん3日で逝ってしまったことをきっかけに、専門学校と大学で「わたしの口に刺身が届くまで」と言う授業をやってきました。 14年目になります。私自身もたくさんの気づきがあって、一度まとめることにしました。 コロナ禍で、人との接触を少なく、家で過ごす時間が増えた。それでも食べるものはいつだって必要で、テイクアウトやuber eats、amazonを使って家まで届けてもらうと、移動にエネルギーも使うし、プラスチック

          2020年版「わたしの口に刺身が届くまで」