#84輝きは消えない
人間とは貢献することに悦びを感じる生き物だ。我々は非力であるが故に協力し合い、分業を駆使することで生態系のトップまで登り詰めた。この生存戦略は遺伝子レベルのものであり、我々が意識的に感じられるものではない。しかしながら、事実として人間は他者に貢献することで幸福を感じるように造られている。これは人間の機構であり、原理原則なのだ。
偉大な心理学者アドラーによれば、人間の幸福とは貢献感である。また、名著である『人を動かす』の著者Dカーネギーは人間の最も強い欲求は社会における自己の重要感だと述べている。これも表現の方法を変えれば、社会にどれだけ自分が貢献しているかということである。
これらを踏まえると、人間にとって貢献することこそ至高の悦びであり、最も強い欲求であるという仮説が信憑性を帯びてくる。ここで生じる問題としては、どうすれば効果的に貢献感を得ることができるのかということだ。
まず私の仮説はこうだ。貢献するためには、自分の価値を感じることが前提として不可欠である。自分の価値を感じることができて、初めて他者に貢献できるのだ。
これはつまり金がなければ、家族に裕福な暮らしをさせることはできないということだ。同様に、自分に価値がないと感じているのに、他者に一体どう貢献することが出来るのだろう。まずは自分の価値を感じることが大前提なのだ。
一つの救いは金と違って自分の価値とは主観的な思い込みであることだ。金を増やすにはギャンブルで大きく賭けるか、真面目に働いて出世しなければいけない。一方で、自分の価値は自己の在り方を変えてやるだけで増幅することができる。
最も自分の価値を増幅させるのに適した方法は、自分に誠実であることだ。誠実とは自分の価値観に従うことである。七つの習慣では自立における最も基礎として、主体的であることを強調している。感情や衝動に左右されず、自分に誠実な生き方をすることがどれほど効果的か説明しよう。
身体的に健康であるためには、食事管理や適度な運動が不可欠だ。当然、それには自制心を働かせて、ジョギングや散歩をし、ジャンクフードを我慢しなければならない。感情や衝動に流されず、自己の価値観に誠実であることは、自らを理想に近づかせる。
自分に価値を感じる鍵は、このように誠実であることから生まれる自己効力感である。自己効力感が育まれることで、精神のレベルは依存から自立へとステージを進める。この段階まで来れば、私には他者に貢献する効力・能力があると実感できる。ここにきて初めて他者に恵んでやれるだけの金を手にすることができる。
人間は貢献することを望んでいる。しかしながら、その貢献の手段は自分で決めなければいけはい。一つ助言をするなら、自分が貢献していると思い込むことが重要ということだ。
街中に佇む物乞いに金をやることは、人によって善行かもしれない。しかし、それは彼らにとって悪き考えを生むかもしれない。彼らを物乞いという不安定な収入に縋らせ、働く勇気を挫いてしまう危険性がある。いっそのこと、干渉しない方が彼らの為とも考えられる。
このように貢献感とは極めて主観的で自由だ。それ故、一見簡単なことのようだ。しかしながら、最も難しいのは自分は貢献することができるという心理的前提をクリアすることだ。そもそも自分の価値を感じることができなければ、どんなに小さな貢献もすることができない。
それは人間の最も強い欲求を満たすことができないということである。悦びに満ちた人生を送りたければ以下を忘れないで欲しい。
・人生における最も大きな悦びは貢献である。
・貢献するための大前提は自分の価値を感じることである。
・自分の価値を感じるには誠実であることが最も効果的である。
・貢献とは主観的な思い込みだ。最も大切なのは自分が貢献していると感じられることである。