パートナーセールスチームのあるべき組織体制①
皆さんこんにちは。
パートナーセールスの葛西です。
先々週・先週と「拡販してくれるパートナーの営業担当の見つけ方」について、前編・後編と分けてnoteを書かせていただきました。
今回はパートナービジネスを開始するにあたっての組織体制の種類、組織体制の最適解について、前編と後編に分けて書かせていただこうと思います。
パートナーセールスの組織体制について書く前に
大前提、パートナービジネスにおいて日本で成功している企業がまだまだ少なく、そのためパートナービジネスにおける正攻法・教科書的なものがまだ日本にはありません。そのため、今回のnoteでは私がパートナービジネスを展開しているさまざまなSaaS企業様との情報交換を通じ、ヒアリングさせていただいた組織体制の中で多かった組織体制はどんな組織体制であったか、加えてさまざまなお話を伺った中での私なりのパートナーセールス組織の最適解について書かせていただこうと考えています。ですので、あくまでこれまでの情報を通じての私見であり、これが必ずしも正解の組織体制というわけではありません。あくまで1つの考えとして読んでいただければと考えています。
まず前編では、複数プロダクトをパートナー展開している場合、その中でも特に組織が事業部制の組織体制を引いている場合に、パートナーセールス組織はプロダクト(事業部)ごとの縦串の組織体制にするべきか、それともプロダクト横断(事業部横断)の横串の組織体制にするべきかについて書かせていただきます。
複数プロダクトをパートナー展開している場合のパートナーセールス組織の体制
複数のプロダクトを持っている企業の場合、事業部制の組織体制である企業が多いのではないかと思います。複数プロダクトを持ち複数プロダクトをパートナー展開している場合、パートナーセールス組織はプロダクト(事業部)ごとの縦串の組織体制にするべきか、それともプロダクト横断(事業部横断)の横串の組織体制にするべきか悩まれる企業も多いのではないでしょうか…?
プロダクト(事業部)ごとの縦串の組織体制、プロダクト横断(事業部横断)の横串の組織体制それぞれのメリット・デメリットについて、まずはまとめさせていただきます。
プロダクトごと(事業部ごと)の縦串の体制
複数プロダクトの事業部制組織で、各事業部(各プロダクト)ごとにパートナーセールス組織を設けている体制です。この縦串での組織体制においては下記のようなメリット・デメリットが挙げられます。
<メリット>
・事業部ごとでの業績・コスト管理をしているため、これまで通りの管理会計方法で進められる
・1プロダクトのみのインストールで済むため、新たなパートナーセールスが入った際のインストールが楽(パートナーセールスのイネーブルメント難易度が下がる)
・パートナービジネスを活性化させるための新たな施策の実行や新たなサービスの導入の際の決裁が楽(金額によるとは思いますが、事業部長決裁で済む)
<デメリット>
・経営資源の重複投資のリスクが出てくる
→わかりやすいところだと、重点支援パートナーが被り、同じ会社の人間がプロダクトごとに何名も張り付いてしまう(パートナー側からすると窓口が複数あるのはやりづらい)
・重点支援するパートナーが被ることがある
→エンド企業の提案先が被る場合は、高い確率で重点支援するパートナーが被ることが多いです。
例)同じ人事に向けた商材で、提案先のCP(カウンターパート)が被る
・パートナー側(特にパートナー側の営業担当)からすると、窓口が複数に分かれることで混乱する・煩わしい
・プロダクト(事業部)間でのパートナーセールスの知見・ノウハウの共有やパートナーから得られた情報の共有・連携が不足しがちになる
→こまめなプロダクト(事業部)間での共有・連携をする必要があり、余計な連携コストがかかる。
プロダクト(事業部)横断の横串の体制
複数プロダクトの事業部制組織で、事業部(プロダクト)横断でのパートナーセールス組織を設けている体制です。この横串での組織体制においては下記のようなメリット・デメリットが挙げられます。
<メリット>
・経営資源の重複投資がなくなる
・パートナー側(特にパートナー側の営業担当)からすると、SaaSベンダー側の窓口が1,2名で固定化されるので、わかりやすい・相談がしやすい
・同じ事業部となるため、パートナーセールスの知見・ノウハウの蓄積やパートナーから得られた情報の共有・連携がしやすい
<デメリット>
・事業部制組織の場合、管理会計を導入している企業が多いため、これまで通りの事業部ごとのシンプルな管理会計が適用できなくなる
→業績管理部門(会計部門やコスト管理部門など)との調整が必須となる。
・複数プロダクトのインストールが必要となるため、新たなパートナーセールスが入った際の育成コストがかかる(パートナーセールスのイネーブルメント難易度が上がる)
・パートナービジネスを活性化させるための新たな施策の実行や新たなサービスの導入の際、検討事項の増加や決裁獲得の難易度が上がる傾向がある
→複数プロダクト(事業部)を跨ぐが故に、単一プロダクトの単位での検討ではなく複数プロダクトを加味した検討となって複雑性が増したり、パートナーセールス部門の部長決裁ではなくさらにその上位役職者の決裁(役員や社長決裁、面倒なパターンだと各プロダクト・事業部の部長決裁)が必要になったりすることがある。
縦串か、横串か。どちらの組織体制の方がベターか?
ここまで、プロダクトごと(事業部ごと)の縦串の組織体制とプロダクト(事業部)横断の横串の組織体制のメリット・デメリットについて書かせていただきました。ここからは縦串の組織体制と横串の組織体制のどっちがいいの?という問いに対する私なりの考えを書かせていただきます。
まず結論ですが、「自社がパートナー展開するプロダクトの提案先が誰なのかによる」というのが結論となります。具体的にどういうことかというと、自社プロダクトをエンド企業へ提案する際、提案先のCP(カウンターパート)が被る場合は重点支援するパートナー企業もほぼ被ることが多いため、その場合はプロダクト(事業部)横断の横串の組織体制の方がベターです。
例えばですが、自社が会計システムと経費精算システムを開発する企業だったとしましょう。その場合、どちらのシステムも企業の経理部門への提案となるため、自ずと重点的に抑えるパートナー企業もたいていは被ってきます。そうなると経営資源の重複投資や情報共有のコミュニケーションコストの高さ、窓口が複数に分かれることによるパートナー側からの煩わしさなど縦串の組織体制のデメリットの部分が大きくなってしまうため、このような場合にはプロダクト(事業部)横断の横串の組織体制の方がベターなのです。
逆に、自社プロダクトをエンド企業へ提案する際、提案先のCP(カウンターパート)が被らない場合は、重点支援するパートナー企業が被ることもあまり多くはないため、このような場合にはプロダクトごと(事業部ごと)の縦串の組織体制でも良いかと思います。
組織体制による弊害の実体験
ここからは生々しい組織体制による弊害の実体験を書かせていただきます。
現職では組織が事業部制組織の体制を引いていることもあり、現状はプロダクトごと(事業部ごと)の縦串の組織体制となっています。エンドのCPは基本は同じ方となるため、まさに「重点支援するパートナーが被る(故に各プロダクトでそれぞれ別の担当が付いている)」、「パートナー側から私が担当している商材ではない方の商材に関する質問が来ることも多い(パートナー側が窓口を間違える)」、「プロダクト(事業部)間でのパートナーから得られた情報の共有・連携が不十分(連携はこまめにしているつもりだが、どうしても一定漏れが発生したり無駄なコミュニケーションコストがかかったりする)」など、まさに経営資源の重複投資が起こりまくっています。
加えて、複数事業を持つ事業部制組織で、さらにはそれが上場企業ともなれば、管理部門の柔軟性がほぼないため、既存の管理会計の変更・修正を伴うとなればそれは大事となり、かなりハードな社内調整・交渉が必要になってきます(守りの部門である管理部門は攻めのビジネス部門とは相反するのは当然であり、決して管理部門を批判しているわけではないということはご理解ください)。
また、最初から各事業部ごとで独自にパートナービジネスを展開した結果、パートナービジネスの方針が同じ企業なのに各事業部で全く異なったり、パートナーへのルールメイクが全く異なってしまっているため、後から縦串→横串への組織変更を実行するハードルが非常に高くなってしまっています。加えて、各事業部ごとで方針やルールが違ったりすることで、パートナー様側が混乱します(パートナー様に向けては「わかりやすさ」はとっても大事!)。
ですので、これからパートナービジネスを開始されて、複数プロダクトをパートナーへ展開する予定の企業様は、この大きな失敗事例に倣い、下記を教訓としておいていただくと良いのではないかと思います。
エンドの提案先CPが被らないかの確認は必須=重点支援パートナーが被る可能性が高いため
エンドの提案先CPが被る場合は最初からプロダクト(事業部)横断の横串の組織体制でパートナーセールス組織を立ち上げるべし
管理会計の変更・修正がほぼ確実に伴うが、めんどくさがらずに初期の立ち上げフェーズの段階からしっかりと管理部門と社内調整しておくべき
どうしてもプロダクト(事業部)ごとの縦串でスタートせざるを得ない場合は、各事業部ごとの方針やルールは大きくかけ離れない(極力一致させる)ように、部長レイヤーでのこまめな連携して調整しながら進めた方が良い
前編の最後に(後編へ続く)
まずは前編として、今回は複数プロダクトをパートナー展開している場合、パートナーセールス組織はプロダクト(事業部)ごとの縦串の組織体制にするべきか、それともプロダクト横断(事業部横断)の横串の組織体制にするべきかについて書かせていただきました。
次回の後編については、パートナーセールスチームの組織体制の中身について、パートナーセールスチームのメンバーがどういう役割分担で業務遂行をしているのか、さまざまな組織・役割パターンについて書かせていただきます。次回の後編についても是非お読みいただけますと幸いです。
それでは来週もお楽しみに!
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