パートナーセールスの外部採用と社内抜擢の最適化(第2部)
皆さん、こんばんは。
パートナーセールスの葛西です。
前回のnoteで、パートナーセールスの外部採用についての重要なポイントとそのための具体的なスキルセットを解説しました。本記事では、その続きとして、社内抜擢にフォーカスを当てたnoteを書かせていただきます。
パートナーセールスにおける社内抜擢の重要性
パートナーセールスは、SaaS企業がキャズムを超えるための重要な戦略です。この戦略を効果的に活用するためには、社内の優秀な人材を抜擢し、適切なポジションに配置することが欠かせません。社内抜擢は、外部採用と比べてコストを抑えつつ、既存の企業文化に適応した人材を迅速に配置できるため、非常に効果的です。
社内抜擢のメリット:
コスト削減:
外部採用に比べて、採用にかかるコストの削減と採用プロセスにかかるタイムコストを大幅に削減できます。前回の外部採用のnoteでも書いたように、昨今の求人倍率の上昇に加え、パートナーセールスの経験者となると母集団が限られ、採用難易度が上がるため採用活動が長期化する可能性も高いです。そのため、社内抜擢は採用にかかる費用面と時間面のコスト削減につながります。チーム適応・業務適応の迅速化:
既に企業文化や内部プロセスをある程度理解している、同じ事業部からの社内抜擢である場合には新たにプロダクトインストールも不要であるため、外部採用をするよりも新しいチーム・役割に迅速に適応できます。これにより、パフォーマンスの立ち上がりが早くなり、即戦力として活躍できる可能性が高まります。モチベーション向上:
社内抜擢は従業員のキャリアパスを明確にし、将来的な成長機会を提供することでモチベーションを向上させるきっかけになります。パートナーセールスはなんと言っても「マーケティング」「Bizdev」「セールス」の3つの経験が必要となる場面が多くマルチタスク能力が一気に身に付く、またとない成長の機会を提供できます。特に自己成長欲求の高い社内メンバーを抜擢できるようであれば、エンゲージメントが高まり、離職率の低下にもつながります。
この記事では、パートナーセールスにおける社内抜擢の重要性と、その成功の秘訣について詳しく解説します。
効果的な社内抜擢のためのステップ
効果的な社内抜擢を実現するためには、いくつかのステップを踏む必要があります。まず、パートナーセールスとして活躍できる人材のハードスキル・ソフトスキルそれぞれの定義化・言語化をすることです。社内での行政評価のみでの判断ではなく、外部採用と同じく、ハードスキル・ソフトスキルをしっかりと定義化・言語化していないと、社内抜擢すべきではない人材が入ってしまって活躍できないなんて結果になることもあります(ただ、育成次第で伸びる人ももちろんいます)。
次に、抜擢された人材に対して、パートナーの引き継ぎ関連はもちろんですが、それに加えてパートナーセールスに対応するために必要なトレーニングやリソースを提供し、スムーズに新しい役割に適応できるよう支援することが必要です。これは私自身の経験として、私自身も別事業部から現在のパートナーセールスに異動してきたのですが、パートナーの簡単な引き継ぎだけしかされず、あとは勝手にやってねと丸投げされ、非常に大変な思いをしました(引き継いだ当時の状況は、こちらのnoteをご参照ください)。要は当たり前ですが、しっかりと受け入れ体制は整備しておきましょうねというお話です。
最後に、(特にマネージャー以上であれば)定期的なフィードバックを通じて、パフォーマンスを評価し、必要に応じて自身のパートナーセールスに関するノウハウをしっかりと提供して育成することが成功の鍵を握ります。各メンバーへの細かなアプローチ方法はメンバーごとの特徴に応じて異なりますが、どのメンバーが対象であっても言えることとして、ノウハウを伝える際は「感覚的なお話・ノウハウ」ではなく、しっかり「言語化されたノウハウ」を伝える、「数字というファクト」をもとに伝えるようにしましょう。
パートナーセールスとして社内抜擢すべき人材の要件
基本のベースは前回noteの外部採用の人材要件と同じ人材が抜擢できれば、多少の育成ですぐに即戦力として立ち上がるかと考えています。一方で、メンバー層での社内抜擢であれば、既に企業文化や内部プロセスをある程度理解していること、加えて同事業部の場合は新たにプロダクトのインストールが不要であることを加味すると、しっかりと受け入れ体制・育成体制を整備した上で外部採用よりは人材要件を緩めても良いかと思います。具体的には、下記のハードスキル(業務実績含む)とソフトスキル(人物特性含む)が必須条件と考えています。
※ただし、パートナーセールスチーム内に十分に人員が在籍しており、育成コストがかかる人材を育成する余力のある状況の場合は話は別です
必須のハードスキル(業務実績含む)
同事業部での新規営業(以下、FS)の経験またはカスタマーサクセス(以下、CS)の経験が2年以上、もしくは別プロダクトの事業部の場合は3年以上の新規営業経験
→同事業部であればプロダクトインストールが不要なので、2年程度FSかCS経験があれば対応できるかと思います。同じ会社の別事業の場合はCS経験だとプロダクトが異なるため難しいですが、FSであればプロダクトの違いはあれど似たような業界のサービス(例:大括りにHR、HR Techなど)であればFS経験が3年以上あれば対応できるかと考えています。顧客を長期に渡って深耕・ナーチャリングして受注した経験のある方(CSの場合は深耕・ナーチャリングしてアップセルした経験のある方)
→これは外部採用と同様、絶対に外せない要件です。与えられた予算を自身の力で継続して達成できている方
→マネージャーなどが同席しないと受注できない人ではなく、自身の力で予算を達成し続ける再現性のある方(要は自走できる方)でないと難しいです。
その他、外部採用の場合にどれか1つは必要と書いた「エンタープライズセールスの経験」「プロジェクトマネジメント経験」「セールスイネーブルメントの経験」「マネジメント経験」は社内抜擢であれば一旦必須ではなくても良いでしょう(もちろん、あるに越したことはありません)。
必須のソフトスキル(業務実績含む)
外部採用と同様、「コミュニケーション能力」「観察力があり、マメな対応ができる方」「課題解決能力(課題を解決しようと並走して頑張れる人でも可)」「ペーシング能力の高い方(自身の行動特性として素でできる人でも、相手に合わせて演じ分けられる人でも可)」の4つのソフトスキルは必須であるかと思います。
組織事情によって叶うかはわかりませんが、上記のハードスキル・ソフトスキルが抑えられている、マネジメントラインの方に進むというよりは自身のスキルタグ増やしたいというリーダークラスの方が抜擢できるのがベストと私は考えています。
社内抜擢の際によく起こる課題
社内抜擢には多くのメリットがありますが、いくつかの課題も存在します。ここでは社内抜擢にあたってよく起こる課題をまとめます。
①パートナーセールスの社内ブランディングがあまり良くない
どこのSaaS企業でも直販が主流であり、パートナーセールスは亜流ということが多く、社内ウケが良くないこともしばしばあります。その場合、社内で「パートナーセールスをやりたい」と希望する人がおらず、社内抜擢するのに苦戦することがあります。ですので、普段からパートナーセールスの魅力、パートナーセールスで得られるスキル(「マーケティング」「Bizdev」「セールス」の3つを一気に経験できる、等)などを発信し続けると良いでしょう。
②社内のリーダー層、エース人材、準エース人材の抜擢に対する既存部門からの強い抵抗
例えば、同事業部のFSやCSからリーダー層やエース人材、準エース人材を抜擢しようとする場合、当然引き抜かれるFSやCSの戦略ダウンにつながるため、強い抵抗に合うことが多いです。その場合は、経営陣にパートナービジネスを強化すべきであることを理解いただき(よく言う経営陣との握りです)、経営陣を巻き込むことで社内異動を遂行するのが良いでしょう。ただし、FSにせよCSにせよ、パートナービジネスの伸長にはFS・CSを巻き込むことも多々あるため、悪い印象が残らないような配慮は一定必要です(このあたりは調整力が試されます)。
③抜擢後のフォローアップ不足
抜擢後のフォローアップが不十分な場合、適応が遅れることがあります。対応策として、定期的な1on1やパートナー企業との打ち合わせ・常駐などへの同席、適応が遅れている要因の発見と解決策を一緒に考えるサポート、モチベーティングなど、自走できるようにしっかりとサポートしましょう。
④結果でしか評価がしづらい
パートナーセールスは属人化しやすい仕事です。そのため、業績でしか評価ができず、プロセス(パートナーに対する活動量等)に対する評価がしづらいということが多いです。ですので、業績のみでの評価とならないように、プロセス(パートナーに対する施策や活動量等)がしっかりとモニタリングできるような基盤の整備、プロセスがしっかり評価につながるような透明性のある評価基準を設けるなどの対応策が必要です。
⑤キャリアパスの不透明性
これはどのポジションへの抜擢でも同じですが、明確なキャリアパスがないとメンバーの将来への不安が増加します。パートナーセールスという仕事を極めることで、どのようなスキルセットが身につくのか、どういうキャリアが描けるのかを話す、そのメンバーのWillにも合わせてキャリアプランを明確に設定するなどの対応をされると良いでしょう。
まとめ
パートナーセールスで成功するためには、社内の優秀な人材を抜擢し、適切なポジションに配置することが重要です。社内抜擢は、コストを抑えつつ、既存の企業文化に適応した人材、プロダクトインストールが不要な人材を迅速に配置できるため、非常に効果的です。効果的な社内抜擢を実現するためには、適切な評価基準の設定、必要なトレーニングとリソースの提供、定期的なフィードバックが欠かせません。
社内抜擢にあたって生じるであろういくつかの課題もありますが、しっかりと対策を講じ、社内抜擢の効果を最大限に引き出すことで、パートナービジネスをより成長させることができるでしょう。今後も、適切な人材を適材適所に配置することで、企業全体の成長を促進していくことが求められます。
次回のnoteでは、パートナーセールスにおける外部採用と社内抜擢のどちらを優先すべきかについて詳しく解説します。
次回のnoteもお楽しみに!