パートナービジネスにおける手数料設計ガイド(第1部)
皆さん、こんばんは。
パートナーセールスの葛西です。
直近パートナービジネスを立ち上げている方々とお話させていただく機会が多く、その中で「手数料はいくらに設定すべきか?」という質問が非常に多かったため、今週・来週と2部構成でパートナービジネスにおける手数料設計について書かせていただきます。
パートナービジネスにおける手数料相場
成功するパートナー制度を構築するためには、適切な手数料設計は不可欠です。
手数料は、パートナー(代理店のこと、以下は「パートナーで統一」)のモチベーションを高め、積極的な販売活動を促すための鍵の1つとなります。
手数料の設計を誤ると、パートナーのやる気を削ぐ結果となり、ひいては全体の売上に悪影響を及ぼす可能性があります。
才流さんの調査によると、パートナービジネスにおける手数料相場は約20%のようです(下記参照)。
業種別に見るとシステムインテグレーターと商社・卸売が手数料20%未満と回答されている企業が4分の3くらい、OA機器サービスの企業で約半数強が手数料は20%未満であることがわかりました。
私自身もいろいろな企業の方と情報交換をさせていただいていますが、パートナービジネスにおける平均の手数料相場はだいたいの方が20%前後であるため、この数字を基準値として置いていると仰っておりました。
ここからパートナー制度を展開する際に考慮すべき手数料設計の基本的な考え方や具体的な手数料の種類、設計プロセスについて詳しく解説しますが、基本的な平均手数料は20%前後ということはまず念頭に置いておきましょう。
手数料の種類
①レベニューシェア(売上に基づく手数料)
パートナーが売上を上げた際に、その売上金額のうち一定の割合を手数料として代理店に支払うモデルです。
パートナーのパフォーマンスに連動して報酬が増減するため、より高いモチベーションを生み出すことが期待できます。
また、パートナー側が成果を上げられなかった場合は支払う必要がない、もしくは支払い手数料額が少額で済むというのもメリットです。
私が知る限り、SaaS企業のパートナービジネスにおいては、「販売価格の●%」という形で手数料設計をされているケースが最も多いです。
②成果報酬型手数料
特定の成果(例:新規顧客の商談獲得や新規契約の締結時)が達成された場合に一定の成果報酬が支払われるモデルです。
メリットとしては①のレベニューシェアとほぼ同じです。
顧客紹介で固定の手数料を紹介料として支払うというような代理店契約モデルはまさにこれに当たります。
③固定手数料
提供されるサービスや商品に関わらず、年ごとまたは月ごとなどで一定の固定手数料を支払うモデルです。
ベンダー側は予算計画が立てやすくなる一方、パートナー側が成果が出なかったときも支払う必要があるというリスクを抱えます。
④インセンティブ
パートナーのパフォーマンスや貢献度に応じて、特別に支給する手数料。
例:一定の目標を達成した場合に追加ボーナス手数料を与える、特定の売上目標の達成度合いに応じて手数料の%を増やす。
パートナー側の喪tベーションを高める1つの手段とはなりますが、インセンティブが高すぎるとベンダー側の利益が減るので要注意が必要です。
手数料支払い形態
①ショット型マージンモデル(1回払い手数料、フロー型)
契約や販売が成立した際に1度だけ手数料が支払われるモデルです。
この形式はシンプルで理解しやすく、初期の契約獲得に対するインセンティブとなります。
②ストック型マージンモデル(継続払い手数料、継続課金型)
顧客が継続的にサービスを利用する限り、または一定の年数(例:初回から3年間、等)のみパートナーに定期的に手数料が支払われるモデルです。
これは、顧客の維持や長期的な関係構築を促進するために有効です。
一方で、ショット型マージンモデルと比べて、継続的に手数料が発生するため管理工数が発生します。
手数料設計において考慮すべき要素
パートナー手数料を設計する際には、いくつかの重要な要素を考慮する必要があります。
これらの要素は、パートナー制度の成功を左右するため、慎重に検討することが重要です。
①市場調査と競合分析
まず、市場調査を行い、競合他社がどのような手数料設定をしているかを把握することは極めて重要です。
これにより、自社の手数料が市場において競争力を持つかどうかを判断できます。
また、特に自社商材を持たず代理店業を生業として生計を立てているパートナー企業ですとベンダーからのインセンティブは極めて重要です。
そのため、パートナー候補の企業にとって設計したインセンティブがメリットとなり得るのかどうかも検討すべき事項です。
パートナーの目標や期待に応じた報酬体系を設けることで、彼らの積極的な関与を促すことができます。
※最低、これくらいの手数料を設定しないと動かないというボーダーラインの見極めが重要!
②パートナー企業に任せる業務範囲を明確にする
パートナー企業に対して自社の業務範囲のうちのどこまでをお任せしたいのかを明確にしましょう。
<業務範囲の例>
リードの獲得まで
リードの獲得〜商談、契約まで
リードの獲得〜カスタマーサクセス業務まで(継続提案、アップセル等含む)
どこからどこまでの業務を代理店に任せたいのかによって、手数料の金額も変わってくるためです。
ちなみに私の知る限り、大半のSaaS企業は上述の1または2の業務までをパートナー企業にお任せするケースが多いです。
③CACとCPA
CAC(顧客獲得コスト)とCPA(リード獲得単価)も手数料設計の重要な要素です。
パートナービジネスの目的をパートナー経由での受注件数や売上と置くのであれば、直販のCACを加味して手数料を設計することが重要です。
たいていのSaaS企業は直販のCACを下回る手数料金額で設計されることが多いです。
※ただし、パートナービジネスに投資していきたいと考え、意図的に直販のCAC上回る手数料設定をされるケースもあり。
また、パートナービジネスの目的をパートナー経由での顧客紹介(リード獲得)と置くのであれば、直販マーケのCPAを下回る金額で手数料を設計することがベースとなります。
④LTVとCRC
パートナー企業にサービス継続時にも手数料を支払う場合(ストック型マージンモデルの場合)、LTV(顧客生涯価値)も手数料設計の重要な要素です。
継続すれば永年で継続手数料が入るのか、それとも契約から●年間という限られた期間でのサービス継続のみ手数料が入るのかにもよりますが、
いずれにせよ継続して手数料の支払うようであれば、LTVを加味して継続時の手数料は設定すべきでしょう。
また、パートナー企業側でカスタマーサクセス業務を担わないが手数料はサービス継続時に支払われる場合は、CRC(顧客維持コスト)も考慮すべき指標です。
自社のカスタマーサクセスによる支援で顧客を維持(サービス継続)するためにかかっているコストを加味しなくては、パートナー企業が売れば売るほどベンダー側は赤字になるという本末転倒なことになりかねないためです。
第1部のまとめ
パートナービジネスは、SaaS企業にとって成長を加速するための強力な武器です。しかし、成功するためには適切な手数料設計が必要不可欠です。
第1部では一般的な手数料相場や手数料の種類、手数料支払い形態、手数料設計において考慮すべき要素等について解説させていただきました。
第2部では、もう少し踏み込んで、パートナー企業にどこまでの業務を任せるべきか、手数料支払い形態はショット型とストック型のどちらが良いのか、パートナー側へノルマは課すべきか、等についてまとめさせていただきます。
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