筋肥大において糖質、タンパク質どちらが大切?
筋肥大において「糖質」と「タンパク質」の重要性を比較する際、それぞれが筋肉成長のプロセスでどのように寄与するかを深く掘り下げることが必要です。以下に最新の研究や論文を基に、詳細を説明します。
1. タンパク質:筋肥大の直接的要因
筋タンパク質合成(MPS)の促進
• 筋肥大の本質は、「筋タンパク質合成(MPS)」が「筋タンパク質分解(MPB)」を上回ることです。
• タンパク質は、筋繊維を構成するアミノ酸を供給し、筋タンパク質合成を促進します。
• ロイシンはMPSを活性化するmTOR経路を刺激する重要な役割を果たします。1回の摂取で少なくとも2-3gのロイシンを含むことが推奨されています。
摂取量とタイミング
• 筋肥大を目指す場合、1日のタンパク質摂取量は体重1kgあたり1.6~2.2gが理想的であるとされています(Mortonら, 2018)。
• 運動後30分以内に20~40gのタンパク質を摂取することが、MPSを最大化するために有効です。
筋肥大への直接的寄与
• タンパク質はMPSの材料そのものであり、不足すれば筋肥大はほぼ不可能です。
• 研究によれば、運動後に糖質を追加しても筋タンパク質合成の速度は顕著に変化しない(Groenら, 2015)。したがって、筋肥大の観点からはタンパク質が最重要です。
2. 糖質:エネルギー供給と間接的役割
トレーニングパフォーマンスの維持
• 糖質は筋グリコーゲンとして蓄えられ、トレーニング時の主要なエネルギー源となります。
• 高強度トレーニングでは、グリコーゲンが枯渇するとパフォーマンスが低下し、トレーニングボリュームが減少することがあります。
インスリンの作用
• 糖質摂取によりインスリンが分泌され、筋タンパク質分解(MPB)を抑制します。ただし、筋タンパク質合成(MPS)を直接的に促進する効果はありません。
• いくつかの研究では、運動後にタンパク質単独摂取と比較して、タンパク質と糖質を併用してもMPSの増加にはほとんど影響がないとされています(Tangら, 2007)。
筋肥大への間接的寄与
• 糖質は筋肥大に直接寄与するというよりも、トレーニングパフォーマンスを維持し、結果的に筋肥大を助ける間接的な役割を果たします。
• 長期間の低糖質食では、エネルギー不足により筋タンパク質分解が促進されるリスクがあります。
3. タンパク質と糖質の相互作用
運動後の栄養摂取
• 運動後に筋肉が最もタンパク質を取り込みやすい「アナボリックウィンドウ」が存在します。この際に糖質をタンパク質と一緒に摂取することで、インスリン分泌が促進され、アミノ酸が筋肉により効率的に供給されます。
• 推奨:**1:3~1:4の比率(タンパク質:糖質)**での摂取が、回復とエネルギー補充の両面で効果的とされています。
カロリー全体のバランス
• 筋肥大にはカロリー収支が重要です。十分な糖質が摂取されないと、エネルギー不足を補うためにタンパク質がエネルギー源として利用され、筋肥大が妨げられます。
4. 研究の結論
• 筋肥大に直接寄与するのはタンパク質であり、特に運動後の摂取が重要です。
• 糖質はエネルギー源として間接的に寄与し、トレーニングパフォーマンスや回復に不可欠です。
• 両者のバランスを取ることが最適な結果をもたらします。
実践のための推奨事項
1. タンパク質摂取量
• 1日あたり体重×1.6~2.2gのタンパク質。
• 運動後に20~40gの高品質なタンパク質を摂取。
2. 糖質摂取量
• 1日あたり体重×4~6gの糖質(トレーニング量に応じて調整)。
• 運動後はタンパク質と糖質を一緒に摂取する(例:ホエイプロテイン+バナナ)。
3. 食事タイミング
• 運動前に糖質を摂取してエネルギー補給。
• 運動後にタンパク質と糖質を組み合わせて摂取する。