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創作小説『やせたいオトコノコ。』 第4話 俺の疾走論

初日からチーム登下校の3人でランニングをし、晴太郎の夏休みはそこそこ実りあるものとなったが、また新たな課題が生まれようとしていた・・・



 高校最後の夏休みを謳歌し、始業式までの残りの日数を片手の指で数えられるほどになったある日。
 ダイエットを決断してからちょうど2か月の日でもあった。晴太郎はまた体重計の上に乗った。

 62.7kg。1か月前より3kgほど減ったが、彼にしてみるとどうやら物足りないようだ。すると彼はとんでもないことに気付く。

 8月の頭のことだった。受験生でありながらもまたチーム登下校で集まった日のことだった。今度は街なかに繰り出した。
 まずは映画館で話題となっていた映画を観た。ここまではいいのだがそこから落とし穴が。彼は映画を観ている最中にポップコーンを頬張っていた。きっと他の2人に便乗していまったのだろう。そして昼食をファストフード店で食べた。
 その後にみんなで一駅分歩いたのでチャラになったと考えることもできる。しかし過ぎ去ったこととはいえ、晴太郎はダイエット中にファストフードを食べてしまったことに大いに罪悪感を覚えたのだった。

 ダイエットしよう!と2か月前に決めたのは良いが、食事に関してはそこまで気をつけておらず、また夜食はしないようにしていたがどうしても魔がさしてしまうこともあった。
 そんな自分を反面教師にすべく、ファストフードは言うまでもないが、学校帰りにコンビニに寄って食べていたコロッケも大好物のティラミスも封印した。人からお菓子を勧められても断ったり、断り切れずに貰ってしまったとしても家族にあげるなどして食べないことにした。
 夜は炭水化物を一切摂らず、豆腐やこんにゃくなどで置き換えるようにした。

 夏休みが明けて間もないある日、晴太郎はひょんなことから体重を測るために保健室へと足を運んだ。
 体重を測ってくれた先生が「去年よりも結構増えてるけど大丈夫?」と晴太郎の体重を小声で指摘した。ちなみに去年の体重は50.6kg。
 ダイエットを始めようと決める前の彼なら心が折れていたかもしれないが、今の彼は逆にこの一言に奮い立たされた。
 また晴太郎はダイエットをしていることを母に初めて打ち明けた。すると弁当を含めた毎日の食事にさらに気を遣ってくれた。
 野菜と良質なたんぱく質を豊富に含んだ食事。ダイエッターには必須だからこそこれが後にかなり効いたのだった。

 9月。彼は指定校推薦で大学を受験することに決めた。
 彼の通う真海高校は、毎年卒業生の3割前後が4年制大学に進学、その多くが指定校推薦という方式で進学するようなので彼も例にもれず…という感じではあるものの、進路を決めてからは少しばかり意識が高まったようだった。
 その月の初めにある定期考査で成績が決まってしまうということもあり勉強で忙しかったが、ランニングや毎日の筋トレを一日も欠かすことは無かった。
 余談ではあるが彼の勉強嫌いは割と有名だったので進路を大学進学にすると知った家族をはじめとする彼を取り巻く人々はさぞかしびっくりしたという。
 しかし志望しているのは彼の大好きなゲーム関連の学科だったので、それを知ると納得した人もいたようだった。

 そしてダイエットを始めて3か月経ち、また体重計に乗った。
 そこに表示された「55.4kg」の数字を見て晴太郎は喜んだ。それと同時に食事に気遣ってくれている母にも感謝した。

 それからということ、食事に気を遣うのと同時並行で運動も頑張ったのでただ痩せるだけでなく筋肉もつくようになった。ついに制服も着られるようになり、6月から続けていたジャージ登校を卒業することができた。それが彼のダイエットに対するモチベーションを高めるきっかけにもなった。
 彼は大嫌いだったトマトも食べれば痩せるだろうと暗示をかけ、食べるようになった。彼はトマトに限らず野菜が好きではなかったがダイエットを始めてからは自発的に食べるよう努めた。苦手だった魚や酢の物も痩せるために、と思って我慢して食べた。夕食も午後7時には食べ終えるようにし、それができそうにない日は無糖の炭酸水で空腹を満たした。
 また本来大好物だったコロッケやティラミスをどうしても食べたくなった時は、あんなの大嫌いだ、俺の好きなのはトマトだと何度も自分に言い聞かせた。
 この当時はまだよかったのだが、彼のそのような行動は後々彼自身の首を絞めるきっかけとなってしまったのだった・・・



~筆者談~

 やっとこさ第4話まで来ました~😂

 夏休みも終わり自身の食生活についても見直し、ダイエットも一気に絶好調!になりましたねぇ。笑
 また進路についても考えたり、勉強で忙しい中でも運動を欠かさない姿からは真剣さも垣間見られます😌

 ですが最後の一文から漂う不吉な予感・・・今回の晴太郎の一部の行動に少し違和感を覚えた読者様もいるのではないでしょうか。
 その真相はいつか明らかになります。

 先行き不透明な終わり方になりましたが、次週もお楽しみに!

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