黄泉ツマ重ね1(R18)
(序)
初めて書き込みします。
僕は地方の大学で民俗学を専攻している学生です。
今少し悩んでいることがあって、こちらのコミュニティの皆様にご意見をお伺いしたく、共有させて頂きます。
皆さんは死後結婚という風習をご存知でしょうか?
こちらの掲示板をご覧の方は恐らくご存知とは思います。
ですが、知らない方の為にも念のため説明させて頂きますね。
死後結婚とは読んで字のごとく、あの世で挙げる婚姻のことです。
冥婚とも呼ばれています。
遺族が死者を弔う為に行う習俗で、古くから中国や東南アジア、日本でも行われてきました。
死者の魂がいまだこの世にあるうちに、伴侶と見立てた異性と婚礼を挙げさせ、夫婦としたのち、彼岸へ送り出す行為です。
僕は大学の授業で取り上げられたことをきっかけに、今もY県やA県の一部で行われている死後結婚について興味を持ち、ゼミの課題のテーマに選ぶことにしました。
さて、レポートを書くとき、文献を当たるのは勿論ですが、フィールドワークというものも重要になってきます。
そこで僕は、SNSにこんな書き込みをしたのです。
『僕は地方の大学で死後結婚の習俗について調べている者です。O県、Y県、A県にお住まいの方で、そういった話を聞いたことがあるなど、お詳しい方いらっしゃいましたらご連絡下さい』
書き込みをしていてなんですが、僕は全く期待していませんでした。
SNSは嘘が多い。
ネットで調べた情報は不確かなことが多く、民俗学や文化人類学が容易にオカルトと結びつき、まことしやかに真実として記述されています。
地元のお年寄りの長い雑談に付き合いながら、聴き込みをした方がマシというものです。
だからほんの気まぐれの呟きでした。
ハッシュタグは付けましたが、有益な情報は期待していませんでした。
せいぜい、同じものに興味を持つ学生や好事家と繋がれればいいとしか、思っていませんでした。
事実、いくつか届いたリプライやメッセージは、僕を揶揄するものや、オカルトめいた雑多な情報ばかりでしたから。
しかしその中の一通に、僕の目を留めるものがあったのです。
それは一人の女性からのメッセージでした。
『初めまして。呟き、拝見しました。私はY県M地方に住む者です。私の姉は未婚のまま事故で亡くなり、姉の死を悼む両親によって冥婚の花嫁になりました。興味がおありであれば、詳しい話をメールします』
現代日本において、今もって冥婚が行われている地域に住む女性からのメッセージです。
僕は興味を惹かれ、少しだけ悩んでから返信したのです。
返って来たメールは、正直、更に興味を惹かれるものでしたが、にわかに信じがたい、胡散臭いと言っていい内容でした。
僕はこれから、彼女から受け取ったメールをそのままこちらにコピペしようと思います。
その上で皆さんにご意見を伺いたいのです……。
2に続く