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黄泉ツマ重ね2(R18)

(破)


『返信ありがとうございます。興味がおありのようでしたので、長くなりますが私の話をしたいと思います。
 メッセージでお伝えしたように、私はY県M地方で生まれ育ち、今も地元に住んでいます。


 ご存知のように、私の地元には古くから死後結婚の風習があります。
 事故や事件、病気などで子供を亡くした親が、絵や合成写真を用いて子供の結婚式の様子を描き、寺に奉納して子の成仏や死後の幸福を祈るのです。


 私の姉は私が小学三年生のとき、交通事故で亡くなりました。


 私とは九つ歳が離れていましたので、十八歳になったばかりの、高校三年生の夏に亡くなったことになります。


 姉は内気な私と違って、とても活発な人でした。
 バスケ部に入っていて友達も多く、勉強も出来て自慢の姉でした。
 私とは歳が離れていたこともあり、特に可愛がって貰っていたことを覚えています。気が強くて物言いがはっきりしているところもあったけど、姉が居るだけで私の家はとても明るく笑顔の絶えない家庭だったのです。


 そんな姉が学校帰りに車にはねられ亡くなって、それからというもの、私の家はがらっと様変わりしてしまいました。


 姉は両親にとっても自慢の娘でしたから、姉が亡くなったことで明るかった母は昼夜を問わず泣いては塞ぎ込むようになり、外出もままならない状態になりました。
 父は気丈に耐えていましたが、毎日深夜遅くまで、仕事に打ち込むことで必死に辛さを忘れようとしているのは、子供の私から見ても明白なことでした。


 生前の姉は東京の大学への進学を希望していました。
同じバスケ部に彼氏もいて、私は何度か姉と姉の彼氏の三人で、遊んで貰ったこともあります。


 やりたいことも出来ることもたくさんあっただろう姉。
 その突然の死を、私も両親も、当時はどう受け止めたらいいのか全くわかりませんでした。
 ただ、姉の死を境に私の家から笑い声は消え、姉の死を悼み続ける両親を前に、私はより内気な性格となり、自身の殻にこもるようになっていったのです。


 そんなある日のことでした。
 父が会社の人から、『ムカサリ絵馬』の奉納の話を持ちかけられたのは。


 貴方が大学の授業で習ったのはこの絵馬のことではありませんか?
 冒頭でも書きましたが、親が亡くなった子の婚礼の絵を絵師に依頼して絵馬に描いて貰い、それを寺に奉納することで、死後結婚を成立させるのに用いるものです。


 姉の花嫁姿を見られなかった両親は、姉の為に、それ以上に自分達を慰める為に、この絵馬を奉納することにしました。
 奉納の日、私は祖父母の家に預けられていた為、現場にはおらず、実は詳細はわかりません。
 ごめんなさい。


 出来上がった絵馬を私は奉納後に見たのですが、白無垢姿の姉の絵は、とてもとても、綺麗でした。絵ではなく、実物はきっともっと、綺麗だったろうと想像すると今でも胸が痛みます。
 身内自慢になりますが、姉は子供の私から見てもとても美しい人でした。
 その美しい姉の夫となった相手、絵馬で姉の隣に描かれた男性のことを、貴方は気にしておいでかと思います。
 子供の私も気になっていました。


 今でも思い出せますが、姉の隣に描かれた男性は姉よりもだいぶ歳上……あとから思い出して思うのですが、二十代も半ばから後半のように見えました。黒い髪を真ん中で分けた、背が高くて線の細い、少し陰気な男の人でした。
 私はその男性の絵を見たとき、姉の付き合っていた彼氏ではないことを単純に不思議に思い、母に尋ねたのです。
 すると母に諭されました。
 亡くなった姉の夫となる人が生きている人であってはならない、姉の隣に描かれた人は、姉と同時期に病気で亡くなった人なのだと。


 私はそれもそうか、と母に対しては頷きつつも、やはり納得出来ない部分がありました。姉は良く言えば意思の強い、悪く言えば気が強く頑固な性格の人だったからです。
 姉が大好きな彼以外の男の人との結婚を喜ぶだろうか。
 承諾するのだろうか。


 姉ならばきっと、そんなのお断りと、ぴしゃりと言って相手を置いて、さっさと彼岸に旅立つのではないだろうか、と。


 そう思いましたが、それはあくまで私の想像でしかありません。
 一瞬、姉に去られた花婿の方はどうなるのだろうと考えましたが、私はいつしかムカサリ絵馬にまつわることを意識的に考えないようにしていきました。
 その風習が、両親にとっては自分達の心を慰めるものであっても、私にとっては子供心にも不気味なものに感じられたからです。
 なにより、死んだ姉を引きずり続け、嘆き続ける両親に、生きている私を見てもらえないことが悲しくて……。
 私はいつしか、意識的に姉の記憶を、姉との思い出を自分の中に封印するようになっていきました。


 そんな折です。初めの異変が……あったのは。


 私は姉が死んだ歳と近い、十七歳、高校二年になっていました。
 進路を決める時期です。
 その頃私は両親とぎくしゃくするようになっていました。
 いえ、姉が亡くなってから既に私と両親の仲はおかしくなっていたと思います。私が両親を気遣って、表面上は普通のやりとりをしていただけです。
 両親は何年経っても姉の死を引きずっていました。
私が何か……たとえばテストで百点を取ったり、書道のコンクールで賞を貰って帰って来ても、両親はにこりともしませんでした。
 そんな両親の態度に私はその都度傷付きながらも、それを仕方のないこととして受け入れてきたのです。


 それを受け入れられなくなったのは……、両親が私を姉の名前で呼ぶようになってからでした。
 成長した私は、顔かたちの造形だけは、姉の姿に瓜二つになっていました。
 けれど、私には姉と同じ輝き、美しさはありません。
 女の美しさとは、顔かたちの造形のことではないと聞いたことがあります。
 事実、私は姉と瓜二つでありながら、男性に言い寄られたこともなければ、彼が出来たこともありませんでした。


 人気者でいつも隣に人が居た姉とは大違いです。
 きっと、内に秘めた生命力や明るさが姉の全身を光らせ、みんなを羽虫のように群がらせていたのだと思うのです。
 そんなわけで、陰気な私は、いじめられこそしませんでしたが、影が薄く、高校生になっても友達の一人も出来ないままでした。
 異性と付き合うなんてことも、漫画や小説の中の遠い世界の出来事で……同い年の女子達が、恋の話で盛り上がるのを尻目に、いつも一人で本ばかり読んでいました。


 なので、初めの異変が起こったとき、私は誰にも相談することが出来なかったのです。


 それは寝苦しい夜のことでした。
 私は私のことを姉の名前で呼んだ母に対し、暑さのせいもあってかイライラしてしまい、つい母をキツい言葉でなじってしまったのです。
 泣き出した母をかばった父にも苛立ちを覚え、入浴もせずに自分の部屋へと引きこもると、ベッドの上でひとしきり泣き、いつのまにか寝てしまいました。


 夢を見ました。
 知らない男の人が私の体に覆いかぶさり、首筋にキスをする夢です。
 ぬるぬるした舌で敏感な首筋を舐められて、リップ音を立てて吸われると、とても恥ずかしい気持ちになりました。
 やめて下さい、と夢の中で声に出したと思います。
 けれど男の人の舌が、唇が、わたしの首筋を這いおりるのは、一向に止まりませんでした。それどころか、私の着ていたキャミソールの上に彼の手が触れ、胸を揉みしだかれました。
 それはゆっくりとした優しいものでしたが、何しろ相手は知らない男の人です。
それに、私には恋人どころか、男友達だっていません。
 胸を揉まれるのも、異性に触れられることすら初めてで……私は驚き、混乱して、彼に向かって強い制止の声をあげていました。


 すると彼は言ったのです。
 俺たちはもう夫婦じゃないか、夫が妻を抱いて何が悪い、と。


 はっとして私は彼の顔を見ました。
 私の胸を揉みしだく知らない男は、あの日見たムカサリ絵馬の中で姉の隣に描かれていたあの男の人だったのです。
 悲鳴をあげた私に対し、男の人は笑いました。
 そうして、キャミソールを捲り上げ、ブラをずらすと、直接私の胸に触れてきたのです。
 思い出すのも恥ずかしい、何か卑猥な言葉をかけられたような気がします。


 夢だというのにやけにリアルで現実的な人肌の熱を、彼の手のひらから感じました。男の人の大きな手でしばらく胸を揉まれ続けて、その間、私は抵抗のひとつも出来ませんでした。それどころか、乳輪のあたりをふにふにと揉まれて乳首を摘まれたとき、変な声まであげてしまっていたのです。
 乳首を二つとも指先で摘まれてくりくりと擦られて、私は感じてしまっていました。おっぱいを揉まれただけで摘めるほどに乳首が硬くなっていたことで、男の人もそれに気づいていたと思います。また何か恥ずかしいことを言われて、乳首をいじめられました。
 この世の者ではない男の人に無理やり胸をいじられて、私はやっぱり抵抗出来ませんでした。 
 自分は胸が気持ちいいのだと……自覚してしまったのです。


 中学に上がった辺りからでしょうか、人と比べてかなり膨らんでしまったおっぱいは、私にとってそれまで不要なものでしかありませんでした。
 姉と違って私は内気で話すことが苦手で……人とうまく関わることの出来ない女です。なるべく目立たず生きていきたいのに、大きな胸は男子達の視線を集め、女子の嫉妬を買いました。
 こんな胸、いらないと。
 そう思っていた私は、それまで自身で触れることすらあまりありませんでした。
だから、そのおっぱいをしつこく揉まれ、乳首をつつかれて、感じてしまったことに、私は驚きと罪悪感とで固まってしまっていたのです。
 男の人は、そんな私におかまいなく、首筋や耳を啄ばんでいた唇を下げ、胸の方へと向けてきました。
 いじられ過ぎて痛いくらいになってしまった乳首に彼の息が当たって、私はいや、と言いましたが、そのまま舐められてしまいました。
 他人の舌が私の腫れた乳首を犬のようにべろべろ舐め、唾液を落としながらくにくにと転がしてきて、私は気が狂いそうになりました。


 こんな感覚味わったことない。
 こんなものなければいいのに、邪魔なだけなのに、と、思い続けてきた胸から快感が次から次へと流れ込んできて、私は軽くイッてしまっていたと思います。
 ぶちゅ、という音がして男の人にきつく乳首を吸われたとき、私はいやらしい声で鳴いていました。情けないことに、そのとき私は、おっぱいをいじられて乳首を吸われただけで、下着がぐちゃぐちゃになるほどあそこを濡らしてしまっていたのです。
 男の人に乳首が感じるのか訊かれて首を振ったけれど、もう片方の乳首も吸われて、おっぱいが両方とも男の人の唾液まみれになったところで、両乳首を指先で転がされてしまいました。
 私は大声で喘いでしまって……胸だけで感じてイッてしまったのです。


イク、という感覚を味わったのもこのときが初めてで、股間の奥が痙攣する動きが、一体何の為なのかも、このときの私は知りませんでした。
 ただ、いつも大き過ぎて恥ずかしいと思っていた胸を弄りまわされて、気持ちよくなってしまった自分がショックで……。
 呆然としていましたが、男の人は、そんな私の乳首を吸ってはぬるついた乳首を指先で転がす動作を繰り返すので、私はその気持ち良さに何度も何度もよだれを垂らしてイク羽目になりました。
 そのうち乳首を吸われると、あそこがきゅんきゅんと疼くようになってしまって……濡れ過ぎて紙のようになってしまった下着に男の人の指が触れたとき、私はまた、いやらしい声をあげていました。
 濡れてべちょべちょになった下着の上から、骨ばった指があそこの肉をぷにぷにと押してくる度、恥ずかしい音が聞こえて、私は耳を塞ぎたくなりました。
 名前も知らない姉の夫になった人に、夢の中でいやらしいことをされて、私の体は嫌がるどころか、喜んでいる。
 それがとても恥ずかしく、情けなくて、私は涙が溢れそうになるのを必死で堪えてもう一度、制止の声をかけました。
 けれど相手は、私の乳首を吸っていた顔を上げ、私の耳にむしゃぶりついて、中に舌を入れてきたのです。
 乳首を吸われたときとは別の快感が私を襲いました。
 耳の中を熱い舌が唾液とともに這い回り、その濡れた音が直接体の芯まで響いてきて、私は震えてしまいました。
 耳が性感帯になるだなんて、知らなかった。
 荒い吐息にさえ、耳の穴に吹き込んでくる度に私は感じてしまいました。


 私が敏感過ぎるのか、それとも女というものはみんなこういうものなのか。


 わかりませんが、恥ずかしさとは裏腹に、男の人がもたらす愛撫は何もかもがひどく気持ちよかったのです。
 耳への愛撫に気をとられている内に、彼は濡れた下着を掴んで引っ張り、紐のようにして綱引きでもするようにおまんこを擦りだしました。
 こよりのように細くされた下着で濡れたあそこをくちゅくちゅと擦られて……私は自分でも信じられないほどいやらしい声で喘いでいました。
 男の人が耳元でまた卑猥な、恥ずかしいことを言いました。今度は私の耳の奥に響いてくるような至近距離で、です。私はあそこへの刺激と、男の人の囁いてくるいやらしい言葉に感じて、また盛大にイッてしまいました。
 男の人がそれを見て、満足げに笑っていたのを覚えています。
 そして唐突に、私の目の前に勃起したモノを差し出してきたのです。


 自分も気持ちよくして欲しいと。そう言われました。


 私はそれまで、おちんちんというものをきちんと見たことがありませんでした。
 父よりも姉や母と一緒にお風呂に入ることが多かった私は、普通の状態のそれでさえも、見る機会がほとんどなかったのです。
 小学生のとき、男子がふざけてパンツを脱いだ際に指の隙間から少し見えたくらいで……。
 だから、男の人が私の体の上から降りて、私の顔の前に下半身を晒してきて、私は驚くのと同時に頭のどこかでやはりこれはただの夢ではないのだと、確信を持つに至りました。
 大人の男性のそれを見たことのない私が、こんなにリアルに肉感と臭いを伴ったモノを、夢に見れる筈がありません。


 夢というのは記憶の整理だと聞いたことがあります。
 けれど私の記憶のどこにも、こんなおぞましい肉の塊の記憶はありませんでした。
 初めて見る大人の男性の勃起しきったおちんちんは、なにか気味の悪い生き物に見えて、私は何故かあさりの砂抜きをしたときに中から出てくるあさりの中身を連想していました。
 けれどそれよりもずっとおぞましい色味をしており、少し湿っぽい臭いもしました。男の人は、私の唇にその先端を近付けると、咥えるように再度言いました。


 咥えて、舐めろと……。
 歯をたてないように優しく、舌を使っていやらしく、唾液をたくさんまぶしてぬるぬると……。男の人が私の乳首を咥えてちゅくちゅくと吸ったときのように上手に、と。
 私はそれの、そのあまりのおぞましさに躊躇しましたが、結局は男の人の無言の圧力に屈して、先端に唇をつけました。やはり少し臭ったのを覚えています。
 男の人は死者でありながらまるで生きているかのように、私の前に存在していました。
 つるつるした表面に舌を伸ばして少し舐めると、男の人が唾液をたっぷりかけるように指示してきました。私は口の中に唾液を溜めると、とろとろとそれの先端にそれを落として、舌を使って広げました。
 それから、目をつぶって口を開いて、あむりとキノコの傘のようになっている部分を咥えたのです。私の口が小さいのか、男の人のモノが大きいのか、私の口の中は彼の肉でいっぱいになりました。
 私はそれを一生懸命、唾液でぬるぬるにしては舌を使って刺激しました。
 とは言っても正直、お世辞にも上手なものではなかったと思います。
 男の人は途中で私の頭を掴むと、突然私の喉奥に向かってそれを突き入れてきました。その乱暴な動きに生理的な涙が溢れて苦しくなりましたが、私はただなすがまま、口の中を突かれるのを、黙って我慢していました。


 いつ止むとも分からない突き入れに何度も吐きそうになりましたが、やがて男の人が呻いて、私の口の中に精液を出しました。
 口の中に溢れかえった液体に、私はショックを受けましたが、男の人がそのまま飲めと言ったので、舌に触れないようにして、私はそれを体の中に流し込みました。


 好きでもなんでもない人の精液を、夢の中とはいえ、口の中で出されて飲んでしまった……。


 とてもショックでしたが、男の人の手が私の太ももを滑って足の間に入り込み、濡れて冷たくなった私の股間をまたなぞり始めて……自分のモノを入れていいかと訊いてきました。
 私は口の中に突き入れられたそれが、今度は私の体の中を乱暴に出入りするのだと思い、恐怖で必死に抗いました。
 すると男の人はその日はそれ以上無理強いはせず、ただ時間はたくさんあるとだけ言ってニヤニヤと笑ったのです。


 ぞっとした途端、私は夢から醒めました。


 しかし、夢と同じように私のキャミソールは上に押し上げられ、反対にブラは押し下げられて、裸の胸が露出していました。
 気味の悪いことに乳首は二つとも今しがたまで誰かにしゃぶられていたようにぬるぬると濡れていて……人差し指で乳首に触れてから鼻に近付けると唾液の臭いがしたのです。
 眠りながら自分の胸をしゃぶるような癖は当然ありません。
 確かに誰かに愛撫され、私はイッてしまったのだと、どろどろに濡れた下半身が、私に事実を突きつけてきました。


 時計を見ると深夜三時を回っていました。
 私は真っ暗な家の中、一人シャワーを浴びてからまた眠ることにしました。
 恐怖はありましたが、それ以上に軽い疲れがありました。
 あれはただの夢だからと、私は自分に言い聞かせ、その日はそれ以上考えないようにしたのです。
 けれど、それがただの夢ではなかったことは、私が貴方にメールをしたことからもお分かりかと思います。


 姉は確かに冥婚の花嫁となりました。
 しかし恐らくそれを拒絶し、逃げ出した姉の夫となった男性は、私を妻としたのです。


 次の日から私は……恐怖と恥辱の夜を過ごすことになりました。


 夜、自室に一人で居ると、それが眠っていても起きていても、あの「彼」が訪れるのです。
 眠っているとき夢で私を襲う彼は、生者のように感じるのですが、起きているときは、彼の姿は決して見えません。
 ただその息遣いと手のひらの熱、私を舐めてくる舌や唇の感触、そしておちんちんから漂ってくる独特の臭いだけが、彼がたしかにそこに居るということを、私に伝えてくるのです。
 眠っているときはまだしも、起きているときに彼に触れられるのは、酷く恐ろしい体験でした。


 何しろ、突然荒い息遣いが後ろでしたかと思うと、机に向かってテスト勉強をしているときでも首筋を食まれ、音をたてて吸われ、部屋着の上からいきなり胸を揉まれるのです。
見えない手が私の胸を下から持ち上げてたぷたぷと揺らし、乳首を弾くと、私は力が抜けてしまい、碌な抵抗も出来なくなってしまいます。
 姉の夫となった人はそれをよく知っていて、私の体は毎晩彼の思い通りに弄ばれてしまうのです。


 けれどわたしは……、それに恐ろしさと嫌悪感を抱いているというのに、それなのに、快感を得ることも、それを欲してしまうこともあり……。そんな自分が恥ずかしく、情けなくもありました。
 このままではわたしは、おかしくなってしまう。そう思い、極力そのことを考えないように、感じないように振る舞いました。しかし、そうすればそうするほど、それはわたしの頭の中を侵食し、また、彼の来訪も増え、悪戯に弄ばれる頻度も増していきました。


 次第にそれは昼にも訪れるようになり、今これを打っているこの瞬間にも、彼の気配を感じます。
 恐ろしいのは、わたしがこの状態に慣れかけている、ということです。
 幸いにも、まだわたしは処女のままです。姉の夫には何か考えがあるのか、最後の一線は決して越えてこないのです。でもそれも時間の問題のように思えます。
 どうかお願いです。わたしを助けて下さい。
 わたしを姉の夫から救い出して欲しいのです。厚かましいのも胡散臭いのも承知の上で、お願いします。わたしには』


 僕はそこでコピーした内容をペーストしていた手を止めて、しばし逡巡し、画面ごと閉じた。

我に返ればこんなもの、書き込むことの方が愚かだと思ったのだ。どうせ見るのは、クリスマスには天下一無職大会で盛り上がるような連中だ。「官能小説乙」としか言われないだろう。
 だがそれでも僕が、どこかに吐き出さずにいられなかったのは、このメールに添付してあった気味の悪い動画のせいだった。
 三分程の短い動画には、一人の少女が裸で映り込んでいた。


 長い黒髪に抜けるような白い肌の、街でもちょっと見かけないくらいの美しい少女だ。

 場所は少女の自室だろうか。ピンクを基調とした女の子らしい部屋のベッドの上で、少女は不自然に体をよじらせ、喘いでいた。

 ゴムボールのように大きな乳房が、たゆんたゆんと揺れて弾む。そして次の瞬間、その乳房にはっきりと、人の指が食い込んだような跡がついた。
 僕が驚いて乳房に釘付けになっていると、少女の乳房は、透明な手が彼女の胸を揉みくちゃにしているとしか思えない奇妙な歪み方をする。
 乳首は吊られたように引っ張られ、少女が腰を浮かせると彼女の下肢からは粘ついた水温が響いた。


 メールの内容といい、この動画といい、頭のおかしい変態女の悪戯行為にも思えたが、動画の中の彼女の動きは、自慰にしては不自然だ。
 そのうち少女は細かに痙攣しだした。嬌声もそれに伴って悲鳴のようになっていく。


 刹那、唐突に、弾けた。


 ぐったりした彼女が荒い息を吐く様がしばし映し出され、残り時間十秒のところで彼女の瞳が開き、くしゃりと可憐な面立ちが泣き顔に歪んだ。彼女がカメラ……僕の方を見る。そうして一言、
「助けて下さい」
 耳に残る声でそう言った。


 僕は結局あれからずっと、例のメールと動画に取り憑かれていた。寝ても覚めても、あの動画の中の少女が僕の頭にこびりついて離れてくれないのだ。


 気味の悪さと後味の悪さに、何度も何度もメールごと動画を削除しようとして、けれど結局出来なかった。どころか、動画を観ながら自慰に耽ってしまい、激しい後悔に襲われることすらあった。


 誰かに相談したかったが、誰にも相談出来なかった。誰に言ってもまともに聞いて貰えるとは思えない。あの動画を見せてしまえばいいのかも知れなかったが、何故かそれは躊躇われた。彼女は僕に助けを求めてきたのだ。その彼女の痴態ごと誰かに晒すのは、ちょっとした嫉妬心もあって出来ずにいた。


 どうにも出来ない閉塞感と無力感に、僕は少しおかしくなりかけていたと思う。
 少女に返信しようとして、それも躊躇われてそのままになって、けれどきっぱり忘れることも出来ずに一ヶ月程経過した頃だろうか。
 彼女の方からメールが来た。


3へ続く

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