4.車窓と退屈と東京と。
我々は妥協を重ねながら生きている。何かやりたいことをあきらめたり、何かやるべきことから眼を背けているだけではない。どういうことなのか。なぜこうなってしまうのか。何か違う、いや、そうじゃないんだ……。そのように感じられる何ごとかについて、「まぁ、いいか」と自分に言い聞かせながら、あるいはむしろ、自分にそう言い聞かせるよう心がけながら生きている。この本は、そうした妥協に抗いながら書かれた。自分が感じてきた、曖昧な、ボンヤリとした何かに姿形を与えるには、それが必要だった(國分功一郎