超個人的「このYouTubeチャンネルがすごい!」大賞
昨年から急にOB選手がYoutubeをはじめるケースが増えた。
現役ながらダルビッシュ選手も急にYoutubeをはじめ、何度もネットニュースで取り上げられたりしている。
しかし、普段あまりYoutubeを見ない私はこの状況を長らく静観してきた。
特にOBのYoutubeチャンネルはゲストを呼んで昔の話をする形式のものが多い。
それはそれで面白いのだけど、話題になったものをたまに見る程度でほとんどチャンネル登録などもしたことがなかった。
どちらかといえば、選手同士のトークよりも試合の解説コンテンツに大きな可能性があると思っているのだけど、これは各球団の協力が必要になるのでOB Youtuberのマーケットが成熟するまで、もう少し時間がかかるかもしれない。
そんな中、最高の動画が彗星のように現れた。
アライバコンビの復活である。
(ちなみに中日ユニのアライバがまた見られるなんて感無量すぎて泣いた)
井端さんのYoutubeチャンネルの存在は知っていたけれど、前述の通りYoutubeに興味の薄い私はほとんどスルーしてしまっていた。
しかし井端さんが守備を実践的に語る回ということで、守備好きとしては是が非でも見なければ!と喜び勇んで見たらこれがものすごい神動画だった。
このシリーズは今のところ7本上がっていて、ほとんどの動画が2人の実際の動きをみながら守備について学ぶことができる。
ちなみにアライバの2人は、現在それぞれ中日一軍、侍ジャパンでコーチとしてプロの選手を指導している立場だ。
プロの選手に教えているような守備の極意が無料で見られるなんてとんでもない時代である。
まずこの15分ちょっとの動画だけで学びのポイントがありすぎた。
特に井端さんが強調していたのが捕球時の右足体重の維持。
「ゴロは正面で捕れ」と他のOBもよく言うけれど、その理由として
・スローイングまでの時間の短縮&安定性アップ
・捕球時の稼働領域が広がる
の2つをあげていたのがとても理論的でわかりやすかった。
守備は左手で捕球して右手で投げるのが動作の基本なので、常に右足を軸に考えるという点は動画の中で何度も語られていた。
そして、軸足の重要性は「守備は腕を使わず足を使う」という話にも現れていた。
腕を使って無理に打球をとろうとするのではなく、足を使ってボールが自然と腕に「入ってくる」状態を作ること。
レジェンドの技は、実はこんなにもシンプルな動きで構成されているのかと驚かされた。
また、こうした理論は野球をやっている人だけではなく観戦している側からしても有益な情報である。
守備を見る際にどこに着目すればよいかがわかりやすいからだ。
私も今後守備を見る際は捕球時の重心の位置をしっかりチェックしていこうと思った。
そしてこれはファン必見のアライバノック動画…!この動画だけあと2時間くらい見られると思った。井端さんの動きのなめらかさが本当に美しくて、人間国宝に指定したいレベル。
これも学びがぎゅっと詰まっていて、この2人の指導を受けた選手は成長するだろうなと思った。
中日に入団した選手(特に内野手)は軒並みGG賞が獲れるレベルで守備力が上がるのだけど、それはアライバの2人が作り上げた伝統に根ざしているのかもしれない。
特に面白かったのは「グローブの動きが小さいほどいい選手」という話。
私は普段試合を見ているとき、打球に飛びついてファインプレーにするよりも微妙なバウンドの打球をきちんと正面からとって正確にアウトにするシーンの方が好きなのだけど、たしかにそういう安定したプレーができる選手はグローブの動きが小さい。
腕ではなく、足を使って全身で打球を「迎え入れる」姿勢をつくること。
それこそが守備を安定させるポイントなのではないかと思う。
また、動画を見ながらアマチュアとプロの間にある大きな溝も感じた。
以前、松坂さんも「アマチュア野球の常識がプロ野球では非常識」と書いていたけれど、プロでは当たり前のこともアマチュアの世界ではなかなか浸透していないことがある。
これは野球特有の「プロがアマチュアに指導をしてはいけない」という規程が影響している気もするけれど、こうした元プロ野球選手の情報発信によってその溝が埋まっていくのはとてもよいことだと思う。
イバTVの中でも、「捕球できないのに無理に前で捕ろうとするから余計にとれなくなる」「前にでるのは1年に1歩のペースでいい」という話がでてくる。
ボールは前にでて捕れ、というのは高校野球でもよく言われる基礎のようなものだと思っていたけれど、たしかにプロの選手は必要以上に前で捕球したりしない。
アライバの2人もこれに気づいたのはプロに入ってからで、自分たちなりに工夫してたどり着いた結論だと言っていたけれど、こうしたプロの気づきがもっと世に広まることで、野球界全体のレベルがさらに上がるのではないかと思う。
そして個人的に一番感動したのがアライバの二遊間連携の動画。
「美しい」以外の感想が出てこないほど美しい2人の連携。
まだ現役でアライバの二遊間いけるんじゃないだろうか…!
特に最後の方で出てくる井端さんの背面トスはもはや芸術の域。
さすがに実戦で使ったことはないらしいけれど、このくらい自由自在にボールを扱えてこそプロなのだなと思う。
そして何より、あんなところからくる球を当然のように受け止められる荒木さんもすごい。
「足の使い方と体の使い方で、あそこからくるだろうなと思った」
という言葉に、相手への理解力と対応力という二遊間守備の極意を見た思いだった。
そしてこの動画では「セカンドベースのさばき」という地味に重要な動きが出てくる。
この動きがスムーズでないとスライディングしてくるランナーと接触してしまうのはもちろん、とれるゲッツーもとれなくなってしまう。
しかし普段地上波のテレビで披露される守備の解説は捕球や投球が中心なので、さばきの解説を見たのははじめてだった。
テレビ番組と違って、「枠」という概念なく自由に作ることができるYoutubeならではのテーマだと思う。
また、「トスは早めにボールを見せてあげる」という井端さんの考え方も面白かった。
普段の試合で選手たちの守備を見ていると、グローブで捕球したままトスするプレーをみかけることもある。特にメジャーではそれが顕著だ。
もちろん状況にあわせてそうせざるをえないときもあるとはいえ、基本は早めにボールを見せてあげて相手が捕球をしやすい球を投げてあげること。
こうした外側からはわかりづらい小さな工夫が、ノーエラーという偉大な記録を作っていく。
前述のとおり、私は守備においてアクロバティックなプレーをあまり好まない。
それよりもアライバコンビのように、実は難しい打球を難なくさばくプレーに感動を覚える。
守備において「地味であること」は、いい選手であることの証なのではないかと思うのだ。
なぜ野球未経験のファンこそ守備をまなぶべきなのか
守備が好きと話すと、毎回「渋いね〜」と言われる。
しかし、野球未経験者が野球観戦を楽しもうと思ったら、守備をまなぶのが一番わかりやすく楽しめるはずだと私は思っている。
野球の華といえばピッチャーとバッターの駆け引きだが、配球を読むにはある程度パッと見て球種を理解する必要がある。
だが、未経験者にとって球種を見極めるのは至難の技だし、たとえわかってもなぜこの球種が打ちづらいのか、なぜこう配球を組み立てると効果的なのかが体感として理解できない。
私はもう15年以上野球を見ているけれども、解説がなければ球種を当てるのはほぼ不可能だし、「一球外に外す」「際どいコースをつく」といった独特の表現が意味するところもよくわかっていない。
配球を理解するには何パターンもの組み合わせを頭にいれなければならないため、未経験者が楽しめるようになるには時間も労力もかかる。
一方で、守備は成功と失敗が素人目にもわかりやすい。
ボールかストライクかを見極められるようになるには時間がかかるが、アウトかセーフかは素人でもすぐにわかる。(もちろんときどき際どい判定のときもあるけれど)
難しいことはわからなくてもライナー性のあたりをキャッチすれば盛り上がるし、ダブルプレーの美しさもわかりやすい。
その上で、守備陣形の考え方やボールのさばき方を自分なりに深めていけば、野球という競技を見る幅が広がる。
特に女性ファンはほとんどが野球を経験したことがない。
選手が好き、応援が楽しいという状態から一歩進んで「野球が楽しい」という女性を増やすには、イバTVのような守備解説コンテンツの充実が鍵になるのではないかと思う。
今回のアライバシリーズがとても面白かったので、今後は守備をやる人だけではなく見る人のための動画も作ってもらえるといいなと思っている。
今後の動画の充実に期待!!!!
▼野球サークルもやっています。