誰も教えてくれないビジネス的「女性誌」の読み方
『女性誌は、最高のマーケティングの教科書だ』
中学時代から毎月10冊近く女性誌を読み続け、主宰コミュニティ『消費文化総研』では毎月雑誌を深める会を開催しながら、最近改めてその確信を深めている。
特にVERYはいつ読んでもまなびの多い雑誌で、あまりに好きすぎて以前VERYの読書会も開催した(ちなみにこれがきっかけでコミュニティの定例会として雑誌の読書会をやりはじめた)。
女性誌の何がそんなに面白いのか。
それはある特定ターゲット内のトレンドが1冊の中でコンパクトにまとめられている点にある。
特に最近はSNSによって情報が増えすぎた上に分断が進み、自分が属するクラスタ以外のトレンドを知ることが難しくなってきた。
そんな中で雑誌は自分のクラスタ以外のトレンドを知る重要な情報源になりつつある。
さらに雑誌はクラスタの可視化にも役立つ。
例えば『ママ』と一口に言っても、所得や居住地、働いているかどうかによって趣味嗜好は大きく変わる。
VERY、mama girl、サンキュ!、martはどれもママというターゲット属性こそ同じだが、読者の好みは大きく違う。
好みが違えば誌面の作り方も紹介するブランドやアイテムも大きく変わる。
こうして横断的に雑誌を読むことで特定属性の中で好みがどうセグメントされているのか、そしてその中で何が流行っていてどんなライフスタイルがいいとされているのかを理解することができる。
2年前に書いたカラー分類の記事はまさに長年かけてあらゆる雑誌を横断的に読んできた中で、私なりに女性の好みを分析した結果だ。
また、雑誌は中身と同じくらいその『作り方』の変化も世相を表している。
例えばJJは8月号あたりから雑誌の作り方が『みんなの中で流行っているものまとめ』の形式になった。
現在の大学生はみなデジタルネイティブで、SNSなどを駆使するもっともトレンドに敏感な層だ。
これまで雑誌は『これからこれが流行りますよ』と読者に教え、自らトレンドを作る役割が大きかったが、自然発生的にトレンドが起き、第一線でトレンドを追っている彼女たちに対して押し付けのトレンドは通用しない。
だからこそすでに流行っているものを読者にヒアリングして情報をまとめ、キャッチアップしやすくする方向に振り切ったのではないかと個人的には読んでいる。
特にInstagramは検索性が弱く、アルゴリズム性が強いため、今流行っているものを網羅的にチェックすることが難しい。
ファッションからコスメ、カフェまであらゆる分野で『今のトレンド』をまとめてくれる雑誌という存在は、情報が散らばる時代に生きるデジタルネイティブにこそ響くのではないかと思う。
また、もうひとつ最近注目しているのがminaだ。
こちらも今年のはじめ頃に作りがガラッと代わり、雑誌の全体テーマとして『週末』を押し出すようになった。
さらに行きたい場所とファッションを紐づけて提案し、週末を楽しむためのTIPS週という作りになっている。
週末というテーマが面白いのは、読者ターゲットを広げる意味があるということだ。
minaがターゲットにしている25歳前後はちょうど大学生と社会人が混ざり合う年齢で、どちらかに振り切らざるを得ないためどうしてもターゲット層が狭くなる。
しかし『週末』はどちらの属性でも関係なく参考にできるため、読者層を幅広くとることができる。
雑誌としては25歳をターゲットにおいているものの、大学生でもアラサーでも真似しやすいテイストなので実際の購買層は他の雑誌と比べて広いのではないかと思っている。
という風に、雑誌の作りからも社会の変化を知ることができるのが雑誌の面白いところだ。
ビジネス書と違って毎月出版されるため変化させやすく、ひとつのタイトルで何年も続くため過去の号と比較してその変遷も辿りやすい。
マーケティングを考える上で、これ以上に面白い教科書はないと思う。
一方で、こうしたビジネス視点で雑誌を読み解くポイントはこれまであまり語られてこなかった。
そこで今回、個人的にずっと話を聞いてみたいと思っていた2人にそれぞれの視点から女性誌の読み解き方を聞くイベントを開催することになった。
当日はそれぞれの雑誌の読み方や雑誌業界の変化、雑誌から感じる購買行動の変化などを中心に話を聞いていきたいと思っている。
【イベント概要】
▶︎日時:10/19(土)13時〜17時(二部制)
※一部のみ、二部のみの参加も可能です
▶︎場所:青山ブックセンター本店イベントスペース
▶︎人数:50名
▶︎スケジュール
12:30〜 開場
13:00〜 「ビジネスパーソン的雑誌の読み方と雑誌の未来」(ゲスト:桜川和樹さん)
14:30〜 休憩
15:00〜 「VERYから読み解くママ市場の現在地」(ゲスト:渥美まいこさん)
16:30〜 終了(17時完全撤収)
▶︎チケット
・1日通し券(VERY最新号付き) ¥4,500
・一部のみ参加券(VERY最新号付き) ¥3,000
・二部のみ参加券(VERY最新号付き) ¥3,000
また当日は青山ブックセンターのイベントスペースで開催するので、雑誌の棚の分析や気に入った雑誌の購入もできる。
私は昔から雑誌が好きだけど、『作る』より『読む』の方が好きだ。
作られたものを読んで考察し、自分なりの結論に昇華させるというプロセスの面白さを1人でも多くの人に感じてもらうためにも、今回のイベントも含めこれから女性誌研究の取り組みを盛り上げていきたいと思っている。
イベント参加申し込み:https://magazine-1019.peatix.com/view
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