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店舗が担う大きな役割

「小売業の要諦は、商品管理を含む流通設計である」と常々私は考えてきた。
どんなにセンスや情熱があっても、品切れを起こさず効率的に商品を届ける仕組みが構築できなければビジネスとしては成り立たない。

ブランドやお店の立ち上げは、一般にイメージされている以上に計数管理との戦いだ。

先日コミュニティ内で「商業経営の精神と技術」を題材に読書会を開催した際、物流面におけるECの非効率性が話題にあがった。
その一連のやり取りの中で、今後もしかすると店舗の役割に「揺り戻し」が起きるのではないかと気づいた。

上記の書籍は初版が30年前に書かれたものなので、当然ECや個人宅配への言及はない。
しかしまるで店舗のメディア化を予見していたかのような忠告が記されている。

「店舗は情報の発信地である」と最近、さかんに言われているが、それはまるっきり間違いである。情報発信はチェーンストア経営システムが実現されて、本当に生活提案のできる商品開発が企業として可能になった場合に限るのである。
江戸時代から明白だったのは、店舗現場はお客から情報を受信するところ、ということである。

この箇所を読むと、「店舗のメディア化」に近い言説は何十年も前からあったことがわかる。
一方で、これはあくまで売買の場所がリアル店舗に限定されていた時代の話でもある。

ECが「売る」という役割を担うようになってきた今、リアル店舗が情報発信やコミュニティ育成の場になっていく流れは不可避であると私は考えている。

しかし店舗の役割はそれだけではない。
顧客の利便性を高めるためには、ECだけでは限界があるからだ。

D2Cが百貨店やモールに出店しはじめたのも、単にオンライン広告が飽和してマーケティングコストが高騰しているからではない。
直接販売は一見効率的なように見えて、実は物流面を考えると非効率であることが多い。

Nordstromをはじめ、小売業が中小型店の出店を増やしているのも、オンラインでいつでも買い物ができる時代だからこそ、逆説的に実店舗を増やすことが購買体験の利便性向上に寄与するからではないかと思う。

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