サイジングの肝は「ぴったり感」ではない
先日発表されたZOZOの新展開。
スーツへの参入とグローバル展開のニュースは、ファッション業界だけではなくあらゆるところで話題になっていました。
ZOZOSUITで数値を測定し、体型にあったカスタムオーダーを実現するZOZOに対して、賛否両論様々な意見が飛び交っています。
私は今後『サイジング』はファッション領域においても重要なポイントになっていくと思っているのですが、そこでよく話にでてくるのが
『みんながみんな "ぴったり"を好きなわけじゃなくない?』
という意見。
この議論は半分正しくて、半分は的外れだと思っています。
そもそも日本人は標準体型の人が多いため、フリーサイズが着られない規格外の人たちはマイノリティとして不便を強いられてきました。
私が百貨店にいた当時も小さいサイズと大きいサイズは安定的にお客様がついており、自分のサイズにあった洋服の需要を痛切に感じたものです。
もちろん国内で展開するだけであればフリーサイズやS・M・Lといった簡易的なサイズ展開でも問題ないのですが、こんな規格が通用するのは日本だけといっても過言ではありません。
グローバル展開を目指すなら、より細分化されたサイズ展開が必要なのです。
さらに言えば、個人的にずっと疑問だったのが、背が低い人が必ず細身なわけではないし、背が高い人が全員横幅もあるわけではないということ。
S・M・Lのスリーサイズ展開だけでは、小柄だけどぽっちゃりした人や細身で高身長の人をカバーできません。
つまり、おおまかなサイズ展開だけでも本来は9種類必要なのであり、現在はこの9種類すらも実現されていないということ。
さらに手足の長さや胸囲、腹囲まで含めれば人の体型というのは工業的な規格に収まるものではありません。
オーダーメイドを『自分の体にぴったりはまるもの』と捉えると違和感がある人も多いと思いますが、サイズ展開がより豊富になるという感覚の方が近いのではないかと私は思っています。(実際、ZOZOは「パターンオーダー」という形式をとっていますし)
そしてサイズが変わるということは、単に数cm短くしたり幅を縮めたりすればいいわけではありません。
例えばロングスカートひとつとっても、女性誌でよく『小柄な人の着こなし』『長身の人の着こなし』が載っているように、体型によって最適なバランスは異なります。
それに加えておなか周りやおしりの大きさにもあわせてアイテムが作られることで、あらゆる体型の人が一番綺麗に見えるアイテムを選べるようになる可能性が広がっているのです。
これはサイズがぴったりであることとはまた別の話です。
もちろん現時点ではまず『ぴったり』という部分に重点がおかれていますが、データの研究が進んでいけば華奢な人がふっくら見えるにはどんなサイズ感がいいかとか、下半身のボリュームに悩みがある人はどんな着丈がいいかというところまで提案してくれるようになるかもしれません。
そう遠くない将来、自分の体型のアバターに既製品をあててみてバーチャル試着ができたり、幅をゆったりとりたいといったオーダーができたりと柔軟に対応できるようになっていくのではないかと私は思っています。
サイジングにおいて重要なのは、『体にぴったり』なことではなく気分やセンスも含めた『その人にぴったり』であることだからです。
そしてZOZOの強みはブランドではなくモールをもっていること。
ブランドはそれぞれ異なるサイズ規格を持っており、A店とB店のMサイズが実際はワンサイズ分違うということもザラにあります。
こうした不便を解消するためにVirtusizeなどアイテムのサイズ比較を行うサービスもでてきていますが、この機能がZOZOにつけば、ECモールとしても強さをもつことができるわけです。
(出典:Virtusize)
また、ZOZOがもっているコーディネート共有アプリ『WEAR』では現在も身長が記載されていますが、これもゆくゆくは自動で自分の体型に近い人が表示されるようになるんじゃないかなあと思ったり。
そうして将来的には全員が自分にあった『マネキン買い』ができるようになるのかもしれません。
タイトルで『サイジングの肝は「ぴったり感」ではない』と書きましたが、私はサイジングの肝はそのバリエーションだと思っています。
これまでは仕方なくMサイズ、フリーサイズに押し込められていた人たちが、本当に自分の体を綺麗に見せるアイテムに出会うこと。
その一歩めとして『体にぴったりなアイテム』を推していたとしても、最終的な狙いはそこではないということです。
とはいえ、世界を見渡してみればカスタムオーダーのD2Cは山ほどありますし、中でもスーツやドレスシャツで成功しているブランドはすでに日本にも複数あります。
さらにZOZSUITの配送遅延や測定の普及への懸念など不安要素を数えだしたらキリがありません。
こうしたリアルプロダクトはマス層まで広がるのに一定の時間を要するものなので気長に見つつ、いちいち不安要素を指摘してまわるよりも自分だったらどうするかを考える方がより建設的なのではないかと思う今日この頃です。
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今日のおまけは、ZOZOSUITを普及させるために私ならどうするかの話。
相変わらずの適当予測なので話半分でお読みください。笑
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