人が『成長する環境』とは何か
まだ会社員だった頃に読んだ、高木新平さんの「誰も教えてくれなかった「フリーランスは厳しい」ではなく「甘い」という真実。」という記事。
その当時はまさか自分がフリーランスになるとは思っていなかったのでなんとなく読み過ごしていましたが、自分自身がフリーランスになってみて、そして様々なプロジェクトを通して「チームを作る」を経験してみて、最近改めてこの記事に書かれていることを反芻していました。
フリーランスは甘い。
私も1年弱フリーランスをやってみて、この記事の指摘の鋭さを痛感しました。
特に、「お金を払うから、期待するのではなく、何も言わない。」という話は、耳が痛いけれど身に覚えがあることばかり。
「ジャンプすれば届くかなというボールは投げない。でも一度でもボールをキャッチし損ねたら終わり。しかしそれはフリーにはわからない。発注主は自分たちの経験の糧にはするが、わざわざ伝えないのだ。育てる義務はない。お金を払っているから期待して色々言うのではなく、お金を払っているからこそ何も言わないのだ。残酷な話だけど。」
長期的な視点で自分のキャリアを構築するためにフリーになったはずが、来月の売上のために "今"の時間を切り売りしている感覚。
フリーランスを経験したことがある人なら、ほとんどが共感できるものではないかと思います。
ちなみに、フリーランスは納期に遅れても、期待通りのクオリティで仕上げられなかったとしても、意外と「大丈夫」なものです。
もちろんその瞬間は怒られたり詰められたりするだろうけど、その次にまた嫌な思いをすることはありません。
なぜなら、もう二度とその仕事は回ってこないから。
そうやって緩やかに自分の中の「まぁいいや」の基準が下がっていくことで、その基準を認めてくれる会社としか付き合えなくなっていきます。
ちなみに、フリーランスとして長年活躍している人たちを観察していると、異常なほどにストイックな人たちばかりだということに気づきます。
「まぁいいや」が自分の首を締めることをよく理解しているからです。
これが会社員であれば、周りのみんなが「この人の戦力をあげないと自分が困る」という意識をもっているので、毎回注意され、矯正することがほとんどですが、フリーランスの場合はその仕事は「他の人に回すだけ」です。
例えば、一緒に仕事をしている人に対する悩みを相談したとき、その対象が社員であればみんな再教育の方法をアドバイスしてくれますが、対象がフリーランスだとわかった瞬間「別の人いれたら?」「他の人紹介しようか?」という方向のアドバイスになるのが一般的です。
自分もこうやって評価されていたにも関わらず、独立してこの方自覚がなかったのだと気づいた瞬間のことはいまだに覚えています。
独立したら市場に晒されるから成長すると思っている人は多いと思いますが、実際はスタートアップの中でIPOする企業がほんの一握りしかいないように、『市場に晒される』というレベルで評価される人はほんの一握り。
それでも会社員時代の給料と比べれば数倍稼げるので、『あの頃に比べれば成長している』と思い込んでしまっているだけなのです。
一方で、じゃあ会社員が全員成長できる環境なのかというと、本人のモチベーションと会社の仕組みが噛み合わなければ結局同じこと。
つまり、『今きたのが背伸びしないと届かないボールかどうか』は、常に自分で点検していくしかないのです。
ただ、会社員である利点は、身内として評価してくれる人がいることだと思います。
私はずっと人が成長する環境は『市場に晒されること』だと思っていましたが、実際は『厳しい評価をしてくれる人をそばにおくこと』なのだと、会社員に戻った今改めて冒頭の高木さんの記事を読んで気づいだのです。
ということは、フリーランスも、フリーランス同士で四半期ごとに集まってお互いを評価したり、次の期に向けての目標を設定しあったりする仲間をもつことで、『厳しい』環境に身を置くことができるのかもしれません。
そして人はそんな存在を『師匠』や『メンター』と呼ぶのかな、とも。
これはきっとどんなに昇進しても、自分で会社を作っても同じことで、常に自分を律してくれる人を側においておくことは、弱い自分がだらけてしまわないための特効薬なのではないかと思います。
私は1年弱のフリーランス生活を通して、家族同然に心配してくれたり、愚痴や悩みを受け止めてくれる心理的安全性が高い場所を見つけることができました。
だからこそ次は、定期的に厳しい評価をして叱咤激励してくれる人を身近に作ることが新しいフェーズにいくために必要なことなのかもしれない、と思っています。
もちろん全員がバリバリ意識高く成長ばかりを目指す必要はありませんが、自分の目指したい世界とやり遂げたい信念があればこそ、ぬるま湯ではなく厳しい場所に身を置き続けることが必要なのだと感じるここ最近です。
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