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「下積み」が必要な理由

以前「"インターン"から"アシスタント"の時代へ」という記事で、これからは「何を」やるかより「誰と」やるかの時代だからこそ、ベンチャー企業にインターンとして入るよりも、個人のアシスタントになる方が得るものが多いのではないか、ということを書きました。

これは向き不向きのある話ですし、属人性も高いので、企業のインターンではなく個人のアシスタントになることを選ぶかどうかは慎重に判断して欲しいのですが、どちらにせよ共通しているのは、初めは誰にでもできるような雑用からはじめることになるということです。

例えばライターになりたくて有名なライターの人のアシスタントになったとして、実際に文章を書けるようになるまでにたくさんの雑用を経ることになると思います。

入稿作業、記事に使う写真や資料の整理、テープ起こしなど、はじめに想像していた「書く」という仕事とは程遠いものが仕事の大半を占めるかもしれません。

そのことに不満を持って辞める人も多いのではないかと思います。

実際、私も昔は大企業に新入社員として入った時、生意気にも「なんでこんなアルバイトでもできるような仕事をやらないといけないのだろう」と思っていました。

でも、最近社会人として「中堅」と呼ばれる立場になってきて思うのは、特別な才能がないかぎりは誰にでもできる雑用から信頼を積み上げることでしか、自分にチャンスは回ってこないということです。

学生時代に自分で起業するような人はほんの一握りだし、小さい頃から注目されるほどスポーツやアートの才能がある人もごく稀な存在です。

ほとんどの人は、自分の思う「やりたい」ことと、実際に「できる」ことが大きく乖離したまま社会に出ることになるのです。

そしてまずは誰にでもできるような、失敗しても大したことない雑務を課せられ、そこで積み上げられた信頼をもとにより大きなチャンスが巡ってくるようになるのです。

もちろん、中には言葉づかいや服装などが奔放でも許されている人もいますが、それはあくまでその人の才能や過去の実績によって、「常識」という最大公約数のルールから逸脱してでも「この人と仕事をしたい」と思わせる力があるからに他なりません。

また、実際に仕事をしてみると、一見自由人に見える人の方がきっちりレスポンスをくれたり、いざというときの気遣いがしっかりしていたりと、人の心を掴むポイントを抑えていることが多いものです。

そうした天賦の才を与えられなかった私たちは、まず正しい言葉遣いやスケジュールを守ること、失敗した時のリカバーの仕方などを習得することで、「この人になら任せられそうだな」という信頼を積み重ねていくしかありません。

小さな信頼の積み重ね無しに、大きな期待は生まれないからです。

とはいえ、中にはアシスタントを使い潰したり年下に敬意を払えないタイプの人、10年間は「若手」扱いの企業など、早々に見切りをつけた方がいい場合も多々あります。

そうした悪い人たちを見分けるコツは、「自由研究を提出してみること」だと思います。

本当に人を育てる気持ちがあって、若手に期待している人は、アシスタントが自分の興味のあることを勝手に深掘りして企画に落としてきたり、一生懸命に発信している姿を見れば、必ず何らかのかたちでサポートしようとしてくれるはずです。

もしその人自身のフィールドの中で叶えてあげられなかったとしても、誰かを紹介したり、資金面でサポートしたり、近い方向の仕事を振ったり、いくらでもサポートの方法はあるからです。

逆に、若手のがんばりを「そんなの大したことない」と歯牙にもかけないような人や組織は、人を育てる力が無いので早々に手を切った方がよいと思います。

まずは、課せられた目の前の仕事によって信頼を勝ち得ること。
そして、自分のやりたいことを根気よく伝えてサポートしてもらうこと。

こうした下積み期間は一見遠回りに見えますが、長い目で見れば信頼という固い地盤を作り上げる方が、自分の夢を叶える近道なのではないでしょうか。

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最所あさみ
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