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このベテランが尊い 〜2020夏〜

開幕の日を迎えるのも、これで9度目になる。
当時期待の新人と言われていた選手はあっというまにチームの中堅を担うようになり、あの頃スターと呼ばれた選手の中にはすでにユニフォームを脱いだ人も増えてきた。

自分のプロ野球ファン歴が長くなるほど、好きな選手の平均年齢も上がっていく。気づけば、好きな選手のベテラン率が年々上がっている。

ベテラン勢が活躍すると嬉しいのは、全盛期の思い出があるからだけではない。
身体能力が落ちてきても、技術と経験で若手に負けることなくチームを支える姿に、自分が目指すべき理想を感じるからなのだろうと思う。

「年齢を重ねても」ではなく「年齢を重ねたからこそ」。

私の愛するベテランたちは、全員「今が最高」と思う選手ばかりだ。

永遠のプリンス・能見篤史

私の愛するベテラン筆頭といえばノウミサン。

この写真、なんと入団当時ではなく今シーズンに入ってからの近影である。
今年40歳になるとは思えないノウミサンの若々しさは、野球ファンの間でも有名だ。

ノウミサンといえば、「虎のプリンス」と呼ばれた端正なマスクに加え、鶴のように美しいワインドアップが代名詞だった。

中継ぎに転向してからはフォームを変更したためこの美しい姿は見られなくなってしまったけれど、マウンドに立つ姿の涼やかさは変わらない。
打たれても抑えても、少しも表情を変えることなく淡々と球を投げる。
ノウミサンがマウンドに立つと、その空間だけ静謐な空気をまとっているように見える。

若手捕手と組んだとき、そこに投げたら打たれるとわかっていてもあえて首を振ることなくサイン通りに投げる。
あれこれ言葉を尽くして説明するのではなく、経験によって学んでほしいという姿勢が、とてもノウミサンらしいと思う。

ノウミサンは野球以外のエピソードにも事欠かない。

プロに入ったばかりの頃、体重を増やすために練習が終わるたび奥さんが握ってくれたおにぎりを食べていたエピソードも有名だ。

ノウミサンはいつも地に足をつけて、淡々とアウトを重ねていく。

プロ入りの年齢も遅く、活躍しはじめたのが30歳を過ぎた頃だったこともあって「遅咲きのエース」と呼ばれることの多いノウミサン。
彼が40歳になった今も第一線で活躍しているのは、どんなときもブレることなく自分がやるべきことを全うし続けてきたからなのだと思う。

ノウミサンがマウンドに立つと、こちらの背筋も伸びるような気がする。
彼が歩んできた実直な野球人生が、見る側にも自然と伝わるからなのかもしれない。

鷹のベテランエース・和田毅

ノウミサンと並んで大好きなベテランピッチャーが和田毅だ。

九州で育った私にとって、「ソフトバンクホークス」よりも「ダイエーホークス」の方が馴染み深い。
もう当時のダイエー戦士は数えるほどになってしまったけれど、いまだに第一線で活躍する和田の姿の見るたびにダイエー時代を思い出す。

オレンジと緑のメガホンを持って、福岡ドームへ応援に行った日のこと。
子供の頃は選手のことなどよく知らずに応援していたけれど、そんな私でも覚えているくらい和田毅は人気選手だった。

あの頃のスターがいまだに活躍しているのを見るのは、なんだか不思議な気持ちだ。
和田も同じく体型も顔も全盛期からほぼ変わっていないので、2人とも年をとらない人種なのだろうか、と思うことがある。

そして和田もベテラン投手として、若手捕手を育てる役割を担ってきた。

和田もノウミサンも、実績だけでなく人格が慕われているからこそ、こうした教育係に任命されてきたのだろうと思う。

インタビューを見ていても、二人ともいつも穏やかで思慮深く、それでいてちょっと抜けているところもあって、若手からも慕われている。

2人ともそう遠くない未来に選手としての限界を感じる日が来るかもしれないけれど、指導者としての能力も高い二人だと思うので、長くプロ野球界にいてほしいなと思う。

おちゃめ100%・亀井さん

通常、ベテラン選手を応援するのは同年代の男性ファンが多い。
女性は若手のフレッシュな選手に流れやすく、特に若い女性がベテランを推すことは稀だ。

しかし亀井さんはなぜか、異様に若い女子人気が高い選手だ(と思う)。

東京ドームで試合を見てきた体感からいうと、坂本の次くらいに黄色い歓声が多いのが亀井さんのような気がする。
亀井タオルを掲げているのも、若い女性ファンのことが多い。

なぜ亀井さんはここまで女子に人気なのか。

私も気づけば亀井ギャルの仲間入りを果たしていたので自己分析すると、亀井さんは「おちゃめ」と「いぶし銀」のバランスが絶妙なのだと思う。

決して派手な選手ではないけれど、ここぞという場面で試合の流れを変えるきっかけを作ってくれるのは亀井さんだったりする。

そして亀井さんといえば有名なのが「前のバッターが敬遠された後の怒りのホームラン」。
ベテランでありながら、時に若手のように感情を前に出してプレーする姿に、永遠の少年を感じて落ちてしまう女子が後を絶たない。

さらに亀井さんは坂本と並んで「巨人の二大いたずらっこ」と呼ばれるほどおちゃめな選手でもある。
公式インスタやYoutubeでも他の選手にちょっかいを出したり、坂本とコンビで茶々を入れにいったりしていた。
「もう40歳やで〜!」といいながら、帽子をぴょこぴょこしてくれたりもする。

亀井さんを見ていると、野球少年はいくつにもなっても野球少年なのだなあ、と思う。
そして楽しそうに野球をする姿が、やっぱり好きだなあと思うのだ。

元祖ミスタースワローズ・エイオキ先輩

スワローズにとって、「1」は球団を象徴する背番号でもある。
「ミスター・スワローズ」と呼ばれるその番号を、今の山田哲人の前につけていたのがエイオキ先輩こと青木宣親だ。

青木といえば、奥さんの佐知さんの存在なしには語れない。
ときにはプロ野球選手の妻として、ときにはいちヤクルトファンとして、いつも明るく発信する佐知さんさんのツイートに励まされてきたヤクルトファンも多い。

プロ野球選手の奥さんが、SNSで夫の話題を出すケースは意外と少ない。
下手に言及するとファンから不興を買うこともあるし、自分の仕事に影響がでるケースもあるからだ。

しかし佐知さんはいつも絶妙なバランス感で、ほっこりする青木家の日常を伝えてくれる。

何度も死球を受けて怪我に悩まされたり、メジャーでは1年間に3度も所属チームが変わったりと苦労してきたベテランの日常が、幸せに溢れたものでよかったと佐知さんのツイートを見るたびに思う。

「よい父、よき夫」としての一面を垣間見ることができるのも、ベテラン勢ならではの魅力である。

番外編:ハマの18番を背負い続ける男・三浦大輔

スターは、引退した後もずっとスターであり続ける。
試合中にコーチや解説者としてその姿を見かけるたび、現役時代の思い出が蘇る。

中でも、姿を見かけるたびにテンションが上がるのが番長だ。

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(写真:ハマの番長ブログより)

昨年はベイスターズの一軍投手コーチに就任し、投手がピンチに陥るたびマウンドに走っていく番長の姿を見て、選手そっちのけで「番長〜〜〜〜!!」と叫んだ回数は数知れず。
今年からは二軍監督として采配をふるう番長の姿を、一度くらい見に行けたらいいなと思っている。

番長の引退試合は、涙なしには見られなかった。

暗黒時代を支え続けたエースは、最後までハマのエースとしてマウンドに立ち続けた。
思うようには投げられなかったかも知れないけれど、マウンドで気丈に振る舞い続ける「18」の背中に、大人になることのかっこよさを教えられたように思う。

番長は、コーチになってからもずっと「18」を背負い続けている。
自分がエースナンバーに育てた「18」を、たしかに背負い続けている。

みんなの愛する番長が、いつか一軍監督として「18」をつける日を夢見て。

番長の生き様は、世の中のベテラン全員の心に火を灯し続けている。

番外編:引退しても仲良しアライバコンビ

ベテランのスターといえば、外せないのがアライバである。

すでに二人とも引退し、それぞれ解説者とコーチとして活躍しているが、アライバの守備は今も衰えることなく二遊間守備の金字塔として野球ファンの中に記憶されている。

私は特に井端さんが大好きで、現役時代にそのプレーを生で見られなかったことが野球ファン人生唯一の後悔だ。

二人の守備は、連携プレーの美しさはもちろんのこと、前提となる守備理論が確立されており、その極意は中日の二遊間に連綿と受け継がれている。
中日に入団した若手内野手は、気づけばアライバと似た体の使い方になっていく。
足をしっかり使い、ボールが磁石のようにミットに吸い込まれていく美しい守備。

その系譜を作ったのが、ベテランコンビのアライバだった。

荒木さんのことも井端さんのこともそれぞれ好きなのだけど、二人はやっぱりコンビを組んでこそその魅力が増幅すると私は思う。
どんなに長い間コンビを組み、唯一無二の信頼関係を築いていても、絶対にお互いを卑下することなく尊重し合う二人の姿は、私の理想のコンビ像だ。

現在、荒木さんは中日で内野守備走塁コーチとして活躍している。
そのうち井端さんもコーチや監督として中日に戻り、アライバコンビを復活させてほしいなあ、と勝手に夢見ている。

スターに憧れ、応援する気持ちは選手が引退したあとも終わらないのだ。

若手もいつかはベテランになり、引退する日がくる。
それでも彼らから多くを学び、元気をもらい、勇気づけられた日々は色あせない。

年を重ねるごとに応援したい気持ちが膨らんでいくような人たちに出会えたことを、私はとても幸せに感じている。

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最所あさみ
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