近くて遠い街、初めての上海。
中国茶器のかわいさに魅了されてから中国茶が好きになった。同時に「養生」をきっかけに薬膳や漢方、中医学を知るうちに、中国の生活文化にも興味を持つようになった。
何より日本の文化を学べば学ぶほど、私たちの文化は中国から強く影響を受けてきたのだと感じる。日本とは何かを考える上で、中国を知ることを避けては通れない、と思うようになった。
中国に行ってみたい。
お茶が好きだから産地にも行ってみたいし、昔ながらの暮らしが残る地方エリアにも行ってみたい。白居易好きとしては「香炉峰の雪」を見に廬山にもいつかは行きたい。
中国の中で行きたい場所はたくさんあるのだけど、まあまずは有名な大都市からだろう、ということで上海に行くことにした。
航空券をとってみて驚いたのだけど、東京から上海までは行きは4時間、帰りは3時間もかからないほどの距離。台湾や香港よりも断然近い。
それなのに、これまで旅行先の候補にあげたこともなかった。
物理的な距離は近いのに、心理的な距離は遠い。
台湾や香港よりも近いはずなのに、上海の街ははるかに「異国」だった。
心理的な距離の理由のひとつは、中国本土に行くには観光でもビザをとらなければならないことだろう。以前は日本人のパスポートならば観光ビザは免除されていたのだけど、パンデミック以降はビザ取得が必須になった。このビザ取得がとにかく大変で、私は何度か心が折れて「もう台湾か香港に行こうかな…」とよぎったほど。
そのうちまたビザ免除に戻るかもしれないけれど、今のところは中国本土に行くにはビザ取得を避けては通れない。普通の日本人が観光するだけなら「ビザを取る」という経験をすることはまずない。移住や留学でもしないかぎり、ビザ取得を一切することなく日本国パスポートだけで海外旅行を楽しんで一生を終える人の方が大半だろう。ゆえに、他国に比べてビザ取得のハードルが高いし、わざわざそんな労力をかけずとももっと手軽に行けて楽しい観光地の選択肢は無限にある。
日本人があまり行かなくなってしまったからかガイドブックやブログ、インスタの投稿といった情報が極端に少なくて、事前に情報を調べるのにだいぶ苦労した。
その情報の少なさもまた心理的距離の理由だと思う。そして事前情報が少ないからこそ、現地に行ったときの「異国」感が、より一層高まった面もある。
ビザ取得を含めた事前準備にはとにかく苦労させられたので、それはそれで別途記事を書く予定。これまで10カ国以上行ってきたけど、今回が一番大変だった。この大変さはコンテンツに昇華しないと元が取れない!!!!
行く前はあまりの大変さにげっそりしたけど、実際に行ってみたらそんな苦労なんてあっというまに回収できるくらい楽しかったし、学びの多い旅だった。
近いようで遠い、似ているようで違う。
同じ東アジアでも中国本土は他の地域とは違う独特さがあって、その違いが私にとってはとても面白かった。
大都会の上海は、日本以上に高層ビルがにょきにょき建っている。にも関わらず、東京より空が広かった。道がとんでもなく広い分、見通しがいいのだと思う。どの国に行っても島国はどうしても建物がぎゅっと密集している感覚があるし、特に日本は山も土地の起伏も多いのでずっと先まで見通すことはできない。
ロシアに行ったときも思ったけれど、島国育ちにとってどこまでも広がる平地の景色はやはりロマンがある。この視界の違いに、強く「異国」を感じる。
上海の歩道はとんでもなく広いのに、どのお店も路上に椅子を並べて店を拡張しているし、膨大な数のレンタル自転車が歩道を占拠しているし、その狭い隙間すらバイクや自転車がバンバン通る(なんならたまに乗用車も無理やりねじ込んでくる)のでぼーっと歩いてはいられない緊張感も独特で面白かった。
日本で免許をとると「歩行者優先」の意識を叩き込まれるけれど、中国、というか日本以外の国はだいたい「強いやつが優先」という至極プリミティブな原則が適用されているよなと思う。なので車が一番強くて、次にバイクや自転車。歩行者は一番弱い立場なので自分で自分の身を守らないと誰も配慮なんてしてくれない。
ちなみに上海では歩行者が青信号で横断歩道を渡っていても、人の波がちょっと途切れた隙間さえあれば車がガンガン突っ込んでくるのですごくカジュアルに轢かれそうになる。まったく油断ならない。
あらゆることがダイナミックな街だったけど、一対一のコミュニケーションになると想像以上に熱心に世話を焼いてくれる人情に厚い街だった。
上海ではまったくと言っていいほど英語が通じない。数字すら指のジェスチャーがなかったら通じていなかった感じがした。しかも私は見た目が完全にアジア人なのでまさか中国語が話せないとは思われなかったようで、とんでもない勢いの中国語で話しかけられ、その度に「我不会说中文(私は中国語が話せません)」を繰り返していた。
でも中国がすごいのは、こっちが中国語が話せないとわかると向こうがサッとアプリを出して英語に翻訳し、細かくたくさんの情報を与えようとしてくれるところである。日本だと自分がわからない言語で話す人に対してはどうしても恐怖を感じてしまうというか、最低限の情報が伝わればいいと思ってしまう人が多いと思うのだけど、上海の人たちは可能な限り中国語での接客と同じくらいの情報を与えてあげようと熱心に翻訳しながら接客してくれたのが印象的だった。
ちなみに今回は、上海から新幹線で30分ほどのところにある蘇州にも行ってきた。「水郷」と呼ばれる昔から運河が発達してきた街で、古い街並みが残る人気観光地だ。
古い街並みを背景に、漢服を着て昔風のヘアメイクをした若い女の子達があちこちで写真撮影をしていたのがかわいかった。若者を中心に中国の古き良き文化を見直す「国風」がトレンドだとは聞いていたけれど、京都の着物レンタルの10倍くらいの密度でみんなこの格好をしていて、その勢いもまた中国っぽくて面白いな〜と思ったり。
そして今の日本でオーバーツーリズムと言っているのなんてまだまだ甘い!と言わんばかりの人・人・人!!!!!上海でもだいぶ人の多さを感じたけれど、中国の観光地の人口密度の高さは日本の比ではないと痛感した。
でも土地そのものが広大で観光スポットもひとつひとつが大きいので、それだけの大量の人も捌いてしまう包容力があるのがさすが中国である。メインストリートは日本の満員電車かと思うほど人がいるけれど、少し外れるとまったく人がいない通りや開けた場所があって、不思議と圧迫感はなかった。
あと今回は本場で茶器と茶葉を買いたい!というのも旅の目的のひとつだったので、茶館に行ってはリットル単位でお茶を飲み、うつわ屋さんでは爆買いし、茶葉の市場にも赴いて業者のごとく買い付けてきた。
茶器や茶館に関する日本語の情報が少なくて苦労したので、お茶関連の情報はまた別途noteでまとめるつもり。
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今まで行った国の中でダントツ大変だったけど、同時にダントツで面白い国でもあった中国。
私はすごく楽しめたけど、じゃあ人にも勧めるか?と言われたら、ある程度旅慣れていて中国でやりたいことが明確にある人にしか勧めないかも、とは思う。事前準備も現地でも他の国より大変なことが多いし、台湾や香港のような万人ウケする感じではなく、好き嫌いがわりと別れる気がするから。
でも、ハマる人にはすごくハマる。それが中国本土の魅力だと思う。
今回の上海旅でだいぶ自信がついた私は、次はもう少し難易度が高いところに行ってみたい!と早速次に行きたい場所を調べ始めてしまっている。上海も楽しかったけれど、もっといろんな中国を見てみたい。一生かけても行き尽くせないほど、行ってみたいところがたくさんある。
ということで、初めての中国旅で学んだこと、書き残しておきたいこと、伝えたいことがたーーーーーーっくさんあるので、しばし上海旅の振り返りnoteにお付き合いください。5本くらい書けそうな気がするのでそのうちマガジンにまとめるかも。お楽しみに〜🇨🇳
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