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「チーム感」というブランド価値

SNSへの反応はその投稿単体への反応なわけではない。
顧客の体験価値への満足度やブランドへの信頼が表出した通信簿なのだ──。

ファンコミュニティやSNSの話をする際、最近は『SNS以外』での振る舞いの話も含めた全体設計の話をすることが増えました。

そんな私の考えをまとめたnoteを書いたのがちょうど一ヶ月前のこと。

このnoteの中で成功事例として出したのがアンダーアーマーさんの取り組みです。

#TeamUA というハッシュタグをユーザーが自発的に活用し、つながっていく様子はまさにファンコミュニティ×SNSの理想のかたち。
そして何より、契約しているプロスポーツ選手たちも率先して『TeamUA』として発信し、選手のファンにもその認知を広げています。

この取り組みについてnoteのイベントなどでお話いただいたことをベースに前述のnoteを書いたところ、『実はこんな背景もあるんです!』と熱いDMをいただき、私自身とても興味があったので改めてお話を伺ってきました。

選手との契約は"スカウト"

まずお話を聞いて驚いたのは、選手との契約を結ぶために担当者がスカウトのような役割を担っているということ。

プロ野球選手になれば全員がスポーツメーカーと契約できるわけではなく、契約はあくまでメーカー側からの打診ベース。
そのため、新人や二軍選手は契約していない場合もあるし、逆に注目の選手は中学や高校の時点でブランドもチェックしていることが多いのだとか。

またすでに契約しているメーカーがある場合は簡単に乗り換えることはできないため、伸びそうな選手を早く見つけて声をかけることが重要。

聞けば聞くほど、小売やメーカーというよりスポーツチームに近い動き方をされていて、お金さえ払えば簡単に契約できると思っていた私はまずその苦労話に衝撃を受けました。

実際にホークスの柳田選手と契約に至った際のエピソードも面白かったです。

プロスポーツ選手とスポーツメーカーの関係は、単に広告に出たり商品を使うことだけではなく、もっと深い絆と信頼があるのだとお話を伺って改めて感じました。

SNSが当たり前になった今、インフルエンサーマーケティングも増えていますが、これぞ元祖インフルエンサーマーケティング。
そして一番理想的なインフルエンサーと企業の関係だと思います。

商売道具だからこそ選手も適当にブランドを選ばないし、ブランド側もアスリートが最高のパフォーマンスが出せるものを作り、選手の競技人生を共に歩む覚悟を持つ。
そして商品使いながらそのクオリティやものづくりへの思いを知ることによって、選手もブランドへのロイヤリティを高めていく。

本来、インフルエンサーと企業はこうした強い信頼関係のもとに結ばれるべきだと思うのです。

もちろんこうした関係は一朝一夕には作れないし、インフルーエンス力が投資に見合うようになるまで我慢しなければならないこともあると思います。

ただ、真のインフルーエンス力とは認知度やフォロワー数だけではなく、どれだけお互いの姿勢に納得し、自分の言葉でよさを広げたくなるかによって測られるべきものだと私は考えています。

お互いにお互いの仕事の成果を称え合い、共感しあえること。
インフルエンサーのみならず、顧客と企業の関係もそうあるべきだと思うのです。

TeamUAという横のつながりが生み出すもの

そうやって出来上がったブランドと選手の関係をさらに横に広げるための取り組みとしてはじまったのが #TeamUA のプロジェクト。

もともとは本国でたまにSNS投稿の際に使われていたハッシュタグだったそうですが、1年ほど前から日本でも積極的に使うように。

またアンダーアーマーが契約している選手を集めたイベントを開催したり、オフの期間中に異なる競技の選手同士を紹介するなどして、横のつながりを強化していったのだそう。

その結果として、お互いの試合を応援しに行ったり、日本代表戦でコメントを送り合うなどアンダーアーマーというブランドを軸にして、分野を超えた交流が生まれるようになったのだとか。

またドームアスリートハウスでトレーニングしている選手同士の交流も生まれ、ラグビー選手がオフシーズンにスプリントの選手に走り方を教わるといったコラボレーションも生まれているという話はまさにコミュニティの理想的なあり方だなと思いました。

日本は異なる競技同士の交流が少なく、村社会化してしまっていることがよく問題としてあげられます。
アンダーアーマーとしてもその課題を感じていたことから、横のつながりを重視するようになったのだそう。

実際、若くして故障してしまう選手は、幼少期からひとつのスポーツに特化しすぎてきた人が多いのだとか。

野球肘やテニス肘といった言葉もあるように、スポーツはどうしても特定の箇所に負荷がかかってしまいます。
こうした故障を防ぐ目的もあってアメリカではあえて複数競技をやる習慣もあるのですが、日本ではどうしてもひとつの道を極めることの方がよいとされがち。

こうした縦社会の問題を、ブランドを通した横のつながりによって少しでも解決しようとするアンダーアーマーの取り組みに、ブランドとしての姿勢を改めて感じました。

プロアマ問わず、TeamUAにある一本の軸

インタビューの最後に、『競技を問わず、声をかける選手の共通点ってあるんですか?』と質問をしたところ、『意志があるかどうかを重視しています』という答えが返ってきました。

『でもそれは契約選手だけではなく、TeamUAで投稿してくださっている人たちの共通点かもしれません』とも。

アンダーアーマーはスポーツにおけるパフォーマンスを上げることを重視したスポーツブランド。
だからこそプロアマ問わず『昨日の自分を越える』『ベストパフォーマンスを目指す』といった志の高いユーザーが多く、フィジカルだけではなくメンタル面でも何かを乗り越えようとする意志を感じる、というお話が印象的でした。

プロスポーツ選手と違って、趣味で運動をしている人たちのモチベーションは様々です。
結果にこだわりすぎず、楽しむためにやっている人も多いはず。

もちろんそれを否定するわけではないけれど、スポーツを通じて何かを達成したり乗り越える喜びを感じ、それを仕事や勉強の糧にしていく人を支えたいというブランドメッセージの一貫性がアンダーアーマーの強みを作っているのだと思います。

そして契約選手へのオファーも、単に成績がいいから、将来有望だからといった目に見える結果ではなく、何かを乗り越えようとする強い意思を持ち、ブランドを体現する人であるかどうかを重視していること。
このこだわりこそが『TeamUA』のイメージを強固なものにしているのだと感じます。

冒頭で紹介した私のnoteにも書いた通り、SNSの役割は発信だけではなく企業活動のすべてを通してブランドイメージがどのように形成されているかの測定も含んでいます。

noteで成功事例として紹介するブランドも、お話を聞くたびにnoteやSNSでの発信の工夫以前に顧客との関係を丁寧に築いてきたところばかりだと気づかされます。

企業と顧客、企業と取引先、といった従来の関係ではなく、ステークホルダーすべてがゆるやかにつながり『チーム』となっていくことが、これからのブランド価値を強固にしていくはずです。

★noteの記事にする前のネタを、Twitterでつぶやいたりしています。


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最所あさみ
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