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「定番」という資産

この2、3年で生まれたデジタルネイティブブランドの特徴のひとつとして、『商品数が少ない』という点が挙げられる。

ファッションブランドであるEverlaneもM.M.LaFleurも、既存のファッションブランドのようにシーズンごとに新商品を追加したりせず、定番商品を中心に扱っている。
Allbirdsに至っては、アイコンであるスニーカー以外のかたちが思いつかないくらいひとつの型に特化している。

次々に生まれるD2Cブランドを見ていても、はじめから複数パターンを用意しようとせず一点突破でこだわるブランドが多い。

初期は資金が少なく商品にバラエティを出せないという事情もあるだろうが、成長してからも無闇に商品数を増やさないのは、『定番化させること』が戦略の根底にあるからなのかもしれない、と思うようになった。

例えば本や手帳の類は、ベストセラーになると『お金を刷っているようなもの』と表現される。
複製したものを作れば作るだけ売ることができれば、何もしなくても自動でお金が入ってくる。
もちろんそんな印税生活ができる人はほんの一握りしかいないけれど。

また、音楽業界に目を向けてみれば『カラオケ長者』と呼ばれる人たちがいる。
たとえCDやライブでの収入が途絶えたとしても、カラオケの定番として歌われる曲が作れれば、作詞・作曲者はずっと食うに困らないだけの収入を得ることができる。

1つの原液さえ作れば、あとは複製するだけで自動でお金が入ってくる。
この状態における原液を、人は『資産』と呼ぶ。

では小売における資産は何かと言われたら、定番商品がそれに近いのではないかと思う。

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