組織として、FA宣言にどう向き合うか
とうとうプロ野球の2017年シーズンが終わってしまったわけですが、野球はこう見えてオールシーズン楽しめるエンタメコンテンツ。
そう!通称ストーブリーグと呼ばれる、来季に向けた戦力の見直し&補強が行われる季節なのです!
涙の戦力外通告、ドキドキのドラフト会議、突然のトレード、ポスティングによるメジャー挑戦など話題は目白押しですが、特に野球民の間で常に話題になるのがFA(フリー・エージェント)制度。
「フリー・エージェント」の名のごとく、一定以上の試合数をクリアした選手はフリー契約となる権利をもち、FA宣言をするとどの球団とも来季の交渉が可能になるという制度です。
この制度はプロ野球ならではのルールで、そもそもプロ野球選手というのは、自分の所属球団を選ぶ権利はありません。
例えばカープファンでずっとカープに行きたい!と思っていても、ソフトバンクに指名されたらソフトバンクに行くか(※1)、もしくは指名を拒否して進学or浪人の道(※2)を選ぶしかありません。
そんな彼らがはじめて自分の意思で所属球団を選べる機会が、FA制度なのです。
さらにこの制度がややこしいのは、得られるのは「宣言の権利」であって、そもそもFA権を行使するかどうかは選手に委ねられているという点です。
つまり、ファンにとっては
①そもそも宣言するのかどうか
②宣言したとしてとるところがあるのか
③移籍先がなかったら自球団に戻ってくるのか
という三段階の心配ポイントがあるのです。
FAは、国内でも8シーズン出場選手登録の実績が必要なため、最速でも取得できるのは25歳。
現実的には30歳ちょっと手前で取得することになります。
だいたい28歳前後がキャリアハイの選手が多いので、ちょうど下降期に入るタイミングで、会社員でいえば「フリーランスになります!」という宣言をするわけです。
これは私たち会社員でいえば、45歳くらいで突然会社を辞めて「独立しました!だれか私のことほしい人いませんかー!」と言い出すような感覚です。
こうした状況ではもちろん、誰もがどこかの球団に入れるわけではありません。
もし欲しいという球団がなければ、事実上の引退であり、この状況は「セルフ戦力外(※3)」とも呼ばれています。
そこで話題になるのが③の「自球団に戻ってくるのか」という点。
これは「宣言残留」と呼ばれており、FA宣言した選手の行き場がなかった場合に、自球団で再契約することを認める、というケースです。
わざわざこうした言葉があるということは、認めないケースもあるということ。むしろ、未だにあまり認めていないところの方が多いように思います。
これは別にFA宣言すること自体に反対なわけではなく、FA宣言するということは単純に市場環境に晒され、他のFA選手やトレード、助っ人外国人などの可能性と並べた上で、よりシビアに「この選手が必要かどうか」を判断されるということ。
この時期は、いたるところでこうした知略を尽くした攻防戦が行われています。
例年通り今年もストーブリーグの動向をチェックしながら、ふと考えたことがありました(やっと本題に入れる)。
それは、企業もいずれプロ野球でいうところのFA宣言、ひいては宣言残留の問題に多数ぶち当たるのでは?ということ。
最近は少しずつ複業OKの企業も増えてきたものの、それでも認められているのは本当にごくごく一部の話。
ほとんどの企業は、未だに複業NGという空気が主流です。
しかし、今やひとつの企業でキャリアを終えるなんて不可能で、逆に1つの企業に最適化された人材になる方が危険だという意識をもっている人たちが、こぞって複業OKの企業に転職したり、フリーランスになってパラレルキャリアのような働き方を実現するようになってきました。
これからますます独立の敷居は下がっていくでしょうし、一人一人が自分の生き方・働き方をデザインする時代になります。
しかし、一方で全員がフリーランスとして成功できるわけではありませんし、そもそもフリーランスという働き方が向いているかどうかもやってみないとわからないものです。
フリーランスとして活躍している人はもちろん企業からフルタイムで入社してほしいとお声がかかるものだと思いますが、フリーランスに挫折した組の「出戻り」を積極的に受け入れる姿勢こそが、これからの企業がいい人材を採用するための考え方なのではないかと思います。
そしてできれば野球でいう宣言残留、つまり一度フリーになった後にもとの企業に戻る可能性を容認するということが、まわりまわってその企業のためになるように思うのです。
私もフリーランスになってみて思うのですが、もしも今また会社員に戻るとしたら、会社員時代のマインドとはまったく違う視点と視野で働くことができるように感じています。
1人で稼ぎ、税金と社会保険を払い、経費を清算し、来月の収支計画に頭を悩ませる。
スキルの差はさておき、一度この苦労をした人は、組織で働く際に会社員だったときにはなかった深い感謝をもって働けるはずです。
だからこそ、これからはフリーになりたいという社員はどんどん背中を押すべきだし、ダメだったらまた戻ってきたらいいよ!と「宣言残留」を認めてあげるのが、結果的にいい人材が集まる会社になるのではないかと思います。
もちろん、雇用の強制力があるわけではないのである程度人を選ぶ部分も必要とはいえ、人生のフェーズごとに理想のライフスタイルが変わる時代だからこそ、もっと正社員とフリーランスの垣根が低くなっていけば幸せになれる人が増えるのではないか。
野球恋しさで無理やり野球ネタにこじつけながら、そんなことを考えたここ最近でした。
※1…カープに行きたかったのにうっかりソフトバンクに指名されちゃった人といえばこの方
※2…みんな忘れかけてるけどエース様の野球浪人問題なんかもありましたね
※3…「セルフ戦力外」という言葉ができたきっかけは広島のあの方
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