ものを作る責任と、売る覚悟。
先日、とある経営者の方と話していた時に言われて衝撃を受けた言葉。
「先輩経営者から、『百貨店のオリジナルには関わるな』って言われてるんですよねぇ」
これを聞いたとき、百貨店出身の私が言うのもおかしな話だけれども、これはひとつの真理だと思いました。
とはいえ、百貨店を悪者にしたいわけではなく、ましてや担当者個人を非難することなんて到底できません。
では、何が問題なのか。
それは組織の構造上、担当者が数年で変わってしまうこと、それによって方向性がブレてしまうリスクが高まるということです。
ある商品を作ったとして、期間を区切ったり限定感をだして単発で売ることはできても、それを継続的に売り続けるには一本軸の通ったブランドが必要になります。
しかし、ブランドというものは、当然ですが一朝一夕に出来上がることはありません。
継続的に売れるものを作るにはそれなりの時間がかかるのに、2、3年で担当者が変わってしまったら方針も丸ごと変わってしまうことがザラ。
それではなかなか「本当に売れるもの」を作ることはできません。
これは百貨店に限った話ではなく、最近はIT企業やメディアもコマースに進出したがっているところが増えてきました。
しかし、確固たる志と美意識のある担当者が腰を据えてやる体制が整っていなければ、生産を受注するメーカー側からすると振り回されて終ることも多いのではないかと思います。
さらに受注ならまだしも、「コラボ」とう対等な関係の場合、自社のブランドを背負っている以上失敗もできないため、微々たる利益のために東走西奔することになります。
ちなみに私は、コマースをやりたいという相談を受けた際、必ず「いいですか、在庫というのはdeleteができないんですよ…!」という話をします。
自分たちだけでやるならまだしも、誰かを巻き込む場合はなおさら。
売れ残ったら行商でもなんでもして、頼み込んで買ってもらうくらいの覚悟があるのか、それでも売れなかったら全量買取りするのが責任感はあるのか。
できるだけ在庫をもたずに回すためにコラボ先に在庫をもってもらう前提で話されることが多いですが、飼えなくなったからと道端に犬や猫を捨ててはいけないのと同じように、売れ残ったからと在庫を誰かに押し付けていいわけではないと思うのです。
もちろん、単に仕入れて販売するだけなら伝統的な消化仕入れのやり方でも問題ないと思います。
しかし、オリジナルという「口出し」をするのであれば、それなりにリスクを負うことが必要なのではないでしょうか。
この世に何かを生み出す楽しさ、幸せと引き換えに背負わなければならないもの。
それが、ものを作る責任と売る覚悟なのではないかと思います。
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