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エイリアン最新作を観た。
エイリアン最新作「エイリアンロムルス」。
シリーズの時系列で言えば、エイリアンとエイリアン2の間で、2へ繋がらないスピンオフの位置に在る。
先ずは今回初登場のシーンの紹介から。今まで描かれなかった部分で宿主の腹を食い破って出てから二重顎の宇宙トカゲに変態する過程。蛹の状態が存在していた。
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特筆すべきは「エイリアンは食料も酸素も必要としない完璧な生物である」と言う新事実。そうなるとリプリーがエイリアン1と2で宇宙船外へ吸い出しても絶命しなかった訳で、起承転結の結では終わらないと言う事にもなる。卵が無数に存在する事と女王バチであるエイリアンマザーが居る事と共に、半永久的な続編の製作が可能となる。スピンオフが新たな物語の原点となる可能性は十分に有り得る。
生物としては完璧だが銃弾を受ければ死ぬ。但しその際に飛び散る強酸性の血液を考慮すると、迂闊に発砲できない抑止力となる。宇宙船内では特に有効な設定であるが、最新作では見事にそれを解決している。この辺りは製作者冥利に尽きるのだろう。
このシリーズはSFホラー映画であるから「恐怖を生み出す」が最優先であり、その為に生ずる矛盾を粗探しするのは野暮だが幾つかあげてみよう。
「動物は火を怖がる」との勝手な経験則で火炎放射器を作って対峙しようとした理由(エイリアン1)
宇宙船の自爆装置を作動させるのに、何故安全な脱出艇内から操作できない理由。(エイリアン1)
酸素冷却材を取りに行った二人が殺られたのにそれを未搭載のまま57年間も宇宙を彷徨えた理由。(エイリアン2)
劣悪な労働環境で働く者が貨物船を自由にできる理由。(ロムルス)
一刻も早く理想郷へ行きたいのに、廃船に立ち寄る理由(ロムルス)
廃船内で無残な殺られ方をしていた合成人間を経緯も判らずに再生させて自らの運命を託せる理由(ロムルス)等々
これらは未だ些末であるが、重大な疑問を感じるのは「エイリアンは食用にしないのに何故殺しまくるのか」という点だ。人間を襲うのは「宿主として」なら納得がいくが、寄生した後の形状変化後(チェストバスター&ゼノモーフ)も殺戮者の本領を発揮する。
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「食用にしないのに人を殺す」
戦争当事者ばかりが該当者ではなく、日々のニュースでも驚くべき殺人の凄惨な動機が伝えられる。「人間はエイリアン以上に残酷だ」と言ってしまえばありきたりになってしまうが、単なる娯楽作品で終わらない為にはそんな教訓めいた月並みさも必要なのかもしれない。R・スコット監督ならではの問いである。
エイリアンロムルスでは「人類はテラフォーミング(他の天体に移住する)には向かない。脆弱過ぎる」と言われる。そしてエイリアンの頑強な身体能力のDNAを人間に移植しようと試み、その研究成果を合成人間によって会社へ持ち帰らせようとする。
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ここで合成人間を列記してみよう。
エイリアン:アッシュ(イアン・ホルム)
エイリアン2:ビショップ(ランス・ヘンリクセン)
プロメテウス:デヴィッド(マイケル・ファスベンダー)
エイリアンコヴェナント:ウォルター(マイケル・ファスベンダー)
エイリアンロムルス:アンディ(デビッド・ジョンソン)
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それぞれが主人公たちにとっては時に味方だったり敵だったりと油断が出来ない重要な存在である。アンドロイドであるからアシモフのロボット三原則が組み込まれており、エイリアン1ではアッシュがリプリーを殺そうとする場面で「人間に危害を加えてはならない」と「命令に背いてはならない」が自己矛盾を起し、とても不器用な方法で殺そうとする。
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エイリアンコヴェナントでは、デヴィットは同じアンドロイドであるウォルターを欺いてまでエイリアンのサンプルを持ち帰ろうとする。新型合成人間であるウォルターは、人類を傷つけて迄会社の命令を遂行できないように改良されたからだ。
エイリアンロムルスでは、アンディは最初主人公側に立ち生き残りに協力的だったが、モジュールが上書きされる事で持ち帰りの命令を遂行しようとする。そのせいで助けられた筈の人間を見殺しにしてしまう。主人公にとっての善悪が入れ替わる事でロボット三原則を表現しているのかも。
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エイリアン2のビショップはアッシュの改良型として人間に危害を加えられないような仕組みが組み込まれた。最初はアッシュで懲りたリプリーに疑われるが、その後自らを犠牲にして尽くし、誤解を解く。終盤の見せ場であるエイリアンマザーと戦うリプリーにとっては心強い味方となる。
だが、エイリアン2のバークは人間でありながら、会社の利益=自己繫栄を見込める事から、リプリーたちにチェストバスターを仕込んでまで持ち帰ろうとする。
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結局行き着くところは、仲間を殺してまで自己繫栄を願う人類は、やはり営利最優先な最上級の残酷な生き物であると言う提言なのかも知れない。なにしろ自己矛盾を承知の上で映画製作を続ける事自体が商魂逞しいと言わざるを得ないのだから。
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