「エクソシスト」に対する東アジアからの答えがこれだ!『哭声/コクソン』
韓国映画が隆盛を迎え何本か拝見したがぼくが一番ハマった作品である「チェイサー」の監督であるナ・ホンジンが脚本も務める本作、まず一言申し上げるのは本当に素晴らしいエンターテインメント作であるということです。冒頭の田舎警官のクァク・ドウォン一家の微笑ましい様子から始まり、だんだんと恐ろしい事件のあらましがわかっていきます。ただの幻覚植物による錯乱による殺人だと思われていた事件がひたひたとクァク・ドウォンに近づいていく流れがとても素晴らしく観客もこの地獄に引きずり込まれていきます。その後も連続で凄惨な事件が地域で起こっていきますが、まるでそれに起因するのかの如く國村準が演じる謎の日本人が山中に住んでいることがわかります。果たして事件と謎の日本人の関係は!?という脚本が本当によく出来ていると思います。監督はインタビューでこの謎の日本人を韓国人らしくユダヤ人にとってのイエス・キリストに准えています。また田舎あるあるですが、”余所者”という存在はそこに住む人間にとってある意味恐怖を抱く対象であり排除したい気持ちを抱かざるをえないのが物語を否が応でも盛り上げてくれます。そしてその”災い”が大事な一人娘に及ぼうとしていることがわかり高名な祈祷師に頼ろうとするのだが…以上までが前半のあらすじです。その後、事件現場に現れた謎の女、ファン・ジョンミン演じる祈祷師、國村準による人知を超えた闘いにクァク・ドウォン一家が巻き込まれていきます。韓国映画らしい血みどろで生臭い描写がファンにはたまらなく謎が謎を呼ぶ展開も手に汗握り物語の行く末を我々は凝視せざるを得ません!
クァク・ドウォン、國村準、ファン・ジョンミンと名優の共演が素晴らしい本作ですがぼくが一番評価したいのはクァク・ドウォンの娘を演じたキム・ファニちゃんです。冒頭の田舎娘から段々と豹変していく演技が本当に素晴らしく「エクソシスト」のリーガンや「震える舌」の昌子に並ぶ凄まじい演技力です。今作で國村準が青龍映画賞で男優助演賞と人気スター賞の二冠を受賞しましたが、キム・ファニちゃんにも新人賞だけでなく助演女優賞をあげて欲しいです。