いろいろな言語でジブリ
令和5年7月14日にアニメ製作会社・スタジオジブリの新作アニメ映画『君たちはどう生きるか』が上映開始しました。
昭和60年6月15日に設立されたスタジオジブリ及び同社創立以前の同59年公開の『風の谷のナウシカ』や同54年公開の『ルパン三世PART2』の劇場版2作目『ルパン三世 カリオストロの城』といった宮崎駿監督のアニメ作品は日本テレビ系列『金曜ロードショー』での放送で注目され、日本を代表するアニメ製作会社となり、今回の『君たちはどう生きるか』は宮崎監督が手がけてきたアニメの集大成となっています。
今回はいろいろな言語でジブリを取り上げます。
いろいろな言語でジブリ
ジブリはアラビア口語アーンミーヤのひとつであるリビア方言で“南風”の意である〈قبلي〉[ɡib.lij ギブリィ]に由来し、アラビア文語フスハーで“南方 southern”の意である〈قِبْلِيّ〉[qib.liːj キブリーィ]が語源となっています。
英語で〈Ghibli〉は本来、シロッコという熱風の一種の意味としてはギブリ[ˈɡɪb.li]と発音し、ジブリ[ˈʤɪb.li]と異なっています。
なお平成14年7月20日に『猫の恩返し』の併映として公開された短編アニメ映画『ギブリーズ episode2』では“スタジオギブリ”製作という一種のパロディとして、本来の〈قبلي〉の発音に近い表記となっています。
ジブリ系統
本来の社名〈Ghibli〉を日本語ローマ字に置き換えた〈Jiburi , Ziburi〉[ʥi.bɯ.ɾʲi]に近い発音の表記を採用している言語です。
【Džibli】セルビア・クロアチア
【Ĝibli】エスペラント
【Джіблі】ウクライナ
【Жибли】モンゴル
【Џибли】セルビア
【ג׳יבלי】ヘブライ - ギメル《ג》[ɡ]にゲレッシュ《׳》を付加してジャ行音[ʤ]に発音を変化させた表記。
【جيبلي】アラビア - エジプト・アラビア語では〈جیبلى〉[ギブリ]となるが、フスハーではジーム《ج》はジャ行音[ʤ]となる。
【جیبلی】ペルシア、南アゼルバイジャン - アゼルバイジャン語本来の〈Qibli / Гибли〉[ギブリ]に対応する〈قیبلی〉と異なり、南アゼルバイジャン語アラビア文字ジーム《ج》はラテン文字《C・c》とキリル文字《Ҹ・ҹ》に対応することからジャ行音[ʤ]となり、この場合の翻字は〈Cibli / Ҹибли〉となる。
【জিবলি】ベンガル
【จิบลิ】タイ
【ຈິບລີ】ラオ
【吉卜力 / Jíbǔlì】中国 - 訳音字ではJÍ《吉》[ʨi˧˥ ジー]はイタリア語ラテン文字のGHI[ɡi ギ]及びGI[ʤi ヂ]に対応し、BǓ《卜》[pu˨˩˦ ブー]はアラビア語などからの音訳に限り末子音B[-b ブ]の表記に用いられ、中世漢語ではモンゴル語の音訳における子音のみの表記のために〈卜の小文字〉が使用されていた。
【吉卜力 / ㄐㄧˊㄅㄨˇㄌㄧˋ】台湾華
【知步里 / Zi¹bou⁶lei⁵】広東
【知步里 / Ti-pō͘-lí】台湾
【吉卜力 / Jîkboklik】上海
【지브리】韓国 - 南風のギブリは〈기블리〉と表記。
【ジブリ / Ziburi】沖縄 - 沖縄語のZI《ジ》は日本語標準語本来のGI《ギ》が発音変化したもの。
ギブリ系統
語源であるイタリア語におけるアラビア語からの借用語〈Ghibli〉[ˈɡi.bli ギブリ]の発音に近い系統です。
インド諸言語の大半では〈GH〉の綴りは有声有気音ガ行[ɡʰ]と解釈されている傾向です。
〈GH〉が摩擦音ガ行[ɣ]と解釈されているベラルーシ語などもこの影響を受けています。
【Gizbujliz / Giƨbuзliƨ /吉卜力】チワン
【Qibli】アゼルバイジャン - ラテン文字《Q・q》に対応するアラビア文字正書法でクヮーフ《ق》はアラビア語リビア方言と共通のガ行音[ɡ]となり、アラビア文字表記は〈قیبلی〉となる。
【Γκίμπλι】ギリシャ
【Гибли】ほとんどのキリル文字使用言語
【Гҳибли】ウズベク
【Гіблі】ベラルーシ - ユニコードにおけるキリル文字GHE《Г・г》の字母名の由来はベラルーシ語では摩擦音ガ行[ɣ]となることにちなむと思われる。
【Ғибли / Ghibli / Ƣibli】ウイグル - 旧ラテン文字正書法のGHA《Ƣ・ƣ》[ʁ グまたはル]は現行正書法の連字〈GH〉に対応。
【Ҕибли】ヤクート
【Գիբլի】アルメニア - ジブリ本来のラテン文字表記に近い綴りは〈Ղիբլի / Łibli〉[ɣib.li ギブリ]。
【Կիպլի】西アルメニア - アルメニア本国と異なりカ行《Կ・կ》がガ行[ɡ], パ行《Պ・պ》がバ行[b]に変化している。
【ღიბლი / ᲦᲘᲑᲚᲘ / Ⴖⴈⴁⴊⴈ】ジョージア - ラテン文字連字〈GH〉はジョージア文字GHAN《ღ・Ღ / Ⴖ・ⴖ》[ɣ]に対応。
【جیبلى】エジプト・アラビア - フスハーでは〈جيبلي〉[ヂーブリー]となるが、エジプト・アラビア語でジーム《ج》はセム系文字本来の発音であるガ行[ɡ]となる。
【غيبلي】アラビア - リビア方言のクヮーフ《ق》と著しく発音が異なるため、ガ行をガイン《غ》[ɣ~ʁ グ]に置き換えた共通語フスハー表記となっている。
【غىبلى】ウイグル - ラテン文字表記〈Ghibli〉に対応する綴り。
【گێبڵی】ソラニー - ゲーブリーと読まれる。
【घिब्ली】ヒンディー
【ꯘꯤꯕ꯭ꯂꯤ / ঘিব্লি】マニプーリ
【𑠌𑠭𑠠𑠹𑠥𑠮 / घिब्ली】ドーグリー