![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/78773540/rectangle_large_type_2_8ffa1523fc457f06a1b9a101d2e3244d.jpg?width=1200)
ユニコード未登録の変体仮名の字源
8月21日は明治33年のこの日に日本語の音節文字のひとつであるひらがなが統一された記念日です。
ひらがな統一以前に多用されてきた音節文字体系は変体仮名と呼ばれ、平成29年にユニコード10.0で採用され、ユニコードフォントがあればネット上で使用できるようになりました。
しかし、ユニコードに採用されていない変体仮名が多数存在していて、外字として採用されている字母が含まれているものは稀です。
今回は変体仮名に存在するがユニコードに採用されていない字種のことを取り上げます。
ひらがなの字源
ひらがなの字源となった漢字に由来する変体仮名は、ユニコードに採用されていないものが5種類あります。中には現行ひらがな字形と著しく異なる字母もあるのですが、ユニコードは通常の字母と統合されている状況です。
【己《こ》】[コ]
【寸《す》】[ス]
【太《た》】[タ]
【止《と》】[ト] - 漢字に近い字形とひらがなに近い字形の2種。
【女《め》】[メ]
使用頻度の高い字形
ユニコードに登録されていない変体仮名で使用頻度が高いものは、Koin変体仮名フォントで採用されているものが多いです。
変体仮名の字形に近いものとして、異体字も取り上げます。
【亞=亜】[ア] - 簡体字は《亚》。人名での使用頻度が高く、固有名詞の〈-イア〉に当たる表記に使用される。
【異】[イ] - 簡体字は《异》。
【右】[ウ]
【鵜】[ウ] - 簡体字は《鹈》。
【羽】[ウ; ハ] - 音読みと訓読みに由来する2種の読みを持つ。
【得】[エ]
【延】[エ] - カタカナYEの字母の由来でもある。
【歌】[カ]
【哥】[カ]
【荷】[カ; ニ] - 音読みと訓読みに由来する2種の読みを持つ。
【記】[キ] - 簡体字は《记》。
【稀】[ケ]
【胡】[コ]
【興】[コ] - 簡体字は《兴》。
【狹=狭】[サ]
【斯】[シ] - 外来語では[ス]音で当て字されることが多い。
【師】[シ] - 簡体字は《师》。
【瀨=瀬】[セ] - 簡体字は《濑》。
【田】[タ] - 名字の末尾としての使用頻度が高い。
【馳】[チ] - 簡体字は《驰》。
【池】[チ]
【頭】[ツ] - 簡体字は《头》。
【刀】[ト]
【戶=戸】[ト] - 簡体字は《户》。
【斗】[ト; ケ] - TO《斗》ルーツとKE-5《𛀶》とは異なる《計》ルーツの2種を統合した字母で、発音はそれぞれのルーツに従う。
【尼】[ニ] - 外国の固有名詞での使用頻度が高い。
【駑】[ヌ] - 簡体字は《驽》。
【音】[ネ]
【念】[ネ]
【寢=寝】[ネ]
【然】[ネ]
【迺=廼】[ノ]
【野】[ノ]
【芳】[ハ]
【火】[ヒ]
【妣】[ヒ]
【風】[フ] - 簡体字は《风》。
【幣】[ヘ] - 簡体字は《币》。
【變=変】[ヘ] - 簡体字は《变》。
【反】[ヘ] - ひらがなの《へ》及び変体仮名の《𛂹》の一説とされてきたものと異なるルーツ。
【篇】[ヘ]
【穗=穂】[ホ]
【眞=真】[マ]
【間】[マ] - 簡体字は《间》。
【民】[ミ]
【目】[メ]
【米】[メ]
【藻】[モ]
【哉】[ヤ]
【樂=楽】[ラ] - 簡体字は《乐》で、変体仮名の字形はそれに近い。
【蘭】[ラ] - 簡体字は《兰》。
【侶】[ロ]
【盧】[ロ] - 簡体字は《卢》。
【〇】[ワ] - 漢数字0《零》の略字と同字だが、変体仮名の字母は《輪》の略字に由来。
【慧】[ヱ]
珍しい変体仮名
変体仮名と万葉仮名を混同している書籍は結構多く見られるもので、万葉仮名を草書化した草仮名と呼称されるケースの影響があるようです。
国会図書館デジタルコレクション内のアーカイブ資料で珍しい字母が確認できます。
(※R7-02-16更新)
令和3年9月にユニコード14.0で《汙》に由来する変体仮名WU【𛄟】[ウゥ]が追加されました。
【于】[ウ] - 求古堂『改正七ツいろは』に見られる。明治前期に《于》と同型の字母がWU[wɯ]音を示すカタカナ字母として作成され、ユニコード14.0に【𛄢】が採用された。
【億】[オ] - 三楽堂『仮名文字のいろいろ』に見られる。
【應=応】[オ] - 三楽堂『仮名文字のいろいろ』に見られる。
【制】[セ] - 三楽堂『仮名文字のいろいろ』に見られる。
【夫】[フ] - 三楽堂『仮名文字のいろいろ』に見られる。
【瑜】[ユ] - 三楽堂『仮名文字のいろいろ』に見られる。
【漏】[ロ] - 三楽堂『仮名文字のいろいろ』に見られる。
【繪=絵】[ヱ] - 三楽堂『仮名文字のいろいろ』に見られる。
ユニコードで他の字母と統合されたと思われる字形
【个《𛀳》】[ケ] - 現在は《個, 箇》の簡体字として知られている字母に由来するが、KE-2《介》と統合。
【今《𛀳》】[ケ] - KE-2《介》の一説とされてきた。
【太《𛁠》】[タ] - ひらがなTA《た》と異なるルーツで、TA-3《多》の一説とされ、明治43年の『尋常小学国語教授細案』に記載されている。
【鬥《𛁩》】[ツ] - ひらがなTU《つ》のルーツの一説で、TU-1《川》と統合。たたかいがまえは日本語の漢字では“闘”, 中国語の簡体字では“斗”に対応。
【州《𛁪》】[ツ] - ひらがなTU《つ》及びカタカナTU《ツ》のルーツの一説で、TU-2《川》と統合。なお、TU-2の小文字があるがユニコードに採用されていない。
【手《𛂓》】[テ] - NE-2《年》と字形がほぼ同型。
【寧《𛀋》】[ネ] - U-2《宇》と字形がほぼ同型。
【磐《𛂣》】[ハ] - HA-6《盤》と統合。『尋常小学国語教授細案』に記載されている。
【反《𛂹》】[ヘ] - ひらがなHE《へ》及びカタカナHE《ヘ》のルーツの一説で、HE-7《部》と統合。
【皿《𛂹》】[ヘ] - ひらがなHE《へ》のルーツの一説。
【邪《𛃡》】[ヤ] - YA-5《耶》と統合。
【予《𛁆》】[ヨ] - SI-3《事》と字形がほぼ同型。
【旡《𛄝》】[ン] - N-MU-MO-1《无》の字源の誤字と思われる。