《ꇴ》に似た甲骨文字or篆書体の字形である祝詞を意味する【サイ】という漢字について
1月19日はいいくちの日です。
日本の漢字研究家である白川静博士の解釈による漢字構成要素で“サイ”という音読みを持つ彝文字GU《ꇴ》に似た甲骨文字・金文・篆書体の説が見られ、自分にとって気になる字です。
彼の著書である平凡社・刊『字統』や同社『常用字解』などに見られます。
平凡社による彼とイラスト担当の金子都美絵さんの共著による絵本『サイのものがたり』―白川博士は故人のため、引用文などとしての著者記載―では、正式タイトルにおけるサイとのの字の間に“サイの甲骨文字あるいは篆書体”が含まれています。
サイの字の楷書体について
ユニコードでは甲骨文字を楷書体に置き換えたCJK漢字拡張が多数見られ、白川博士の説による“サイ”の字の楷書体は恐らくU+20675《𠙵》と統合されているように思われ、“くち”《👄》の意のU+53E3《口》の古字であり、白川博士の説である“のりと”[祝詞]の意と関連性が高そうです。
サイの楷書体はハングル字母PIEUP《ㅂ》のように横棒《一》がつながっているように思われます。
“祝詞を収める箱”の象形文字としてのサイ《𠙵》は部首構成要素になるとくちへん部《口》に変化されることも、異体字つながりとなっています。
サイ《𠙵》の字の漢字音について
白川静博士の説に基づくサイ《𠙵》の音読みは、合意の文書を意味する“載書”の《載・载》からに由来する説があり、反切という子音を示す第1字と母音などを示す第2字の連字で漢字音を示す方式では〈作代切〉となります。
各言語における《載・载》音由来によるサイの字の漢字音です。
【Zài】中国[ザイ]
【ㄗㄞˋ】台湾華[ザイ]
【Zoi³】広東[ゾイ]
【Chài】台湾[ツァイ]
【Chai】客家[ツァイ]
【Zāe】上海[ゼー]
【Cái】閩東[ツァイ]
【Зэ】東干[ゼー]
【زَیْ】中原官話[ザイ]
【재】韓国[チェ/ヂェ]
【しぇー / See】沖縄[シェー]
【サイ / Say】アイヌ[サイ]
【Tải】ベトナム[ターイ]
【Cai】チワン[シャイ]
サイ《𠙵》の字における各言語の翻字
日本語における中国漢字音表記では〈ツァイ / Tsai / Twai〉が主流となっています。
【Zai】ほとんどのラテン文字使用言語
【Zaj】エスペラント[ザイ]
【Caj】チェコ、スロバキア、セルビア・クロアチア[ツァイ]
【Dsai】ドイツ[ツァイ] - レッシング-オットマー式ローマ字表記。
【Tsai】フランス[ツァイ] - EFEO式ローマ字表記。
【Tszay】アゼルバイジャン、ウズベク[ザイ]
【Ζάι】ギリシャ[ザイ]
【Дзай】ブルガリア[ヅァーイ]
【Тсзај】アゼルバイジャン[ザイ]
【Цај】セルビア、マケドニア[ツァイ]
【Цзай】ほとんどのキリル文字使用言語[ツァーイ/ザーイ]
【Ձայ】アルメニア[ヅァイ]
【ცზაი / ᲪᲖᲐᲘ / Ⴚⴆⴀⴈ】ジョージア[ツァイ/ザイ]
【زاي】アラビア[ザーイ]
【زاى】エジプト・アラビア[ザーイ]
【ᠽᠢ / Зай】モンゴル[ザイ]
【ᡯᠠᡳ】満州[ザイ]
【সাই】ベンガル[サイ]
【ဇိုင်】ビルマ[ザイン]
【ဇြိုင်】モン
【ไจ้】タイ[チャイ/ヂャイ]
【짜이】韓国[チャイ] - 北京語音から。