霊体視点の新感覚ミステリー - 『誰かが私を殺した』 ブックレビュー
本日も元気にブックレビュ〜
ということで紹介するのはこちら
『誰かが私を殺した』
著:東野圭吾
Audible Originals
東野圭吾がAudibleに!
ということで飛びついて聴いてみました
あらすじ
夫の命日に墓参りをしていると不意に背後から衝撃を感じ、気がついた時には霊体となって自分の死体を見つめていた
この事件を担当することになった加賀恭一郎に霊体として着いて(憑いて?)行き、加賀が捜査を進めていく様子を霊体という第三者視点から俯瞰していく
超大手企業トップの元妻であり「女帝」と呼ばれるほどの完璧主義者である彼女のことを憎む人間は少なくない
その意味で言うと多くの人間に動機があると言えるため捜査は難航していく
事件に残された違和感や散りばめられた謎をかき集め、それが一時に集まったとき、加賀と彼女は思いもよらぬ真相に辿り着くこととなる。
感想
まずテーマが斬新で面白かったです
東野圭吾の人気シリーズ『加賀恭一郎』作品の一部ではあるものの、あらすじにも書いた通り主人公は加賀ではなく被害者
しかも病院のベッドで寝ているとかではなく、既に死亡した状態で霊体として捜査を眺めているっていう驚きの内容で冒頭から引き込まれました
刑事が霊体と会話出来るみたいなSF的な要素は全くなく、被害者は本当に語り手に徹している感じ
なのでほぼナレーターなんですが、例えば刑事が被害者のとある行動に疑問を呈して推理しようとした時に「残念ながらその行動はマジで気まぐれだから推理するだけ無駄なんだよなぁ」みたいな霊体の被害者だからこそできるツッコミ(?)を入れたりなど、単なる神視点の俯瞰ではない新たな視点を楽しむことができた
Amazonでこの本のレビュー見てみると結構辛口のコメントが多くて、まあ正直その気持ちも分かります
確かにどんでん返しとしては若干イマイチな気もしますし、犯人の動機も「うーん…」って感じですし
かと言ってこの1本だけで「東野圭吾とAudibleは相性が悪い」と決めつけるにはあまりに時期早々ではないかなと
他のAudible作品と比べてもかなり短めなことも考えると、おそらくまずは試しに一つ出してみて、そこで感覚を知って次に繋げようみたいな気持ちもあるんじゃないかと思ってます
なので次への期待という意味も込めて自分は高評価です
(ていうか自分的には普通に単体として面白く感じたし…)
おわりに
賛否両論ではありますが、東野圭吾の新たな試みとしては一読の価値は大いにあります
普通のミステリーに飽き飽きしてきて新しい刺激が欲しいという方もぜひ読んでみてはいかがでしょうか