【嘘のような、ホントの物語】#2 〜 不思議な力を持つ娘 〜 誕生まで 〜
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前回のあらすじ
40歳を目の前に、カンボジアで働いていた私。1年ぶりにタイを訪れ、友人との再会を喜んだ。友人から恋人へ関係が進展して、タイを後にした私。それから数週間後、妊娠が発覚し、カンボジアでの高齢出産へ向かい、準備に取り掛かかり、バンコクの病院で出生前検診を受ける決心をした。
∞ タイ・バンコクへ… 移動手段
2009年当時、シェムリアップーバンコク間のフライトは、現在のように格安航空はなかったので、高額だった。
だから、よっぽど差し迫った理由がない限り、バンコクへの移動は陸路で移動していた。
移動手段は、タクシー、VAN(=ミニバス)、バスのいずれかで、特徴をまとめるとこんな感じだった。(すべて、シェムリアップからの片道)
・タクシーの場合、車体は基本カムリ。
乗り合いになる場合もあるが、チャーターもできる。
手配の方法は、当日タクシー乗り場で交渉するか、事前に個人で予約。
移動時間:約10〜12時間程度
費用:相乗りの場合 USD 5〜10/チャーターの場合 USD 25〜30 + 国境からバンコクまでは別途手配
一番早く移動できるが、国境までしか手配できないため、タイ側の国境からバンコクまでの移動手段を現地で探す必要があるのが難点。(ぼったくり被害に会う可能性あり)*2009年の情報です
・VAN(=ミニバス)の場合、ハイエースのような10〜12人乗車可能の乗り合いバス。
手配の方法は、市内の旅行デスクで予約可
移動時間:約12〜14時間程度
費用:USD 12〜20 (バンコクまでの通しチケット)
外国人が一番利用するルート。ただし、団体行動のため、随所随所で待たされる。昼食タイムやお土産屋さんへ寄るなどで、拘束される時間が長いのが難点。
また、最終到着地点が、バックパッカーの聖地、カオサンロード付近になるので、夕方になると渋滞のひどいバンコクでの移動が困難になるのも難点。
*2009年の情報です
・バスは、40人乗り程度で、一番安いルート。
移動時間:一日がかり
費用:バス USD 5 + 国境バンコク間 追加
こちらは、カンボジアの地元の人たちが利用するので、外国人には何かとわかりにくい。言葉の問題で使えないと判断。*2009年の情報です
それまでは、乗り合いのミニバスで移動をしていたが、今回は、体のことも考え、タクシーをチャーターすることにした。
シェムリアップから国境の町『ポイぺト』まで、約150キロ、移動時間約6時間。
そして、タイの国境の町『アランヤプラテート』からバンコクまで約250キロ、移動時間約4〜5時間。
東京ー大阪間に匹敵する、約400キロを、陸路で移動するのだ。
💦2009年のシェムリアップの風景。大きな国道を一歩入れば、赤土とガレキの道、、たまに牛飼いに遭遇することもあった。。。💦
∞ タクシー事情
バンコク滞在のために、ギリギリ4日間の休みを取った。
初日ーバンコクへ移動
2日目ー病院で検査
3日目ー安静日
4日目ーシェムリアップへ移動
11月に入れば雨期も終わり、観光のハイシーズンになる。やっとこぎつけたお土産店のオープン。ほかのスタッフの手前もあり、自分の事ばかり言ってられなかったのだ。
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バンコクにはできるだけ早く到着したかった。夕方のバンコク市内はヒドイ渋滞で、それに巻き込まれたら、ホテルに着くのが何時になるかわからないからだ。
だから、タクシーを朝6時に手配していた。そうすれば、遅くともお昼の12時頃には、カンボジア国境に到着できる。
その時間帯は、イミグレーション(=イミグレ)の出国・入国手続きでは、さほど混雑に巻き込まれる心配はない。だから、夕方にはバンコク到着の見込みが出てくる。
今回、奮発して、タクシーをチャーターしたのは、そういう理由からだった。
乗り合いタクシーだと、定員人数になるまで客引きに付き合わされるから、いつ出発できるかわからない。
カムリの場合、定員は通常8人+ドライバーだ。
助手席に2人、後部座席に6人。カンボジア人は細いし、密着しても気にしないのか、上手にスペースを共有している。
外国人は、そう言う訳にはいかないので、交渉して2人分の料金を支払い手席に乗る。それが一番いい方法だと言われていた。
ある時、乗り合いタクシーで衝撃を受けたことがあった。
運転席の横にも、もうひとり座らせて、ドライバーは斜めになりながら、バランスをうまく取って、運転している場面に遭遇したのだ。
この人に命を預けているのね、、、
そう思うと、ぞっとしたけど、ほかのお客さんは取り乱さない。ここでは、さほど珍しくない光景なのだろう。。。
∞ 一路、バンコクへ
前日、会社のカンボジア人スタッフが知り合いを通じてタクシーを予約してくれた。ドライバーの電話番号を貰っていたが、英語はほとんど話せないらしい。
だいたい、約束の時間には来ない。それがここでは常識だ。しばらく待って電話してみると、こちらに向かっているところだ、という。
7時前に、やっとタクシーが到着した。
よくみると、助手席に女性が乗っていた。
あ、この人待ちだったんだな、、、
その女性は、家族かもしれないし、ただのお客さんかもしれない。国境まで一緒に行くという。
ドライバーも眠くなると困るから、まぁいいか。
昔なら、激高してたな。チャーター料金払ってるのにって。
カンボジアに慣れてきたのかもしれない。多少のことでイライラしていると身が持たないのだ。
小さなスーツケースをトランクに積んでもらい、出発した。
シェムリアップから、国境の町の『ポイぺト』までは、国道6号線の一本道だ。当時は、市街地から空港付近を通って郊外に出ると、想像を絶する悪路に変わった。
舗装されていたはずの道は、、穴ぼこができていたり、岩のように大きな石が突き出ていたり、あちこちガレキで、車はスピードを出せない。
岩を避け、穴を避け、ぐにょぐにょと蛇行しながら、車は走る。まるで、高波の日のボートに乗っているように揺れる車体。平均時速20キロ〜30キロぐらいだろうか。
10月下旬は、雨期が終わりに差し掛かり、浸水するほどの大雨に見舞われることが多い。水はけが悪い道には大きな水たまりでき、悪路がさらにひどさを増す。タイヤが穴に取られないように、慎重に車は走る。
そうこうしているうちに、ひとつ目の大きな町に到着、ここまで約1時間。
トイレ休憩をはさんで、さらに道を進む。だんだん車が少なくなり、道が赤土に変わる。道の穴ぼこは、少しマシになって、少しスピードが出た。水たまりをよけたつもりが、大きな水しぶきを上げていた。。。
このままいけば、お昼ごろには国境に到着できるかな。
そんなことを期待しながら、車窓を眺める。カンボジアの田舎の風景が見える。びっしりと苗が植わった水田の緑が美しい。ヤシの木がところどころに生えている。電線は、道路わきにしか見えない。
夜になったら、真っ暗だろうな。帰りは夜になりたくないな。。。
そんなことを考えながら、4時間ほど走ったところで、道がアスファルトになってきた。そろそろ、国境の町『ポイぺト』に到着する。
∞ 国境の町『ポイぺト』に到着
タクシーは、イミグレのはるか手前で止まった。
これ以上行くと、警察に手数料を支払う必要があるから、行けないらしい。助手席に乗ってきた女性が、片言の英語で説明してくれた。そして、そそくさと、どこかへ行ってしまった。
なんだ、結局、ここから歩くのか。。。
車で5分もかからないくらいの距離。直線距離にして1キロ近くあるのだろうか。お昼12時をまわってしまい気温も高い。汗がにじんできた。
バイクタクシーが声をかけてくるが、お腹のことも気になったので、小さなスーツケースを引きずりながら歩いた。
傍から見ると、変な外国人である。(カンボジア人はすぐバイクに乗るので理解できないのだ)
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イミグレの前に、長蛇の列ができていた。バックパッカーでいっぱいだ。
カンボジアのイミグレでは、指紋を取られる。その上、4つある窓口のうち、2つしか開いていない。時間が掛かるはずだ。
担当官はエアコンの聞いた部屋で、小窓から顔を出して高圧的な態度で手続きにあたる。
お愛想程度に設置された扇風機からは、熱風が吹きだしている。列で並ぶバックパッカーたちは、汗だくで文句を言い合いながら、時間をつぶしていた。
やっとのことで出国スタンプを貰い、タイ側のイミグレへ向かって歩く。距離にして、約7〜800メートル。周辺には、カジノ付きのホテルがいくつも並んでいる。
おなかは空いていたが、売店にも目もくれず、ホテルの前を急いで歩く、タイ側のイミグレも同じように行列ができていることが予想できたからだ。
それに、ここの匂いは独特だ。魚を干しているような、水が腐ったような鼻につく匂い。いつ来ても、これだけは慣れない。
やっぱり、朝1時間遅れたのは痛かったか。。。
そんなことを思いながら、歩いていると、たくさんの物乞い達に出会う。子供たちがお金をねだる。片言の英語で。
カンボジアでも、タイでもないこのエリアは、本当にカオスだ。
カジノに興じる人たちと、年端もいかない子供たちや、とても痩せた赤ちゃんを抱えた女性の物乞い。
しかし、その物乞いには、裏で操る人たちがいて、赤ちゃんは借り物だったりする。
物乞いしたお金で、とても立派な家を建てたりする者も、中にはいる。
たくましい。
彼らは生きるために必死なのだ。そして、使える武器はなんでも使う。
たとえそれが身体の障害であったとしても、それを見せ物にしてお金を稼ぐ。
何が正しくて、何が間違っているなんて、誰にも判断できないのだ。
初めてみた時は、ショックで目を伏せるしかできなかったが、もう慣れてしまった。
この街には暗黙のルールがあり、そこに、からくりが存在する事を知ったからかもしれない。
ゴミ捨て場のような水路の上に、小さな橋が架かっていて、そこを抜けるとタイのイミグレのエリアに到着する。
やはり、人が溢れている。もうすぐ午後2時になろうとしていた。
お腹空いたな、、、
持ってきていたパンをかじる。でも。暑くて、食欲がわかない。
タイの国境に出てからご飯を食べようと思っていたのに、まるで計画通りにはいかない。いつもそうだ。
でも何を言っても仕方がない。この状況を受け入れるしかないのだ。そう自分に言い聞かせる。
タイ側のイミグレは室内にある。長蛇の列だが天国だ。特にトラブルもなく、1時間程度で入国手続きが終わった。
でも、休憩している暇はない。
急いでバンコク行きのミニバスを探さなければ、、
もうすぐ、午後3時になろうとしていた。
∞ 国境の天使か悪魔か
タイ側の国境の町『アランヤプラテート』。
そこには、巨大な市場が広がっている。その名も『ロンクルア・マーケット』、通称ロンクーだ。(日本人にはそう聞こえる)
ここまでくると、いつもホッとする。
とりあえず、NOKIA(ノキア)のガラケーに入っている、プリペイドシムカードを、タイのカードに交換した。前回来た時のカードに少し残高が残っていた。有効期限も残っていたので、電話番号を変える必要はないようだ。
これがライフラインだ。
少し歩くと銀行の横にセブンイレブンがある。
ATMで、タイバーツを引き出したりすることもできるが、両替はいつも出発前にシェムリアップの両替所で済ませて来ていた。
中に入ると、エアコンが効いている店内に大きな冷蔵庫。レンジでチンの惣菜。冷凍庫にアイスクリーム。
カオスを通り抜けた後の文化圏。なんとなく、複雑な気分でもある。
とりあえず、冷たい水と豆乳、それから、携帯電話の通話料を追加して買ってチャージした。
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バンコクまでのバスが、少し離れたバス停から出ていると聞いていたが、この時間では、最終に間に合うかどうか微妙であった。
前回、バンコクに行った時はミニバスに乗車して、この市場を抜けたところでバンコク行きのミニバスに乗り換えた。
そちらに行けば、見つかるだろうと、その方向に歩いていくことにした。
そのうちに客引きが声をかけてくるだろうから。
ミニバスは、客引きが客を集めて、ひとりにつきいくらかの手数料を貰う仕組みだ。
案の定、客引きが声をかけてくる。警戒しながら、バンコクまでいくらか確認して出発時間を聞く。
ボッタクラれないように、注意するが、暑さでだんだんどうでも良くなってくる。
そうこうしているうちに、見たことのある客引きを見つけた。以前乗ったミニバスのスタッフだった。確か英語がちゃんと話せた人だ!
ねぇ、バンコク行きのバスの人でしょ?ミニバスある?ひとりなんだけど。前は、シェムリアップからバンコクまで14ドルで乗ったんだけど、ここからバンコクまでいくら?
相手に付け込まれないように、さっさと用件を言った。
向こうはびっくりしたみたいだったが、少しカンボジア語を話す変な日本人を覚えてくれていた。
こっからなら、250バーツであるよ。早くいかないと4時には出ちゃう。
地獄に仏?天使かな??
OK、お願いするね!はい、荷物!!
スーツケースを持ってもらって、砂ぼこりの道を歩く。ミニバスが止まっていた。念のために、行き先を確認した。
ねぇ、バンコクのどこまで行くの?BTSの駅の近くで降りたいんだけど。カオサンロードには行かないから。
客引きが、ミニバスのチケット売りの人に確認してくれた。
BTSの駅の近くまで、大丈夫だって。乗るときにドライバーにBTSって言って。それじゃ。
なんとなく、不安を覚えたが、もうこれ以上ジタバタしても始まらない。
4時より少し前に来たミニバスの乗り込んで、ほかの乗客を待つ。
乗り合いバスは、どこでも定員まで何とか乗せようとする。
8割くらいしか乗っていなかったが、4時を少し回ったところで、ミニバスはやっと国境を出発した。
【嘘のような、ホントの物語】#3 〜不思議な力を持つ娘の誕生まで〜 に続く
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∞ まえがき ∞ より
この物語は、ある家族に実際に起きた、
嘘のようなホントの物語。
『自閉症の娘』や『ADHD疑惑のタイ人旦那』と、
『カサンドラになりかけた日本人妻』の
エピソードを描いた私小説的エッセイです。
他のエッセイに比べて、かなりプライベートな内容が
含まれているため、書く決心がつくのまでに
時間を要しましたが、
海外、国内問わず、育児に苦労している方や、
大人のADHDの方の対応に悩んでいる方の
ヒントになれば…と思い、執筆することにしました。
この物語は、決して暗く悲しいものではありません。
困難に打ちひしがれる日もあれば、
文化の違いから、お互いを理解し合えず
涙する日があったり、
バカバカしい事で、お腹がちぎれそうに
なるくらい笑ったり。
人生という旅路を、何故か一緒に歩く
ことになった、
マイペースでトンチンカンな旦那さんと、
不思議な力を持つ娘を中心に、
日本人妻が翻弄されながらも、
強く生きる物語なのです。
この物語のシリーズは、今後、
有料記事にする予定です。
不特定多数の方へ、無料で届ける
内容ではなく、
本当に必要とされる方に、読んで頂きたい
と考えているため、
そうすることにしました。
ご理解頂けると、幸いです。
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