2022/12/02 BGM: サザンオールスターズ "女神達への情歌(報道されないY型の彼方へ)"
今日は遅番だった。朝、ジョン・アーヴィング『オウエンのために祈りを』を読み終える。とても巨大で、そして深遠な本だと思った。私はアホなので、このテイストは大江健三郎に似ているとも思った。大江の作品に出てくる主人公と息子との関係がこの作品の主人公とオウエンの関係に似ていると思ったのだった。他人と著しく異なる生を生きることを背負わされた人物。だが、そのような生を生きることには意味があるはずだ。その意味を探索する一冊として、この本は優れた達成を示していると思われた。実に興味深い一冊だった。
私は誤解していたのかもしれない、と思った。哲学の勉強をしたいと思っていたのだけれど、ベタにウィトゲンシュタインの哲学書を読んであれこれ考えてしまっていた。上野俊哉が教えるように、優れたポップ・ミュージックや文学の中には哲学書が教えることがもっと平たい筆致で書かれているということを見落としていたのだった。これから私はジョン・アーヴィングの書いたものを読み返すつもりでいるのだけれど、その時はこの真理を忘れずにアーヴィングの本からあれこれ哲学的なことを考えられればいいと思った。
今日もいい一日だった。トム・ウェイツの音楽を聴きながら読んだ『オウエンのために祈りを』が沁みた。2人の作ったものは私にとって神からの贈り物のように感じられた。ああ、かつてはもっと珍奇なもの、斬新なものに心が動いたものだが今はオーソドックスな音楽や映画、単純な真実を力強く表現する作品に心が動かされる。『オウエンのために祈りを』は『サイモン・バーチ』という題で映画化されていると知った。観られるようならこの映画も観たい。そして『ガープの世界』『ホテル・ニューハンプシャー』も読みたい。
その昔、作家になりたかった時はたった一冊でいいから話題になる本、傑作を書ければと思っていた。ビーチ・ボーイズ『ペット・サウンズ』やレディオヘッド『KID A』みたいな。今は違う。今は瞬間的にそうした傑作を書くより、「凡事徹底」の精神で長く書き続けることが大事だと思うようになったのだった。「凡事徹底」を極めるのは難しいかもしれない。だが、私はいつものようにこの日記を書き、メモパッドにメモを書いて考え続ける。そうして毎日この日記を書き、より広範に考えを広げられればと思うようになった。
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