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「神戸チーズトーストプロジェクト」第2章スタート!灘五郷も巻き込んだ神戸の一大ムーブメントへ

神戸の新ご当地グルメを作りたい。そんな思いから発足したquod(クオド)の「神戸チーズトーストプロジェクト」。以前noteでもご紹介した総選挙に続き、今年6月には第2章の幕開けとなる決起大会が行われました。前後のアナザーストーリーも交えながら、プロジェクトメンバーが熱い思いを語ります!


<メンバー紹介>

木戸 彩:神戸出身・神戸在住。今回のプロジェクトの発起人。


徳岡 達也:広島出身・神戸在住。イベント運営やビジュアルツール制作を担当。


土原 翔吾:大阪出身・神戸在住。酒蔵をはじめ新規参画店舗の拡大に尽力。


小川 嘉之:「喫茶館 英國屋」専務。実行委員会のメンバーであり、陰の立役者。




酒粕の新たな可能性を見出す


−昨年行われた総選挙では、黒豆といかなごを抑え、酒粕チーズトーストが1位に選ばれました。その後、灘五郷(※神戸市と西宮市の沿岸部に位置する西郷・御影郷・魚崎郷・西宮郷・今津郷の5つの酒造地の総称)の酒蔵が協賛に加わったそうですが、どんな経緯があったのでしょうか?

木戸:総選挙中はさまざまなご意見をお客さまからいただきまして、3候補の具材のうち、いかなごは神戸のザ・郷土グルメですが、酒粕に関しても「灘五郷を思わせるね!」という声を多くいただいたんですね。灘五郷は日本一の酒どころで、酒粕はまさに神戸を象徴する食材と言えます。結果、酒粕チーズトーストが1位に選ばれたので、これはもう灘五郷酒造組合さんを巻き込むしかないぞと。

ディスカッション&15種の試作で決められた最終3候補


−試作の時からコラボの構想はあったのでしょうか?

徳岡:いえ、神戸にゆかりのある食材がマストというよりは、純粋に味が美味しいという点を一番の評価基準に置いていたので、はっきりとした構想まではなかったです。結果的にゆかりもきちんと語れる酒粕チーズトーストに決まったのは感慨深いですね。

−酒粕は近年、様々な活用法で注目されていますよね。

木戸:そうですね。最近では国内での飼料自給率が高まり、コストも安く済む酒粕の新しい活用で地域資源を使うことが付加価値にもなっているようです。今日参加いただいている英國屋の小川さんは、総選挙でも協力店舗としてすごくお世話になったのですが、かねてから灘五郷の福寿さんとお付き合いがあったそうで、このプロジェクトについてご意見を伺えないか相談しました。

小川:5〜6年前に、福寿さんの酒粕を使ったシフォンケーキやグラタンなどのメニュー開発に取り組んだことがあったんですよ。お店でもすごく好評で、神戸はお酒と食文化の親和性が高い地域なんだということを改めて実感しました。

木戸:小川さんは、そのメニュー開発の時に酒粕を塗ったトーストも食べられたんですよね?神戸チーズトーストの最初の試作の時にも「めっちゃうまいで!」ってアドバイスしてくれましたもんね。

小川:そうそう。だから正直、総選挙の時は酒粕に決まればいいなと思っていました(笑)。結果が歪むといけないから、あくまでこっそり思っているだけでしたけど。

−結果、酒粕が選ばれました。小川さんとしてはどうでしたか?

小川:個人的にはヨッシャ!ですね。福寿さんともお取り組みの実績があったので、またご一緒できたらもっと面白いプロジェクトになるだろうなと思っていました。さっき彩ちゃん(木戸)の話にもあったように、酒粕のニーズは高まってはいるんだけど、もともと酒蔵さんの中で、酒粕の活用はどちらかと言うとお酒を広める上での副次的な効果を狙う位置付けであることが多かったんですね。かつ、灘五郷の酒蔵さんが連携して酒粕をどうにかしましょうという動きはこれまでなかった。そこでまず福寿さんにプロジェクトのお話をしたところ、非常に興味を持ってくださいました。

徳岡:そこから他の加盟酒蔵さんにもお声がけして、白鶴さん、大関さん、沢の鶴さん、浜福鶴さんも協賛してくださることになりました。

−錚々たるメンバーが揃いましたが、どんなポイントに興味を持っていただけたのでしょうか?

徳岡:酒粕って、産業廃棄物に分類されるんですよ。それを生まれ変わらせて新たな価値を生み出すというSDGsの文脈が、一つのポイントになったのではないかと思います。

木戸:活用のニーズが高まっているとはいえ、本来酒粕は捨てられるものなんですよね。浜福鶴さんは杜氏さんにもこのプロジェクトに関わっていただいているんですけど、「すごく感動する取り組みだ」とおっしゃってくださって。お酒造りの第一線にいらっしゃる方にそう言っていただけたのがすごく嬉しかったですね。


味の統一感がないからこそ面白い


−酒蔵さんの協賛が決まって、次の動きは?

木戸:神戸チーズトーストを提供していただける協力店舗さんの拡大に向けて動きました。現場では土原がメインで頑張ってくれました。つっちぃ(土原)が学生時代に通っていたお店にもご協力いただけるようになったんだよね?

土原:そうですね。Cafe あんごさんという、大学生の頃によく行っていた大好きなお店です。当時はオーナーさんとお話しする機会はほとんどなかったんですけど、今回のプロジェクトで一緒にお取り組みができてとても嬉しいです。

土原が昔から馴染みのあるCafeあんごにて


−その他も含め、何店舗増えたのでしょうか?

土原:総選挙の時にご協力いただいた英國屋さん、元町サントスさん、DORSIAさんと、先程お話ししたCafe あんごさんに加えて、Teacafe Colourさん、Link treeさん、下町Cafe 茶豆さんIN THA DOOR BREWINGさん、M BASE BARさんの合計9店舗で提供していただけることになりました。このプロジェクトのコンセプトや思いを丁寧に伝えるのはもちろんのこと、できるだけスムーズに導入を行えるよう、数量限定でスターターキットなどを提供したのも工夫した点です。

新規販売店舗のみなさまへ認定証を授与


−スターターキットとはどのようなものですか?

土原:先程お話しした5社の酒蔵さんの酒粕やQBBさんのチーズなどがセットになっていて、100食分の神戸チーズトーストを作ることができます。先着10店舗限定ではありますが、試作コストや酒粕ペーストを作る手間を少しでも軽減できればと思って用意させていただきました。併せて、販促グッズと店舗マニュアルもお渡ししました。マニュアルは総選挙でご協力いただいた最初の3店舗からどんなところが課題だったかをヒアリングして、Q&Aとしてまとめたものになります。

−どんな課題が挙がりましたか?

土原:パンはトースターではなくオーブンで焼いてもいいのか、チーズはスライスチーズ以外でもいいのか、食パン以外の自家製パンでもいいのかなど、かなり色んなご質問をいただきました。

小川:新規のお店さんからは僕のところにも色々質問が来ますし、今でも課題として残っているものはたくさんあります。ただ一番のポイントは、土原くんの言うように、どこを守ったらいいのか、どこまで崩していいかという点ですね。やっぱりみなさん最初に気にされるのが「味を統一しきれないんじゃないか」というところなんです。

木戸:酒粕は種類によって味が全然違いますし、アルコールをどれだけ飛ばすかなど、作り方によっても風味が変わってきます。でも、それが伸び代ですよね?小川さん。

小川:うん、そう思う。作る人や使う食材によって、味の方向性がものすごく変わるというのが面白いところなんですよ。だから「それこそが神戸チーズトーストのよさなんです」というのは必ず他のお店さんにお話ししています。

酒粕とシロップを合わせた自家製酒粕ペーストを使用したTeacafe Colourオリジナル神戸チーズトースト


木戸:お問い合わせいただいた課題は都度小川さんにも相談しながら進めているというのが現状ですが、私たちとしてはできるだけ自由度を持たせたいと思っています。パンに関しても、ハンバーガーは一応NGにしているんですけど、焼くことさえ守っていただければ、あとはメーカーさんや種類の縛りは設けていません。実際に自家製のハードパンで提供されているお店もあります。どこでも同じ味を食べられるより、「あのチーズトーストはここのお店」というように、色んなお店を回っていただいた方が絶対に楽しいと思うので、どんどんアレンジしていただければと思います。

自家製ハード系ブール「おたからパン」を使ったCafe あんごオリジナル神戸チーズトースト


思いを共有できた決起大会


−6月にはプロジェクトメンバー・協力企業との決起大会が開かれたそうですが、いかがでしたか?

土原:総じてよかったです。これまで関係者が一堂に会するということがなかったので、メーカーさんと店舗さんがどんな思いでこのプロジェクトに参加しているのかをお互いに共有できるいい機会になったと思います。

このプロジェクトの狙いは、神戸の飲食店・企業・酒蔵・パン屋・商店街のみなさまなどの横の連鎖で、神戸のまちを盛り上げていくことです。今後の展望もきちんとすり合わせることができましたし、節目としての大切なイベントになりました。この決起大会に合わせて公式webサイトもオープンして、PVまで作っちゃいました。

●神戸チーズトーストPV


徳岡:僕たち実行委員が考えていることについても、明確には伝わっていない部分があったのではないかと思います。そんな中でプロジェクトの方向性を統一できたというのは、すごく大きな意味がありました。文字通り”決起“できた会だったと思います。


イベント出店でニーズをつかむ


−先日イベントにも出店もされたそうですね。詳しく教えてください。

徳岡:三宮センター街で月1回開催されている朝食イベント「By the STAND」に7月から3か月連続で出店しました。三宮センター街は通勤中の方の往来が多く、朝7時から1時間に1000人以上が通ります。そこで朝食を販売して商店街を活性化しようという企画で、英國屋さんに作っていただいた2種の神戸チーズトーストを販売しました。

小川:今回、僕はパン焼き職人として裏方に徹していたので、実際に販売するのは徳岡兄妹が頑張ってくれました。たまたま徳岡くんの妹さんが商店街とつながりがあって、手伝いに来てくれたんですよ。二人で仲良く売っている姿が微笑ましかったですね(笑)。

−素敵ですね!反響はいかがでしたか?

徳岡:1回目の出店では50食用意して1時間足らずで完売し、2回目は82食完売しました。3回目にして”おにぎり“という強力なライバルが現れたんですけど、それでも50食売れました。通勤途中の方だけでなく、観光客もたくさんいらっしゃいましたね。中には毎回来てくださるお客さまもいて、ご高齢の女性が「この前食べて美味しかったから」とお一人で10食買ってくださったりもしました。

200食近くを売り切った徳岡兄妹


小川:今回、スタンダードな味とレモン風味の2種の酒粕チーズトーストを販売したんですけど、どちらも好評でよかったです。神戸チーズトーストに朝食需要があることもわかりましたし、店をやっている人間としては大きな収穫でした。

あと面白いなと思ったのが、三宮センター街は時間によって通る人の層が全然違うんですよ。パパッと買って帰る人もいれば、横のテーブルでゆっくり食べて帰られる人もいて、どの時間帯にどういう層の人がどのくらいの余裕を持って通られているかということがよくわかりました。店の中にいるとなかなか人の流れを観察することはできないので、僕にとっては非常に有意義でしたね。

徳岡:実は色々、逆境と言えば逆境だったんですよ。ライバルの出現もですけど、とにかく暑くて。僕だったらあんな暑い中でチーズ系の食べ物を買いたいとはあんまり思わない。

木戸:そんなことない。私は食べたい。

小川:まあでも確かに暑かった。そこはもう徳岡兄妹の販売力でしょう。

徳岡:いやいや(笑)。それに、酒粕のハイシーズンの真裏での出店だったので、食材の調達が難しい部分もありました。でもそんな逆境の中でも、これだけ神戸チーズトーストを求めてくださる方がいるんだということがわかって嬉しかったですね。今回の出店が知名度アップにもつながったと思います。

−酒粕にもシーズンがあるんですね。

小川:だいたい11月前後から新酒が出始めて、翌年の4月くらいまでが醸造のシーズンです。当然お酒を造らないと酒粕もできないので、酒粕は季節感のある食材なんです。それが課題でもある。ただ、通年で提供することが必ずしもいいとは限らないし、「時期が終わっちゃって今は食べられないんです」という方が、僕はご当地グルメとして魅力的だと思うんですよね。

三宮センター街での朝食イベント「By the STAND」にて


リアルなローカルフードを目指して


−今後、神戸チーズトーストをどんな存在にしていきたいですか?

土原:神戸に来たら、夜は神戸牛、朝は神戸チーズトーストを食べるのが当たり前というところまで持っていけたらいいなと思っています。気軽に手に取れるお土産なども作っていきたいです。実は今、ガチャガチャなどのグッズも新たに思案中です。

徳岡:僕はリアルに地域に根ざしたローカルフードという位置付けを目指しています。大きく対外的にPRするというよりは、地元でしっかり愛される存在になったらいいですね。そのためのイベント出店も引き続き頑張っていきます。

小川:名物って、何回か花火を打ち上げれば定着するようなものではないし、無理やり広げる必要もないと思うんです。美味しいと思う人が作って、それを美味しいと思う人が食べてくれる中で地道に広がっていくもの。さっきも話したように、これから新酒の季節になるので、例えば色んな酒蔵さんの色んな酒粕チーズトーストを食べ比べできるようなイベントをやったりして、神戸チーズトーストを「名物」という視点ではなく、「なんか面白いことやっとんな」という視点でまずは見てもらうことが大事かなと思います。

そこから、「そういえば神戸って灘五郷があったよね」とか、「QBBチーズも神戸なんだ」という風に、神戸チーズトーストのストーリーを理解していただいた先に、神戸に来たらとりあえず神戸チーズトーストを食べるという流れができればいいなと。そのためには、酒蔵さんをはじめ色んな人の協力が絶対に必要だし、面白いと思ってくださるところと取り組んで、面白い結果を出して、その結果を面白がってくれる新しいパートナーが増えていって、そんな感じでどんどん広まってくれたらいいなと思います。

木戸:神戸チーズトーストは観光庁のインバウンドコンテンツ造成事業の対象に選んでいただいたので、今年から来年にかけて外国人観光客向けのツアーなども企画できたらいいなと思っています。神戸チーズトーストを通して、歴史ある神戸の喫茶文化を多くの人に伝えていけたら嬉しいですね。また、小さな子どもからお年寄りにも楽しんでいただけるように、神戸チーズトーストのキャラクターなども生み出していきたいと思っていますので、ご期待ください!

オリジナルグッズは公式webサイトで購入可能


−色々と楽しみですね!そのうち非公認の神戸チーズトーストが出てくるのではないかと心配です(笑)。

木戸:本望ですけどね(笑)。管理しきれないくらいに広がってくれれば、むしろ嬉しいです。

小川:その時点で名物になっていますもんね。それはもう我々の勝ちです!

木戸:先程お話しした喫茶文化を広める活動とは別軸で、より手軽に食べていただけるような酒粕ペーストの商品化なども模索中です。神戸チーズトーストをコンビニで買えるようになれば最終ゴールですかね。メーカーのみなさま、いつでもお声がけお待ちしております(笑)。

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今後の展開がますます楽しみな神戸チーズトースト。神戸を訪れた際は、ぜひ色んな店舗を回って楽しんでみてくださいね。

※記事の内容は2023年9月インタビュー時点のものです。


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