墨色の海の底で 4
あの出来事以来、どこにいっても現れるようになった。
奴が何をしているのかはわからない。
「ねえ、暇なの?」
「失礼だな」
「何でそんなに私に付き纏うわけ?」
本当にわからなかった。人間が星の数ほどいるこの世の中に、その男が私という何の取り柄もない高校生の女を探し回る意味がわからなかった。
「君は、魅力に溢れた人だよ」
「そんなこと言っても、何にもあげないよ」
「ほんとなのにな」
黒い影に隠れて消えていってしまうほど、彼の表情は冷め切っていた。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?