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「わたしも芸術家だ」

フィギュアスケートのオリンピック最終選考会で盛り上がっている。

この瞬間、今も若い選手たちが氷の上でくるくると舞っている。
その様子はテレビで見ていても惹きつけられるが、実際に目で見たらもっと感慨深いだろう。

今宵はどうやら、羽生結弦選手が前人未到の挑戦をするという。
これまで本人自体が成功したことのない、4回転アクセル。

長いCMの前に一瞬だけ移る彼の表情には、まるで氷のような冷たさを感じるが…
本人は今、いったい何を思っているのか。

氷の舞台はきっと「自分との闘い」であろうが、本人たちにしかわからない、それ以上のものがあるに違いない。

選手たちの芸術的な演技を見ていてふと思った。

最近、お茶のお稽古をするときは、ついつい自分がお茶会の亭主になることばかり考えている。

その時私が気に取られていることは、「いかに間違えずにお点前ができるか」ということだ。
それは自分本位で重圧であり、お客様の存在とか、楽しい時間を共有することなど、二の次だ。

しかし本来、茶道は芸術だ。

実際、フランス語圏では、茶の湯を"l'art du thé"という。
これは直訳するととてもシンプルで、まさに「お茶のアート」だ。



私のお点前なんて、フィギュアスケート選手たちの華麗な演技と比べられるものではないかもしれない。

しかし茶の湯は、視覚、聴覚、嗅覚、触覚、味覚を満たすことができる稀有な芸術だ。

私は根っこの部分がまじめなので、どうしても教科書通りというか、「間違わないお点前をする」ことばかりに意識が向いてしまう。

だけど、目の前にいる人と一緒にお茶を楽しもう、と思えるようになったら、素敵なことだ。

そう思うえば少し心にゆとりが持てる気がするが、
それは実際、亭主という役割を全うすることよりも難しいかもしれない。

自分にも、そして人にも感動を与えられるような芸術家への道はまだまだ続きそうだが、いつかきっと。


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